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1.


君と歩いたこの道が狂わせちゃったかな

四つ葉のクローバーは傷つかないとできないって聞いたから

時間が経てば解ると思ったからそれなのに消えられないから

もう全部僕のせいにして、解らないままで


君の声が、遠くで響く。

まるで水面に落ちた小石が波紋を広げるみたいに、届きそうで届かない。

もう分かってた。

君が僕の世界から遠ざかっていくことを。

それなのに、僕はずっと手を伸ばし続けている。

なんでだろうね。

言葉にすれば、壊れそうで怖かったんだ。

「もう、いいよ」って君に言われるのが怖くて。

だから逃げた。

だけど、その逃げた先にも、君の影が残っていた。

優しさと冷たさが混ざり合ったような、君の残像が。

「光に背を向ければ、影が濃くなるだけだよ」

君がいつか言ってた。

あのときは何も分からなかったけど、今なら少しだけ分かる気がする。

だけど、それでも。

僕はこの影の中に居場所を見つけてしまったんだ。

影の中にいたら、誰も僕を見つけられない。

傷つけられることも、傷つけることもない。

だけど君は違った。

君だけは、この闇の中に手を伸ばしてきた。

その手があまりにも眩しくて、僕は目を逸らした。

僕なんかが触れたら、その光を汚してしまうと思ったんだ。

ねぇ、君にはまだ分からないだろう?

この感情が。

この苦しさが。

でも、もし、もう一度君が笑ってくれるなら。

その笑顔が僕に「進め」と言うなら。

僕はこの影の中から一歩だけでも出てみようか。

そんなふうに思えるんだ。

だから、笑ってよ。

僕を馬鹿にするみたいにでもいいから。

それでもいいから、もう一度、君の声を聞かせて。

君の笑顔を見せてよ。

それでまた、影の中に戻るのも悪くないだろう?

ねぇ、そうだろう?


君が笑う声が、まだ耳の奥に残っている。

心地よい風だったはずなのに、今では痛みになって胸を裂く。

僕が掴んだものは何だったんだろう。

あの頃、君の手を取ったことも、交わした言葉も、

全部、今となっては蜃気楼のようで――消えそうで、消えない。

壁を壊すつもりだった。

自分を押し上げるつもりだった。

でも気づけば、自分の作った壁に

閉じ込められていたのは僕だったんだね。

「大丈夫だよ」

君が何度もそう言ってくれたのに、僕は耳を塞いだ。

その優しさが、まるで光の刃のように感じたから。

僕には耐えられなかった。

君みたいに強くなんてなれなくて、

だから逃げて、暗闇に慣れる道を選んだ。

それでも、まだ見てしまう。

君のいた光の世界を。

どうしてだろう、君の笑顔は、

僕の中に何度も蘇ってくる。

君の声が届かない場所に来たはずなのに、

どうしてだろう、僕はまだ君に問いかけている。

「こんな僕でも、希望を持つ資格があるのか?」と。

君なら、なんて答えるんだろう。

僕の胸をえぐる言葉かもしれない、

それとも、君らしい優しい嘘かもしれない。

答えなんて、本当はもういらないのかもしれない。

それでも、

僕は君に、最後にただ――

「笑ってほしい」と願ってしまう。

この暗闇の中で、

笑う君の姿を想像してみる。

ああ、まるで残酷な救いみたいだ。

それでも、僕はこう思うんだ。

「ねぇ、君に会えて、よかったよ」って。

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