ドゥンゼーレ 2
人々は城内に乗り込んだ。
人々は口々に城を取り戻せ、偽王を追放しろと叫んだ。
人々は城を守る兵士達と広場でぶつかりあった。
城門の屋上にいたはずの偽王は、いつの間にか城の屋上にいた。
「余が法である。余に歯向かうものは、皆死罪である。死が怖ければ敵を倒せ」
広場にいるすべての人が向きを変えてキュイ王に武器を向けた。
「喜びの雨よ降り注げ!! もはや怖れは消えた、ともに戦おう!!」
広場にいるすべての人が向きを変えて偽王に武器を向けた。
「余の命に歯向かうか!! なんと命知らずな。皆のもの、余の力を思い出させてあげよう」
偽王はそう言って、手を天に掲げた。
魔力の霧がたちまち集まり広場の人々に入り込んでいった。
魔力の霧に襲われた者も、襲われてない者も広場にいるすべての人が向きを変えてキュイ王に武器を向けた。
「喜びの雨よ降り注げ!! 誰も救わない王になぜ命を求める、ともに戦おう!!」
魔力の霧はたちまち散って消えた。
広場にいるすべての人が向きを変えて偽王に武器を向けた。
「彼等はなぜこんなにコロコロと立場を変えるんだろう、そう思っているだろ」
ジョテが僕に言った。
僕はうなずいた。
「彼等は正しさを信じているのさ。正しさなんてあるはずないのに」
「君はキュイ王のために戦わないの」
「何のために?」
ジョテは驚いて言った。
「君は忠臣だろう」
「俺はたしかに忠臣だが、いま俺がやらなければいけないのは殿下のために戦うことではなく、殿下がその力を正義の名のもとに強行することを止めることだ。俺は忠臣だから殿下をいさめる。俺が戦えば殿下をいさめる者がいなくなる。だからこそ戦わない。わかるか、俺は殿下の忠臣であり殿下の良心なんだ。殿下は立派な人さ。そんな殿下の忠臣であることは俺の誇りなんだ」
ジョテは誇らしげに言った。
「そんな立派な人ならいさめる必要があるのかい」
「殿下が個人である限りにおいては俺は必要ないだろう。だが殿下は集合体になる。だから、集合体から分離させる存在が必要になる」
「集合体……」
「群集は集合体だろ」
魔法のやりとりにしびれを切らし偽王は、どこからか精霊石を一つ取り出して天に掲げた。
「余の命は絶対である!!」
精霊石は光輝き、精霊石から溢れるエネルギーが偽王の魔法を強力にしていく。
キュイ王の魔法は偽王のだした魔力の霧にかき消され、広場にいるすべての人が向きを変えてキュイ王に武器を向けた。
「喜びの雨よ降り注げ!!」
キュイ王はふたたび喜びの雨を降り注いだ。
雨は魔力の霧を散らせて消した。
広場にいるすべての人が向きを変えて偽王に武器を向けた。
「なんでこんなにすごい力を持っているのに、城を乗っ取られたの」
僕はジョテに言った。
「自分の中に喜びを持たない者が誰かに喜びを与えることはできない。城を取られたあの日、殿下は兵士達に裏切らたショックで喜びを失ったのさ。いまはあんたが与えた喜びが力を与えてる」
「僕が」
ジョテはうなずいた。
偽王はもう一つ精霊石を取り出して、二つの精霊石を両手に持って掲げた。
「余は世界そのものである!!」
精霊石は光輝き、精霊石から溢れるエネルギーが偽王の魔法を協力にしていく。
魔力の霧が広場を覆いつくて、広場にいる人々の身体の中に入り込んでいった。
魔力の霧に襲われた広場にいるすべての人々が向きを変えてキュイ王に武器を向けた。
「喜びの雨よ降り注げ!!」
キュイ王は雨を降らせた。
雨は魔力の霧を散り消した。
雨に打たれた広場にいるすべての人々が向きを変えて偽王に武器を向けた。
