ザントルス
翌朝、僕達はザントルスの街で精霊石の手がかりを求めて探索した。
ザントルスの街では川の水が海から山へと流れていた。
「この街に来るたびに不思議におもうんだ。なんで水が低いところから高いところに流れるんだろうって」
「この街では水も人も高みを目指す」
イオリテは言った。
「高みを目指すと水は山に登るのかい」
僕は言った。
イオリテは笑った。
「冗談さ。これはただの不具合だ」
イオリテは言った。
「この世界は欠陥だらけなんだ。だけどそれが魅力なんだ」
イオリテは逆流する川をみながらほほえんでいた。
砂浜に行くと、砂で城を造っている女の子がいた。
「立派な城だね」
僕は言った。
「ありがとう。この城に住めたらパッヒーだとおもわない」
「とても素敵だとおもう。だけど、ここだと波に流されてしまうんじゃないかい」
僕がそう言うなり、波はまたたく間に城を壊してしまった。
「残念ね。次は波の来ないところで造るわ」
女の子は言った。
僕はうなずいた。
探索を続けると街路樹を手入れしている人々がいた。
彼等は街路樹に溶け込んでいて、通り過ぎる人達は誰も彼等を気にしなかった。
僕はしばらく手入れの様子を眺めていた。
手入れしている人と目があった。
その人はほほえんだ。
僕は気恥ずかしくなって目をそらして立ち去った。
コンテストが開かれている浜辺では、ちょうど強さコンテストが結果発表されているところだった。
筋肉隆々でたくましくて強そうな男性がチャンピオンになっていた。
彼は観客に向かって感謝を述べていた。
この日は何もみつからなかった。
僕達は宿屋に泊まって身体を休めた。
今日も、僕達は精霊石を探して探索した。
砂浜で城を造っていた女の子のことが気になって僕達はまた砂浜に行った。
女の子は今度は波の来ないところに城を造っていた。
「立派な城だね」
女の子は僕をみてほほえんだ。
「さっきのよりもいいのが造れたの。ここなら波も来ないし壊れる心配もないの」
強風が吹いて城は壊れてしまった。
女の子は寂しそうな表情を浮かべた。
僕は何も言えなかった。
「また造る。いまのはさっきのよりも上手く造れたから次のはいまのよりもずっといいものになるの」
僕はほほえんだ。
探索を続けると果樹園があった。
果樹園には林檎が赤々と輝いて実っていた。
僕はログアウトできなくなって、この世界に閉じ込められた日にもらった林檎をおもいだした。
あの林檎もここで作られたんだろうか、とおもうとここにある林檎は特別な輝きを持っているようにみえた。
コンテストが開かれている浜辺では、ちょうど強さコンテストが結果発表されているところだった。
筋肉隆々でたくましくて強そうな男性が二連覇してチャンピオンになっていた。
彼は観客に向かって感謝を述べていた。
この日も何もみつからなかった。
僕達は宿屋に泊まって身体を休めた。
今日も、僕達は精霊石を探して探索した。
砂浜で城を造っていた女の子のことが気になって僕達はまた砂浜にきた。
女の子は本当に人が住めそうな立派な城を造っていた。
「これなら本当に住めそうだね」
女の子は笑った。
「自分で言うのもなんだけど、完璧ね。とても素晴らしいものができた」
突然、どこからか飛んで来たボールが城を壊してしまった。
ボールの持ち主らしい子ども達がやってきて、謝りながらボールを拾って走って逃げてしまった。
女の子は黙っていた。
僕は何も言えなかった。
僕達はただ黙って立っていた。
探索を続けると浜辺から離れたところに舟が浮かんでいた。
舟の上にいる人達は白い波めがけて網を投げ込んだ。
白い波は激しく波をたてた。
舟の上の人達は網を引っ張って舟に網を回収しようとしていた。
僕達は探索を続けるためその場を離れた。
コンテストが開かれている浜辺では、ちょうど強さコンテストが結果発表されているところだった。
筋肉隆々でたくましくて強そうな男性が三連覇してチャンピオンになっていた。
彼は観客に向かって感謝を述べていた。
この日も何もみつからなかった。
僕達は宿屋に泊まって身体を休めた。
今日も、僕達は精霊石を探して探索した。
砂浜で城を造っていた女の子のことが気になって僕達はまた砂浜にきた。
女の子が新しい城を造り始めたところだった。
「調子はどう」
「順調ね。すべてうまくいってる」
女の子は僕をみて言った。
僕はよくもう一度造り直す気になったねと言おうとしてやめた。
「城が壊れても、私は壊れてないもの」
女の子は僕が飲み込んだ言葉を拾って言った。
僕はほほえんだ。
女の子もほほえんだ。
探索を続けるとウェッタリドに渦巻いていた、濃い黒い霧がザントルスまで伸びているのに気がついた。
僕はしばらく黒い霧を眺めていた。
黒い霧はすこしずつ薄っすらとザントルス全域を覆っていった。
ずっと見続けていなければまったく気がつかないほどのスピードで自然と染まっていく色に僕は怖れを感じた。
コンテストが開かれている浜辺では、ちょうど強さコンテストが結果発表されているところだった。
筋肉隆々でたくましくて強そうな男性が四連覇してチャンピオンになっていた。
彼は観客に向かって感謝を述べていた。
チャンピオンの後ろにいた参加者が突然前に進みでて、チャンピオンに襲いかかった。
彼は力の限りに強行におよんだ。
チャンピオンが気を失うと彼はおたけびをあげた。
「俺がチャンピオンだ!! よくみろ、勝ったのは俺だ!!」
彼は声の限りに叫び続けた。
「強いのは俺だ!! 力があるのは俺だ!!」
黒い霧が彼の中から噴き出した。
彼の姿はたちまちモンスターのようになっていった。
イオリテは短剣を構えてモンスターに飛びかかった。
モンスターは斬り裂かれて浄化された。
ところが、チャンピオンに襲いかかった参加者の中からはふたたび黒い霧が噴き出した。
「強いのは俺だ!!」
彼はそう叫びながらさっきよりも大きく禍々しいモンスターの姿に変わっていった。
その姿に観客は興奮して沸き上がった。
その光景に僕は寒気を覚えた。
イオリテはふたたびモンスターを斬り裂いた。
モンスターは斬り裂かれて浄化された。
チャンピオンに襲いかかった参加者の中からはふたたび黒い霧が噴き出した。
異変が起こるときいつでも精霊石が中心にあった。
僕は精霊石を探した。
精霊石の放つ光を感じとろうとした。
チャンピオンに襲いかかった参加者の腰についている袋から光が漏れているのに気がついた。
「イオリテ、腰の袋だ!! そこに精霊石がある!!」
僕は叫んだ。
イオリテはチャンピオンに襲いかかった参加者の腰についている袋を奪い取ろうとした。
「俺が最強だ!!」
チャンピオンに襲いかかった参加者はそう叫びながらさっきよりも大きく禍々しいモンスターの姿に変わっていった。
その姿に観客は大興奮して沸き上がった。
その時、ザントルスを覆っていた黒い霧が集まり大きな顔と大きな手ができた。
大きな手はモンスターを掴み、大きな顔はモンスターを食べた。
観客は悲鳴を上げた。
イオリテは僕のところに戻ってきて、僕に身構えるように促した。
「あれは魔王ディスター。本物の最強のモンスターだ」
イオリテは言った。
楽しんでいただけましたか。
毎週月、水、金曜日の午前7時頃に1話ずつ更新する予定です。
またお越しください。




