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【9/30書籍3巻&コミカライズ発売】もふもふと行く、腹ペコ料理人の絶品グルメライフ  作者: 佐倉涼@もふペコ料理人10/30発売
ACT7:臨時開店!アイラの料理店

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いざ仕込み

「サラマンダーのお肉、味はいいけど食感をもうちょっとどうにかしたいよね。硬すぎた」

「冒険者たちは硬い肉にも慣れていますが、お店で出すなら柔らかい方が好まれるでしょうね」


 アイラの悩みにエマーベルも同意する。


「探索でかたーいお肉ばっかり食べるからぁ、せっかくお金払うなら美味しいお肉がいいですよねぇ。まあ、味は美味しかったんですけどぉ……」

「結構顎が疲れた」

「だな」


 クルトンもノルディッシュも両頬を押さえながら頷いている。 


「よし……お肉を柔らかくしよう」

「そんな方法あるんですか?」

「ある! ヨーグルトがあれば解決するよ」

「ヨーグルト、ですかぁ?」

「そ。お肉をヨーグルトに漬け込むとなぜか柔らかくなるんだよね」


 詳しい原理はアイラにもわからない。ただアイラの料理の師匠ソウは「パサパサの肉をヨーグルトに漬け込むと柔らかくなるんだぜ!」と言っていたし、実際にやってみたら本当にしっとりと柔らかくなった。


「このスパイシーな味のお肉をヨーグルトに漬け込めば味もマイルドになりそうだし、絶対合うと思うんだ。てことで、ヨーグルトを手に入れに市場に行こう」

「大量に必要でしたら、牧場に行った方がいいですよ。その方が量を確保できるので」

「牧場があるの?」


 提案してきたエマーベルにアイラははたと動きを止めた。


「はい。乳製品はそこで作って市場に卸してるんです。バベルの三十五階だったはずです」

「えっ。じゃあ行こ行こ。今すぐ行こう」


 立ち上がったアイラは牧場へ行くべくキッチンを出た。

 バベルの塔は独特の都市となっている。

 四方を凶悪な魔物の蠢く地域に囲まれているため、都市内で全ての物事が完結するように造られているのだ。そのため都市内部には居住区域や市場、治療所といった場所だけでなく、畑があったり牧場があったりする。


「畑には前に行ったことがあるんだけど、牧場は初めてだぁ」

「うむ。あの時は……地獄を見たな」

「あはは。ドラゴンに乗って空を飛ぶなんて貴重な経験したよね」

「もう二度とやりたくはない」

「畑に行って……ドラゴンに乗って空を飛ぶとは一体……?」


 全く理解できないとエマーベルの表情が語っている。


「三十九階からパルモ高地に行く時に、竜商隊のドラゴンに乗せてもらったんだ。ほら、ルインの体だとロープ使って行けないでしょ?」

「オレにも翼があればいいのに。そうしたら海だろうが山の上だろうがどこでも行ける。怖くない」


 確かに自力で飛ぶ手段があればストレスも減る。

 しかしないものはないので嘆いたってしょうがない。


「しょうがないよ、ルイン。せめてもう海の上も空の上もなるべく行かないようにしよ」

「うむ」

「とにかく今は牧場だね」

「そうだな」


 バベルの転移魔法陣では、三十五階までいく手段はない。地道に階段を下って行くことになるが、四十一階からは比較的近いので特に困ることなどなかった。

 そしてたどり着いた三十五階。

 そこは、一面が牧草で覆われた、非常にのどかな場所……ではなかった。 


「ブモ! ブモ! ブモォオオオォオォ!!!」


 叫び声を上げる数十頭の牛。それに全く構わない様子で世話をする人々。


「うーん、センティコアはやっぱこうなんだね。ぜんっぜん鳴き声がしなかったから気づかなかったけど」

「こやつらの騒がしさ、忘れていた」


 アイラとルインは酪農場を見てそんな風に感想を述べた。

 眼前にいる牛は、センティコアという種類の乳牛だ。黄色みがかったミルクは比較的クセが少なく、料理にも菓子にも合わせやすい。飼料が乏しくてもすくすく育つ。育てやすさからアイラが以前いた都市の近郊でも積極的に飼われていた。

 しかしたった一つ欠点がある。


「うるさいんだよねぇ」

「うむ、うるさいな」


 センティコアはうるさい。

 別に凶暴なわけではないのだが、とにかくよく鳴く。やかましい。

 ブモォブモォとひっきりなしに騒ぐので、静けさとは程遠い。

 茶色い毛並みのセンティコアが牧草地をうろうろし、定期的に鳴いていた。

 一説にはこのセンティコアが鳴くのは、仲間同士で会話をしているからなのだという。おしゃべりな牛なのだ。


「あれっ、お客さん??」


 アイラたちが出入り口で突っ立っていると、女の子が一人、たたたっと駆け寄ってきた。


「今日は酒場に卸す分はもう持って行ったはずだけど……」

「酒場のお使いじゃないんだぁ。あたしたちにヨーグルト売って欲しいんだけど」

「いいけど……どのくらい?」

「三十キロくらい」

「え、そんなに!?」


 突如ヨーグルトを三十キロ要求するアイラに、女の子が明らかに慌てた。


「そ、そんなにあったかなぁ……ちょっと見てくる……!」


 女の子は階段のすぐ脇にある小屋の中に走り去って行ってしまった。


「困らせちゃったかな?」

「まあ、突然ヨーグルト三十キロも買うお客さんなんて来ないでしょうからぁ……」


 シェリーの控えめながらももっともな言葉に、アイラもまあそうだよねと同意する。

 しばし待っていたら、小屋の扉がガチャリと開いた。


「お待たせしました。三十キロ用意できます。中にどうぞ!」

「用意できるって! ラッキー」 


 促されるままに小屋の中に入っていく。バベルの他の場所とは異なる木造りの小屋の中には、銀色のミルク缶がたくさん並んでいた。


「この缶の中にヨーグルトが入ってるから。三十キロだから、三つだね。んしょ……っと」

「重いからあたしたちで持つよ」


 さすがに一つ十キロのヨーグルトが入った缶を、モカと同じくらいの年齢の女の子には持てないだろう。アイラとエマーベル、ノルディッシュでひとつずつ持つことにし、代金を支払う。


「ヨーグルトも手に入ったことだし、早速お肉の仕込みをしようっと!」


1月のラノベニュースオンラインアワード投票が始まっているようです。

宜しければ本作への投票もお願いします。

https://ln-news.com/articles/121672

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