色彩。
「最後に色彩を見たのはいつだろう」
そんな独り言をこぼした。
本当に、いつだろうか。
3年前、世界は突然色をなくした。おかげで借号機は意味をなさず、事故が多発した。
今の世界は白黒で、そこにまるで戦時中の写真のように茶色く濁っていた。
この世界には色彩がない。たったそれだけの、単純な違いだ。
もし世界に色彩が戻るのなら、僕はどうなってもいい。
砂浜で、夕日を眺めていた。色はないのにどこか美しく感じる。日光は暖かくて、やさしかった。
そんな中、泣き声が聞こえた。
「どうして私だけなの?」
泣き声の正体が見えてくる。
少女は、少女だけがこの世界で色彩を持った、美しくかわいい子だった。
色があるからか、彼女はかなり美しく見えて、思わず一目ぼれしてしまった。
(色がなくても、恋はするんだな…)
「えーっと、どうしたの?」
「私...私だけ色があって、そのせいか、みんなに無視され続けてて...」しばらく少女の話を聞いた。彼女の名前は、葵。近所の中学生で、ある日突然色を持ったという。
少し葵が泣き止んだ。けどまだ泣いている。
「葵、大丈夫だよ。僕がいるから」
「ありがとうございます、良太さん」
「うん」
「良太さん、その、このまま私と旅をしませんか!」
「え?」
彼女は勢いよく話した。僕は理解ができなかった。
「この世界の色彩を取り戻すために」その言葉に、僕は背中を押された。
「わかった」
これから、僕たちは世界の色を探す旅に出る。
辛そうな道だけど、絶対にいばらの道だけど。でも、そこに道があるのだから、そこに希望があるのだから。
僕たちは目指すんだ。
この世界の色彩を。