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【9/30書籍3巻&コミカライズ発売】もふもふと行く、腹ペコ料理人の絶品グルメライフ  作者: 佐倉涼@5作書籍3作コミカライズ
ACT4:パルモ高地

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リアム救出作戦④

 火がぼーぼーと燃えている。本日は焼肉日和。よくお肉が焼ける日だ。


「ねールイン。久しぶりに丸焼きたべたけどさぁ、これはこれで美味しいね」

「そうだな、美味いな」

「アンクルゴートって初めて食べたけど、癖になりそうな味してるね」

「うむ。マンムートに比べれば味は落ちるが、手軽に狩れるところがいいな」

「そうそう。手軽だよね」


 アイラとルインは雷鳥たちの群れに混じって、自分達もアンクルゴートの丸焼きを頬張っていた。

 見ていたらお腹が空いて自分達も食べたくなったのだ。見ているだけなんて拷問みたいで、とてもではないが耐えられない。最初にルインが我慢できなくなり、そしてアイラも我慢できなくなって今に至る。

 世界広しといえど、雷鳥と一緒に魔物肉の丸焼きを食べる探索者と火狐はアイラとルインだけだろう。アイラは常に時代の先駆者である。美味しいごはんを食べるためなら、常識とか人の目とか世間体とかは、全然気にしない。自分の食欲に常に忠実だった。

 エルミニオとベン老人がリアムを助けに行ってから、一時間ほど経った。

「崖下で悲鳴が聞こえる」とルインが言った時はドキッとしたが、その後に飛翔してバベルに向かう姿が見えたので、無事に救出できたのだろう。そう考えて一安心したアイラは、こうして遠慮なく雷鳥とともに魔物の丸焼きパーティーを開催しているというわけだ。

 ベン老人が用意してくれた透明薬はもう効果が切れてしまっているはずなのだが、雷鳥たちが襲いかかって来る気配はない。共に肉を食べる仲間だと思ってくれているのか、単に肉を食べるのに夢中でアイラたちなど視界に入っていないのか。


「そろそろ肉がなくなるな」


 バリバリと豪快にアンクルゴートを噛みちぎりながらルインが言う。


「追加で狩ってくるか?」


 ルインの顔は若干ワクワクしていたが、アイラは首を横に振った。


「リアム君が無事に助け出されたんなら、もう必要ないよ。そろそろエルミニオ君があたしたちを迎えにくる頃だし、あんまり雷鳥がたくさんいたら興味をひいちゃうからむしろやめたほうがいい」

「む……」


 あからさまにがっかりするルインの頭をわしゃわしゃっと撫でる。


「シトロンいっぱい取って帰って、それで料理作ってあげるよ。チーズをいれたリゾットとか、さっぱりしたタルトとか!」

「それはそれで、美味そうだな」


 ルインは納得したのか、頭をわしゃわしゃされながら頷いた。


「よし。そうと決まれば、シトロンを取りに行こう」

「おー!」


 雷鳥たちはまだ煙が燻る魔物の丸焼きを食べていたが、じきに満足して帰るだろう。食欲の矛先をアイラたちに向けられる前にそーっとその場を去り、シトロンを取りに向かう。


「わーシトロン! いっぱい!」

「うむ。取り放題だな」


 シトロンは樹高四メートルほどで、横幅も同じくらいだった。一本の木に五十個ほどの実がなっているの。一番手頃な木に手を伸ばしてみた。


「届かない……」


 爪先立ちにしても届かない。


「幹が細すぎるからのぼるのには向いていないな。折れそうだ」

「うん、そだね」


 アイラは腰からファントムクリーバーを抜いた。魔力を練って指先から武器に魔法を付与。刃を覆うように水の膜が覆う。起動となる呪文を短く唱えた。


「アクアカッター!」


 構えて振れば、薄い水の刃が飛び出した。二撃、三撃とアイラがクリーバーを振る度にアクアカッターが飛び、枝先に実ったシトロンの実をスパスパっと切り落とす。地面に落ちたシトロンをルインが鼻先でつついていた。


「命中精度が前よりさらに良くなってるな」


 切り口はちょうど枝と実の間、木も実も最大限損傷が少ない部分を切り落としている。


「両目で見えるようになったらさ、狙いが前より定まりやすくなって!」


 調子が出てきたアイラは、どんどんとシトロンを落としていった。


「おーい、アイラさん、ルインさーん!」

「あ、エルミニオ君だ。やっほー!」


 頭上に影がさしかかり、続いて声がしたので手を振った。スカイドラゴンの姿がぐんぐん大きくなり、シトロンの群生地を避けて少し開けた場所に着陸した。ドラゴンが翼をたたむのを尻目に、アイラたちは収穫したシトロンを急いで集めてルペナ袋に詰め込んで、エルミニオに駆け寄った。


「リアム君は?」

「無事に救出できました! ベンさんと一緒に、バベルにいます」

「そっか、よかった!」

「では、雷鳥たちの気が逸れている間に急いで帰りましょう」

「うん」


 アイラがスカイドラゴンの背に乗り、ルインも若干の抵抗を見せながらもしぶしぶ後に続いた。ドラゴンが羽ばたいてパルモ高地を離れる。今はもう魔物の丸焼きはすっかりなくなり、一筋の黒煙だけが宴の跡を印していた。

 バベルへの帰路は、安全かつ迅速だった。

 ルインは相変わらずドラゴンの鞍にぎゅっとしがみつき、下を見ないようにしていたが、アイラはしっかりと両目を開いている。

 両眼で見る世界はいつもよりはっきりとしていて、綺麗だ。

 パルモ高地に実るシトロンの木々がおもちