フルッサルト
僕は次の目的地に向かう準備をした。
次の目的地は北の果てケートストラント。
クリッジから出発すれば九日ほどで着くだろう。
「タリオ」
街で買い物をしているときに突然声をかけられた。
「やっぱり。タリオだ」
僕は声のする方に振り向いた。
そこにはユニがいた。
ユニは僕がゲーム内で所属していたギルドのメンバーだ。
オフ会で二度会ったことがある。
「ユニ。なんでここにいるの」
「タリオこそなんでここにいるの」
ユニは笑って言った。
僕達は場所を変えて近況を話すことにした。
「なるほどね。わかった。それじゃあ、私がタリオを守ってあげるね。」
僕がなんでそういう結論になったのかわからないという表情を浮かべていたのをみて、ユニが続けた。
「君は自分の状態を理解してないんだね。いまの君は魔法使えないんだよ。旅を続けたいなら、君を守ってくれる人が必要なの。その役を私が引き受けようってこと」
僕が戸惑っていると、ユニはさらに話を続けた。
「魔法を使うには魔力が必要なの。だけど、いまの君からはいっさい魔力を感じない。無理な魔法の使い方をしたんじゃない。魔力の源がダメージを受けているんだとおもう」
僕には心当たりがあった。
モンスターを杖で殴ったときにでた魔法、あれが原因かもしれない。
「そうと決まれば、早速出発しよう。三十分後に出発でいい?」
僕はうなずいた。
僕達は転送ボックスの前で待ち合わせた。
ユニは予定よりも早く来た。
「閉じ込められてから暇だったんだよね。久々にゲームしてる気がする。やっぱりゲームは面白くないとやる意味ないわ。それでどこまで行くの」
「クリッジからケートストラントを目指そうとおもう」
僕達は転送ボックスでクリッジに向かった。
クリッジに着くと、そこから北を目指して僕達は歩き始めた。
歩いてしばらくするとモンスターが出てきた。
僕は新しく買った武器、槍でモンスターに襲いかかった。
僕が襲いかかるよりも早くユニの魔法がモンスターを倒した。
「君、どういうつもり」
ユニは怒ったように僕に言った。
「モンスターを倒そうとおもって」
「本当に。私には死のうとおもってるようにしかみえなかったわ。ごめんね。きいてもいいかな。いまの君にあのモンスターが倒せるとおもってる」
僕は何も言えなかった。
ユニは黙って僕をみていた。
「戦って強くなろうとおもってたんだ」
「残念だけど戦っても強くはならないの。私達がこの世界で戦うたびに強くなれたのは、あの身体がアバターの身体だったから。いまの私達は魔法の力に頼るしかないの。わかった」
僕は黙り込んだ。
「そんなに私を信用できないかな。いまの私は君の数万倍強いとおもうんだけど。まぁいいや。とりあえず、命を粗末にするような真似はやめてね」
僕はうなずいた。
僕はユニに守られながらいくつかの街で休んだり泊まったりしながら、ケートストラントの近くの街フルッサルトの近くまでやってきた。
北に進むにつれて辺りは雪景色になり、防寒具を着ないと耐えられない寒さになっていた。
僕達が歩いていると突然モンスターがあらわれた。
僕は槍を構えた。
僕が槍を構えるよりも早く、ユニは魔法でモンスターをたおした。
「槍を選んだのはコゲツの影響なの」
ユニが言った。
「槍を選んだのはイオリテの影響だよ。コゲツは杖を使っていただろう」
「普段はそうね。けど高難度クエストのときはいつも槍を使っていたでしょ」
僕はコゲツがどんなふうに戦っていたか思い出そうとした。
しかし僕がコゲツのことをおもいだすとき、いつでもどうでもいいことで笑っている姿しか思い出せなかった。
僕達の前にフルッサルトがみえてきた。
城門に続く道を道なりに進んでいると道から少し外れたところで、女の子がモンスターに襲われているのがみえた。
僕は女の子を助けるために走った。
