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【9/30書籍3巻&コミカライズ発売】もふもふと行く、腹ペコ料理人の絶品グルメライフ  作者: 佐倉涼@もふペコ料理人10/30発売
ACT3:ルーメンガルドの雪原と岩窟

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ついにできたよ、鑑定魔導具!②

 バベルの塔の21階はすっかりアイラたちにとって慣れた場所だ。

 カウンターに無数にいる職員の中から、顔馴染みを探し、発見し、声を掛ける。


「ブレッドさーん」

「アイラさん。こんにちは。先日のパン、美味しかったです。他の職員の間でも評判になってました」

「それはよかった。ところでブレッドさんいつもギルドにいるけど、休みとってるの? ギルドって無休なの?」


 アイラの疑問にブレッドは営業的な微笑みを浮かべた。


「もちろん、きちんと休暇をいただいてます。アイラさんの来るタイミングがちょうど僕の勤務時間と被っているんですよ」

「ふーん……あたし結構バラバラな時間に来てるけどね」


 アイラは時間で動いているわけではないので、ギルドに顔を出すのは昼だったり夜だったりするのだが、いつでもブレッドは働いていた。

 まあ、とにかく、知り合いがいると話が早いしとても助かるので彼の勤務形態について深く気にするのはよそう。


「本日はどんなご用件で?」

「そうそう。次はルーメンガルドに行くから、情報を仕入れに」

「ルーメンガルド……もしかしてピエネ湖にキュウリュウウオを釣りに行くんですか?」

「そうだよ。よくわかったね」

「アイラさんの思考は非常に読みやすいので」


 頭の中が常に食べ物のことでいっぱいなことがバレてしまっている。ともあれ、アイラはそれが年頃の娘として恥ずかしいとか隠しておきたいとか思ったことはない。思っていたら、まだバベルに来たばかりの頃、初対面のブレッドに向かって「バベルに来たのは、ここにはありとあらゆる魔物食材が揃っているから」なんて言わない。

 自分に正直なのは美徳だと思っている。嘘をついたらダメだよね。アイラは美味しいものをお腹いっぱい食べたい。

 ブレッドが例によってカウンターに詳細な地図を広げてくれた。


「ルーメンガルドはバベルの北に広がる広大な雪原です。北にまっすぐ半日ほど進んだところにピエネ湖があり、ここで釣りが楽しめます。ゴア砂漠との境目にはずっと銀雪山脈ぎんせつさんみゃくとよばれる山々が広がっていて、無数の岩窟が存在しています。岩窟内は砂漠からの熱が入り込むおかげで快適な気温になっており、探索拠点も存在していますので、滞在するなら利用したほうがいいでしょう。ピエネ湖から数時間の場所にありますよ」


 確かに、ゴア砂漠とルーメンガルドの雪原の間には、両者を隔てる巨大な壁のように細長い山脈がずーっと続いている。


「この山の岩窟全部が探索拠点になってるの?」

「いえ、一部だけです。岩窟は広く深く、どうなっているのかわからない部分も多いため、無闇に探索するのは危険です。まあ、それを言うなら、雪原自体が非常に危険なのですが……」

「吹雪がすごいってこと?」

「それもありますが、ルーメンガルドには現在『二大脅威』と呼ばれている存在があります」

「えぇー、またぁ? 湿地帯みたいに勘違いじゃなくて?」

「雪原の脅威ははっきりと認識できているものなので、違います。一つは『雪原の覇者』と呼ばれる巨大な魔物マンムート。吹雪と共に現れて、一歩進むごとに雪崩を引き起こし、咆哮は氷の礫と共に冷気を撒き散らして人々を氷像に変え、その牙と角は人体など軽く貫通するという、正真正銘、人間の敵である恐ろしい魔物です。奴は必ず吹雪とともに現れるので、突然雪が吹き荒んだら逃げてください」

「わかった。もう一つは?」

「……ルーメンガルドには時折、『堕ちた者』と呼ばれる盗賊が出ます。出会ったら最後、訪れる冒険者を拘束し、持ち物を問答無用で奪い去って行くので、注意してください。雪原に丸裸で放り出されたら、どんなに屈強な冒険者の皆さんでも凍え死んでしまいます」

「姿が確認できているなら、そんな迷惑な奴さっさと捕まえればいいんじゃない?」

「お恥ずかしい話なのですが……こちらとしても対処しようとしているのですが、出没地域が特定できないばかりか、強力な魔法攻撃を行使してくるので手に負えず。盗賊団のように複数の人間が徒党を組んでいるわけでなく、単独で行動しているようなのですばしこくて。おまけに彼が現れる時は高確率でマンムートとも出会うので、大抵の冒険者はそちらに気を取られて捕縛どころではないのです」

「もしかしたらその人は、マンムートを従魔にしてるの?」

「どうでしょう……定かではありません」

「ふぅん……そっか」

「とはいえ、ピエネ湖に行くだけならばほとんど心配ありません。あの場所はバベルから近いので多くの冒険者が釣りに訪れていますし、マンムートの生息域はもっと雪原の奥の方ですから。他の魔物も出没しますが、アイラさんの敵ではないでしょうし」

「なるほどね、わかった。ありがと」

「もし何か貴重な素材など持ち帰った時には、ぜひギルドにお持ち下さい。引き取らせていただきます」

「うん」


 雪原にも危険があるということを認識しつつ、とにかく魚を揚げる油を準備しないとね、とアイラは内心で既にまだ見ぬキュウリュウウオをカラッと揚げて食べる自分とルインの姿を想像してウキウキとしていた。


「今回は、釣り道具を持って行くよ」

「釣り……オレも出来るか?」


 アイラは四つ足でのっしのっしと歩行するルインを見て、少し悩んだ。


「どうだろう……両手で釣り竿を握って固定するから、ちょっと難しいかもしれない」

「むぅ。仕方ない。雪上の食べられそうな魔物でも狩るか」

「そうだね、期待してるよ!」


 一体どんな魔物が出るのだろうか。どんな魔物でもどんと来いだ。鑑定魔導具を手に入れたアイラに、もはや怖いものはない。摩訶不思議な形をしたものでも、瞬時に食用かそうでないかの判断がつく。うっかり即死級の猛毒キノコを食べてしまうという心配もなくなった。


「よぉし、今回は調味料とか色々持って、向こうで料理しまくるぞ!」


 早速準備をしようと、アイラははりきって買い物に出かけた。


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