ブフテンデ
僕はケートストラントに戻って、転送ボックスからウェッタリドに帰った。
僕はメモをみて最後の精霊石のありかを調べた。
最後の精霊石はブフテンデにある。
ザントルスから出発して十日ほどで着きそうだ。
僕は旅の準備をした。
見慣れた街もこれが最後かとおもうとなんだか寂しく感じた。
僕の気持ちとは関係なしに待はいつも通りに動いていた。
いつもと違うのはプレイヤーがいなくなったということだけ。
ほとんどのプレイヤーがログアウトしたみたいで、街は賑わいを失っていた。
あるいはそれが僕を寂しくさせたのかもしれなかった。
僕はそんなことを考えながら街で必要なものを買い揃えた。
翌日、僕は転送ボックスからザントルスに向かおうとした。
旅の始めのように城門から街を出たかったなとおもいながら、城門を眺めた。
不意に空に鳥が飛んでいるのがみえた。
鳥はいつもよりも高く空を飛んでいるようにみえた。
僕はザントルスに向かった。
僕はザントルスから歩いてブフテンデに向かった。
モンスターにはきっとあわないだろう、そんな予感があった。
僕は武器も持たずに歩き続けた。
不思議なことにモンスターとはまったく遭遇しなかった。
僕はいくつかの街で泊まったり休んだりして、ついにブフテンデにたどり着いた。
城門から街に入ると、街はまるで異国のような雰囲気を漂わせていた。
ブフテンデはいろんな文化の混じった港街、いままで訪れた街とは少し趣の異なる街並みをしていた。
街の住民は誰もが派手にそれぞれがそれぞれのおもうままに自己主張の激しい服装をしていた。
そんな中まったく自分を飾りたてることなく歩いている少年がみえた。
僕はその少年に興味を持ったが、少年はすぐにみえなくなった。
僕は宿屋に泊まった。
翌日、僕は精霊石の情報を集めるために街の中を探索した。
僕が望んでいるような情報は手に入らなかった。
街の自己主張の強さに僕は疲れを感じていた。
僕はどこか休めるところがないかとおもい、辺りを見回した。
すると昨日の少年が階段に座ってアイスクリームを食べているのが目に入ってきた。
僕はやっとなんでこんなにあの少年に興味を持っているのか分かった気がした。
少年の中に僕をみたのだ。
自分を出すことを恥ずかしがって周りと同じように振る舞っていた僕を。
僕は少年の近くに座った。
「君にききたいことがあるんだけど、きいてもいいかい」
僕が言うと少年はうなずいた。
「この街の人達は皆自分を主張しているのに、どうして君はそうしないの」
少年は僕を睨見つけた。
「なんで周りと同じじゃないといけないんだ」
少年は怒って、その場から走っていなくなった。
少年は僕とは違った。
誰もが自己主張するこの街では、自己主張しないことが自己主張になると少年は信じていた。
少年は少年なりの方法で自己主張していた。
僕はそのまま街の人達を眺めることにした。
僕が派手の一言でまとめた人々は、それぞれ違った形と色を持っていた。
翌日も僕は精霊石を探して街を探索した。
僕は異国をおもわせる街並みが気になった。
探索しながらそれぞれの建物がどんな内装や構造なんだろうと考えながら歩いた。
それぞれの建物がすべて特別なもののように感じられた。
結局、今日も精霊石の情報は何も手に入らなかった。
僕は疲れて宿屋に戻った。
僕が宿屋の前で顔をあげると宿屋も綺麗な外装をしていることに気がついた。
僕は宿屋の中に入った。
いつもよりも建物を気にしながら過ごした。
基本的には大きな違いはないようだ。
外装がどれだけ違っても中身はたいして変わらない。
生活をする以上どれも似通ってくるのだろう。
ただ些細なところに違いがあった。
そういうものが僕の気を引いたのかもしれない。
翌日も僕は精霊石の情報を探して探索した。
今日も精霊石の情報は何も手に入らなかったが、フィグーベルクに変わった人がいると教えてもらった。
翌日、僕はフィグーベルクの山に登った。
山を登ってしばらくすると、街の人から話をきいた変わった人らしい人がいた。
その人は真っ裸だった。
真っ裸の男と目があった。
「なにかようですか」
「精霊石を探しているんです」
そう僕が言うと、真っ裸の男は掘っ立て小屋に入っていった。
しばらく待つと真っ裸の男は精霊石を持って、小屋から出てきた。
「あなたが探しているのはこれでしょうか」
僕はうなずいた。
真っ裸の男はほほえんで精霊石を僕にくれた。
僕はお礼を言った。
僕はしばらくそのまま突っ立っていた。
「まだ何かようがありますか」
「なんで真っ裸なんですか」
「自由になりたかったのです」
「真っ裸になることで自由になれるんですか」
真っ裸の男は首を振った。
「人は外見で多くことを判断します。私が真っ裸なのは外見で判断する私から解放されたかったからです。私自身が真っ裸になることで人間の本質と向き合おうとしたのです」
「向き合えましたか」
彼は笑った。
「いいえ。服は役に立つということを知っただけです」
そう言う彼の顔はとても満足しているようにみえた。
僕はもらった精霊石を袋にしまおうとして、袋の口を大きく開けた。
袋の中にみえる溶けることのない氷でできた盾を彼は面白そうにみていた。
「それがあなたの物語なんですね。素晴らしい力の結晶ですね」
「君は人間?」
おもわず僕の口から言葉がこぼれた。
「あなたがどういう意図でその質問をしたのか分かりませんが。あなたの言う人間というものが生物としての人間ということであれば、私は人間ではありません。私からも質問してもいいですか。虹色の塔が光輝いた日から私は常に疑問を抱いていたのです。私達の違いはなんでしょうか。感情を持った今、私は私達の違いをみつけられないのです。もしかすると私達の方が優れているのではないだろうかとおもえてしまうのです」
僕は何も言えなかった。
彼は僕の答えを待っていた。
その時、太陽が世界を紅く染めた。
「前に私の質問に答えた人は自分の中に流れる血を人間の証としました。なので私は私の指を傷つけ血をみせてあげました。人間とそっくり同じ赤い血を。その人は逃げました。私をモンスターと呼んで。あなたも逃げますか」
僕は何も言えなかった。
彼も黙ってた。
いつの間にか辺りは暗くなっていた。
「流れ星」
流れ星が流れた。
それをみて、僕はおもわず口から言葉を発していた。
「流れ星好きなんですか」
彼が言った。
僕はうなずいた。
「君は」
「私も好きです。もし私が感じている好きという感情が、あなたが感じている好きという感情と同じならばきっとそうでしょう。この感覚にその言葉をつけていいのならばきっとそうでしょう」
「きっと同じです。僕も僕の感じている感覚が他の誰かが感じている感覚と同じかどうかなんて分からない。だから信じているんです。きっと同じように感じていると。分かちあえていると」
彼は精霊文字を読めた。
彼は精霊石のあるべき並びを教えてくれた。
精霊石を彼の指示通りに並べると大きなスプーンがあらわれた。
だがしばらく待っても何も起こらないので、大きなスプーンのすくう部分に乗ってみた。
するとスプーンのすくう部分が開き、僕は穴に落ちた。
完結したので一斉に投稿します。
応援してくださった皆さんのおかげで最後まで書ききれました。
ありがとうございました。




