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【9/30書籍3巻&コミカライズ発売】もふもふと行く、腹ペコ料理人の絶品グルメライフ  作者: 佐倉涼@もふペコ料理人10/30発売
ACT7:臨時開店!アイラの料理店

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双子とフェーレ大渓谷の幻の食材②

「お待たせしました、アル粉とデア粉、それにバターです」

「今回は買い占めなかったぜ」


 アイラが肉の下ごしらえをしていると、エマーベル、クルトン、ノルディッシュが大荷物を抱えて戻ってくる。

 それぞれが大袋を担いでキッチン内に入ってくると、荷物をテーブルへと下ろした。


「ありがと、助かったよ」

「今日は何を作るつもりなんですか?」

「フェンネルは香草焼きにして、宵闇の硝子瓜は冷たいスープに、暁の林檎と風切狼の蜜露草はデザートにするつもり!」

「相変わらず凝ってますね」

「アイラさんのお料理はぁ、焼くだけ、煮るだけのお料理とは違うもんねぇ」

「酒場の料理もボリュームがあって腹一杯になるが、アイラさんの料理はそういうのとはちょっと違うよな」

「よく材料を見ただけでパッといろんな料理が思いつくもんだ」


 メニューを聞いた石匣の手の四人がしきりに感心する。


「料理の師匠に色々教わったからね! 肉はこれでよしっと。このまま保存しとこうっと」


 ボウルの中に葉を塗したフェンネルの肉を大量に仕込むと、これをボニーにもらった大型の保存用魔導具箱の中へとしまい込む。

 手を綺麗に洗ったら、次はスープの仕込みだ。

 宵闇の硝子瓜はほのかな甘みがあり、体が芯からキーンと冷えるような独特の冷たさのある瓜だった。あの時はビャッコ族の神獣ポアに頼んで凍らせて、削ってかき氷のようにして食べたのだった。

 今回は違う食べ方にしようとおもう。

 まずは瓜の一つを手にとって、細かく刻む。

 刻んだらザルに移して、鍋の上でぐーっと力を入れて濾す。

 すると宵闇の硝子瓜の水分が下の鍋へとどんどん落ちていく。

 ポタポタと、一見すると水のような透明な水分がどんどんと鍋に溜まっていった。

 ここにミルクを注ぎ入れ、馴染むようにかき混ぜればあっという間に完成だ。


「これも保存保存〜」


 宵闇の硝子瓜のスープを入れた鍋も保存用魔導具箱の中にしまう。

 冷蔵庫に鍋をしまったアイラに、クルトンが首を傾げた。


「スープなのに冷やすのか?」

「そうなの。これは冷やして美味しいスープなんだよ」

「ふぅん……そういうのもあるのか」

「うん。宵闇の硝子瓜は冷たい方が美味しいと思うからね」


 以前食べた時のことを思い出し、アイラは答えた。


「あとは、デザート!」


 デザートは暁の林檎と風切狼の蜜露草、贅沢に三大珍味を二つも使う。


「まずはボウルに角切りにしたバター、アル粉、粗ごし糖を入れて、指ですりつぶしながら混ぜる!」

「手伝います」

「ありがとう、エマーベル君たち!」


 ボウルに大量のバター、アル粉、粗ごし糖を投入して、それをエマーベルたちの前にずいっと置いた。


「どのくらい混ぜればいいんですか?」

「粒状になるまでよろしく!」


 そしてこの間にアイラは、暁の林檎をカットする作業に移った。

 ごく薄く皮を剥いて種を取り、八等分にカットしてから一センチ角に切っていく。

 そしてこれを、ある程度深さのあるお皿の上に敷き詰める。

 そうしたら次は、風切狼の蜜露草だ。

 蜜袋から蜜を取り出し、ボウルの中へと空けていく。一つ一つが小さいので結構手間のかかる作業だった。

 と、ここでエマーベルから声がかかった。


「アイラさん、粒状ってこのくらいでいいでしょうか?」

「どれどれ……おっ、いいね! いい感じ!」

「随分ポロポロしてますけど、どう使うんですか?」

「このまま林檎の上に載せちゃうんだよ」


 蜜袋を破る作業を一度中断する。

 エマーベルから巨大なボウルを受け取り、中身をスプーンですくってからさらさらっと林檎の上へとかけていく。その上から蜜露草の蜜も回しかけた。


「そしてオーブンで焼けば、完成!」


 オーブンはそこまで大型のものではないので、一度に皿が三枚しか入らない。

 予熱したオーブンに皿を三枚入れ、扉を閉め、じっくりと加熱していく。

 熱が通るにつれてオーブンの隙間から甘くて香ばしい香りが漂ってくる。

 アイラとエマーベルたち、そしてルインの計五人と一頭はオーブンの前にうずくまり、この香りを存分に吸い込んだ。

 やがてオーブンがピーと音を立てて鳴る。

 パカっと開けば、湯気を立ててきつねいろに焼けたほかほかのデザートがお目見えだ。


「わぁー、できた! おいしそ!」

「アイラッ、食おう。味見だ味見っ」


 興奮したルインが前足でシャカシャカと床を掻き、尻尾を打ち振っている。


「ちょっと待って。もういい時間だし、ごはんにしちゃおうよ。フェンネルのお肉を焼いて、宵闇の硝子瓜のスープを仕上げて、一回自分達で全部食べてみよう」

「うおお……! それはいい考えだ。よしっ、そうしようっ」

「エマーベル君たちもそれでいいかな?」

「はい」

「もちろんだぜ」

「いいと思いまぁす!」

「腹が減るな!」


 全員、異論がなかったので、そんなかんじでまかないを食べることにした。


「よぉし、そうと決まれば!」


 アイラの行動は素早い。

 フェンネルのお肉を人数分取り出すと、鉄板を熱し、その上で焼いていく。

 生は危険だとイリアスに教わっているので、しっかりと火を通していく。

 そのために今回は、鉄板の上に蓋をして蒸し焼きのような形にした。

 そして隣で、フェンネルの株の部分をバターと一緒に炒める。


「この隙にスープの準備っと」


 株に火が通ったら次の作業だ。

 フェンネル肉を蒸し焼きにしている間にスープ皿にスープを注ぎ入れ、仕上げに果汁を搾らずにとっておいた宵闇の硝子瓜を少しだけ載せる。

 鉄板の上の蓋を取って中身を見てみると、フェンネルはいい頃合いに火が通っていたのでフライ返しですくってお皿へと移す。株のバターソテーも隣に添える。

 そして最後に、先ほどの暁の林檎を八等分にカットしてから別の皿へと盛り付けた。


「完成! 『フェンネルの香草焼き』と『宵闇の硝子瓜の冷製スープ』と『暁の林檎と風切狼の蜜露草のアップルクランブル』だよ!」




これで本年最後の更新になります。

また来年もよろしくお願いします!

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もふもふと行く、腹ペコ料理人の絶品グルメライフ 



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― 新着の感想 ―
いつも楽しく読んでます! 本年も沢山の料理と少しの冒険をありがとうございます! アイラさん的には料理9の冒険1ぐらいの気持ちかな(笑) この世界に現世のような三ツ星とかはないかもだけど、アイラさん…
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