「なんでキュイ王の魔法は威力が変わらないのに偽王の強力な魔法を打ち消せるんだ」
僕はつぶやいた。
「理屈は感情には勝てないのさ」
ジョテはつぶやいた。
偽王がふたたび精霊石を天に掲げて魔法を唱えようとした。
その時、謁見の際に城の中に潜んでいたイオリテが飛び出して精霊石を偽王から奪い取った。
そのままイオリテは城の屋上から広場に飛び降りた。
人々が混乱している広場を突っ切って僕の方へ走ってきた。
「行こう」
イオリテはそう言って、僕の手を引っ張りながら転送ボックスに走った。
「僕達はこの混乱を見届けないの」
僕は立ち止まって言った。
「ここに残って私達に何かできることがあるのかい」
僕は首を振った。
「私達に必要なものは手に入れた。あとのことは残った者達に任せよう」
イオリテは二つの精霊石を僕に放った。
僕は二つの精霊石を掴んだ。
一つは偽王が持っていた精霊石、もう一つは僕達が取られた精霊石。
僕は偽王から奪った精霊石の文字をみた。
「メグレズ。そう書いてある」
イオリテは僕が精霊文字をみているのをみて言った。
僕達は転送ボックスに入り、ウェッタリドに帰った。
転送ボックスを出ると、ウェッタリドの街がいつもよりも薄暗く感じられた。
「黒い霧が充満しているな」
イオリテが言った。
「何かあったんだろうか」
僕は言った。
僕達はウェッタリドの街の様子を詳しく調べることにした。
街の中央広場に行くと人だかりができていた。
僕達は近くにいた人に話をきいた。
「君は知らないのか。不具合が直ったんだよ。中央広場の転送ボックスからログアウトできるようになったんだ。ただ、一人ログアウトするのに五時間近くかかっているんだ。
それなのに転送ボックスは一つしかない、そのせいで誰も彼も我先にと殴り合ってでも転送ボックスに入りたがっているんだ」
「そうなんだ」
僕はつぶやいた。
不具合が直った、その知らせは僕にショックを与えた。
なんだか無性に寂しくなった。
「タリオ、大丈夫か」
「僕達の旅は意味がなかったらしい。旅はこれで終わりだ」
僕は精霊石探しの旅に終わりを告げた。
僕は拠点に帰ってベッドに横になった。
「本当に旅を終わらせるのか。次の目的地に行く準備をしないか」
「不具合の原因が虹色の塔じゃないなら精霊石を集める意味がないだろう」
僕はイオリテの方を向いて言った。
「精霊石を集める意味はなくなったかもしれないけど、この旅を続ける意味はあるんじゃないか」
イオリテの言葉に僕は何も言わなかった。
「俺は楽しかったんだけどな」
「おれ?」
「楽しくなかったかい」
僕はすこし考えてみた。
「楽しかった」
「だろ、旅の理由なんてそれでよくないか」
僕はベッドから身体を起こした。
「そうだな、やっぱり旅を続けよう。どのみちあの人数がログアウトするのを待つなら、残りの精霊石も集めれそうだ」
「それで次の目的地は」
「次はザントルスだ。ウェッタリドの近くだ」
僕達は旅の支度を済ませた。
翌日、僕達は朝早くに歩いてウェッタリドを出発した。
夕方には山と海に恵まれた街、ザントルスにたどり着いた。
城門をくぐると浜辺が広がっていた。
ザントルスの街の浜辺では様々なコンテストが開かれていた。
美しさであったりたくましさであったりと。
今日の敗者は明日には勝者になっていたり、今日の勝者が明日には敗者になっていたり。
そんなことが日々繰り返されていく。
僕達は宿屋に泊まった。
楽しんでいただけましたか。
毎週月、水、金曜日の午前7時頃に1話ずつ更新する予定です。
またお越しください。




