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こうして第三の人生がはじまった

「ーーそんな幸せな日々もあったわねぇ!!」


 己の十八年の人生を振り返ったアイラは、腹の底から声を絞り出してそう言った。

 今アイラは、ダストクレストを後にしてルインとともに森の中を疾走していた。


「幸せというのは儚いものだ」

「ほんっっとうにそうね!!」


 ルインの言葉に力一杯同意する。

 シーカーといる時は喋らなかったルインだが、アイラと一緒にいるようになってからは喋るようになった。曰く、シーカーとは人語を発しなくても意思疎通ができたため喋る必要がなかったそうだ。

 それにしても……。

 アイラは後ろをチラリと振り返る。

 ダストクレストがあった場所は派手に黒煙が上がっている。

 ほんと、どうしてこうなった?

 今日は久しぶりにとびきり美味しい肉が食べたいなぁと、意気揚々と森の奥に住む霊森竜を狩りに行った。待っててねみんな、あたし、ぜったいに肉を取ってくるから! そう請け負い、しかし残念ながらその日の狩りの成果はゼロだった。悲しい。悲しみに暮れながら帰ったら、なんと都市が丸ごと焼き尽くされていた。もう、目が点である。


「数日前に国のお偉いさんが視察に来ただろう。それじゃないか」

「都市掃討作戦ってやつ? 国中丸ごと綺麗にしようって」

「うむ。ゴミ溜めは燃やし尽くすとかそんな話をしていたはずだ」

「でもねぇ、結構頑張って綺麗になったと思ったのに、まさか丸ごと燃やされるなんて思わないじゃん」

「住民たちの心は綺麗になったが都市の見た目は相変わらず汚いままだったから、燃やされたのだろう」

「自分勝手な考えだなぁ〜」


 ため息をつくアイラはダストクレストから目を離して前を向いた。


「まぁ……燃やされちゃったものは仕方がない」

「お前は結構ドライなところがあるな」

「街の人ならきっと逃げ出してるよ、多分」


 所詮この世は弱肉強食である。弱ければ死んで強ければ生き残る。もしくは、昔アイラがシーカーに助けられたように、運が良ければ生き延びられるかもしれない。 

 シーカーと別れて四年ダストクレストで暮らした。楽しいことは色々あった。美味しいものもたくさん食べた。その末に都市が爆破魔法で爆破され、アイラは一文なしでルインと共に森に放り出されてしまった。理不尽なことこの上ないが、それも仕方がない。

 だってここは女神ユグドラシル様のいる世界樹から遠く離れた、世界のゴミ溜めとまで呼ばれた場所なのだから。今までの平和な生活が奇跡みたいなものなのだ。

 ルインは赤とオレンジが混じり合った見事な毛の生えた前足を動かしながら、アイラに問いかける。


「それでこれからどこへ行く?」

「んーそうだねぇ」


 アイラは考える。

 ダストクレスト周辺の魔物は一通り堪能した。弱い魔物から界隈のボス的な魔物まで全部骨の髄まで味わい尽くした。すみかを追い出されてしまったのだから、なんかもっと違う魔物が出る場所に行きたいなと思う。新たな魔物を食べてみたい。


「そうだ! 隣国の冒険者都市に行こうかな」

「冒険者都市?」

「そうそう。聞いたことない? 世界樹から一番遠く離れた場所にあるすっごい大きい都市で、東西南北が異なる気候に囲まれた過酷な環境。シーカーと一緒に行ったことないかな」

「ないな……シーカーはあまり大きな都市には近寄らなかったから」

「そっかぁ。聞いた話だと、ありとあらゆる種類の魔物や珍しい動植物が周囲に生息しているらしいよ。ってことは、世界中の美味珍味が食べ放題ってことじゃない? ここはぜひ、行って確かめてみないと!」

「どのくらいかかる?」

「ギスキアナ山脈を抜けて行かないといけないから、少なく見積もってもひと月以上かな……」

「なるほど。オレに乗っていけばもう少し早く行けそうだな」

「乗っていいの?」

「アイラは綿ぼこりほどに軽いから全くなんの問題もない」

「綿ぼこりって! まあ、ありがとう。ルインにもお世話になりっぱなしだね」

「構わん。好きでやっている」


 姿勢を低くしてくれたルインにまたがる。ルインの毛並みはふかふかもふもふであったかく、おまけに乗っかっていればものすごい速度で移動してくれるのでアイラはかなり楽ができる。ダストクレストにいる時に気がついたのだが、普通の人がルインに触ると皮膚が火傷を起こしたみたいに火ぶくれを起こす。どうやら火魔法への耐性がない人間に火狐族ルインの体温は熱すぎるらしい。

 そんな感じでアイラは跡形もなく木っ端微塵になってしまったダストクレストを後にして、第三の人生を送るべく冒険者都市を目指すことにした。


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もふもふと行く、腹ペコ料理人の絶品グルメライフ 



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