モンスターが女の子に殴りかかろうとしている手を僕の槍が弾いた。
モンスターは僕をターゲットに変えた。
その時、ユニの魔法がモンスターを倒した。
女の子は僕達にお礼を言って街に帰った。
僕達も街の中に入った。
僕達は街でケートストラントの情報を探すことにした。
ケートストラントは幻の街といわれている。
ケートストラントの周辺は常に暴風が吹き荒れていて、人が歩いて近づくことのできない場所なのだ。
年に数回暴風が止みその間に出入りすることができる。
そのタイミングがいつなのか知りたかった。
ききこんでわかったのことは、防風は十日前に一度止んで八日前にふたたび吹き荒れた。
なので次に防風が止むのは一ヶ月以上先だろうということだった。
僕達はこれからどうするか食事を摂りながら話した。
「すべてのプレイヤーにお知らせします」
突然大音量でどこからか音がきこえた。
「現在、ログアウトできない不具合が解消しています。なお、不具合の原因は以前として不明なためこの機会にプレイヤーの皆様にログアウトしていただきたくお願い申し上げます。遅くなりましたが、プレイヤーの皆様にご迷惑おかけしたことをお詫びします。この放送は繰り返し流させていただきます。ご不快かと思いますがご了承ください」
僕達は目をあわせた。
「いまのきいた。やっと帰れる。じゃあ、早速ログアウトしますか」
「僕は残る。最後まで精霊石探しを続けたいんだ」
「いまの放送きいてた。このタイミングを逃したら、いつ帰れるかわからなくなるよ」
ユニは呆れたように言った。
「僕が馬鹿みたいなことを言ってるのはわかってる。だけど最後まで精霊石を集めてほしいって願いを託されたから叶えたいんだ」
「君はさ、英雄とか主人公になりたいって言ってたよね。これはもうそうなんじゃないかな」
ユニはまっすぐ僕の目をみて言った。
「君はサンタさんのこと信じてた?」
その質問に僕は困惑した。
「えっと、子供の頃は信じてたとおもう」
「まぁ、そうだよね。物理的に世界中の子供達にプレゼントを配るなんて無理だもんね。私はさ、むしろいまのほうが信じてるんだよね。子供の頃、クリスマスは夢と希望に溢れていてすごく楽しかった。だけどそんな夢や希望はすごく脆くて、薄目を開けたか開けなかったそれだけのことで簡単に壊れてしまうようなものだった。だけどどんなことにも歴史があって、想いがあっていろんなもので繋がれているの。それに気づいたとき、みえてた世界が変わったんだよね。サンタさんには歴史があって、始まりはずっと昔で、キリストの誕生日であるクリスマスに子供達に笑顔で過ごしてほしいってサンタさんが思って施しをしたんだって。それが時代を経て子供達にプレゼントをあげる日に変わったんだって。時代が変わってもその中心には誰かに笑顔でいてほしいって感情が受け継がれているんだよ。その感情を受け継いでいくなら、その時その人はちゃんとサンタクロースなんだと思う。だから私が子供の頃、私にプレゼントをくれたのはやっぱりサンタさんなんだって思うってこと」
「すごくいい話だと思う。だけどそれと僕との関係がわからないんだ」
「つまり君は英雄から感情を受け継いでいるわけだから、君も英雄ってことでいいんだよ」
「君は君がおもっているよりも強いよ。もっと自分を信じてあげて」
そう言ってユニはログアウトした。
僕はケートストラントに行けるタイミングがくるまで、このままフルッサルトに残ることにした。
ユニがログアウトするのを店の外で見送り終わったあと、さっきモンスターに襲われていたところを助けた女の子が僕に近づいてきた。
女の子は溶けることのない氷でつくった盾を僕にくれた。
完結したので一斉に投稿します。
応援してくださった皆さんのおかげで最後まで書ききれました。
ありがとうございました。




