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【9/30書籍3巻&コミカライズ発売】もふもふと行く、腹ペコ料理人の絶品グルメライフ  作者: 佐倉涼@もふペコ料理人10/30発売
ACT7:臨時開店!アイラの料理店

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209/225

社会科見学①

 営業までの残り時間は、全員でひたすらアップルクランブルの下準備に追われていた。

 蜜袋から蜜を取り出す作業が想像以上に時間がかかったせいだ。

 一つ一つが小さくて、中身がさほど入っていないのだが、一滴たりとも無駄に出来ないので取り出すのに慎重になる。そして大量にあるので、全員で取り組んでも非常に時間がかかった。

 こうした作業では出番のないルインは、床に伏せって昼寝を始めてしまった。

 店を始めてから、ルインの活動量が明らかに減っている。

 食べて寝て食べてを繰り返す日々だ。

 普段の探索時との落差がすごい。

 このままだとルインの体重がどんどん増えるのでは……とアイラはちょっと心配していた。

 店が一段落したら探索に出て一緒に走ろうとアイラはひそかに誓う。

 みんなで取り出した蜜を使い、アップルクランブルをどんどん焼いていく。

 一度に三皿しか焼けないのでとにかく時間がかかった。

 こうしてアップルクランブルを焼いているだけで午後は過ぎ去り、本日の営業時間となった。


 営業開始とともにどやどやと共同キッチンの中に客がやってくる。

 どうやら外で行列を作って待っていたらしく、開店と同時にかなりの人数が入ってきた。


「こっちに日替わり四つ!」

「こっちは五つ!」


 と注文する声が響き、これにシェリー、クルトン、ノルディッシュたちが呼応する。

 もはや営業三日目なので慣れたものだが、今日はいつもとはまた少し違うのだった。


「お邪魔しまーす」

「お、お邪魔します」

「しーっ、静かにしないとダメだよ」


 扉から現れたのは、七、八歳くらいの子供たち。

 一列に並んでキッチンの中に入ってきて、壁際をそそくさと移動している。

 客の冒険者たちが怪訝な顔をした。


「なんだぁ? 酒場で給仕してるガキどもじゃねーか」

「今日はこっちの手伝いか?」


 一番前に立っていた子が、さっと手持ちの看板を掲げる。冒険者は文字を読み上げた。


「『見学中』……?」

「お勉強になるから見てきなさいって、お父さんに言われて……!」

「ははぁなるほど。そういうことか」


 納得したらしい冒険者は子供に興味をなくし、運ばれてきた料理に集中しだす。

 子供たちは五、六人のグループに分かれてキッチンを訪れているようだった。

 ぞろぞろとやってきて、部屋の片隅に立って様子を見学し、しばらくすると帰っていく。そしてまた次の子供たちがやってくるという寸法だった。

 特に邪魔をするわけでもないし、冒険者たちも子供たちのことは酒場で見慣れているので気にするわけでもなく、通常の営業と同じように食事をしている。

 アイラたちも、話しかけられたりしない限りは特に反応しなかった。忙しくて手を止めて構っている暇がないというのもある。

 そして何組目かの時、見知った女の子が現れ、アイラに声をかけてきた。


「アイラさん、こんばんは。お邪魔するね」

「モカちゃん、やっほ! まあ、適当に見て行って」

「うん」


 以前カラフルベリーの群生地まで案内してくれた、酒場の給仕係のモカだ。

 モカの他には、緑色の髪を短く刈った男の子と、坊主頭の子、それから女の子があと二人いる。

 そのうちの一人、緑色の短髪の子がアイラをぎろりと睨むように見つめている。アイラは調理の手を緩めずに首を傾げた。


「そっちの緑色の髪の子……なんか機嫌悪い?」

「気にしないで、アイラさん。オルトはちょっと反抗期なの」

「おいモカ、余計なこと言うな!」

「しーっ、静かにしないとダメだって言われたでしょ!」


 なるほど、彼がロッツさんが言っていたオルトくんかぁとアイラは思う。

 卵を買い占められて怒り心頭だという彼なら、こちらに反抗心のようなものを抱いていても不思議ではない。

 モカはオルトの無礼を詫びるかのように、代わりに頭を下げて丁寧な挨拶をする。


「大人しくしているから、今日はよろしくお願いします」

「うん。気軽にどうぞ!」


 とりあえずアイラはニコッと笑ってそう言った。


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もふもふと行く、腹ペコ料理人の絶品グルメライフ 



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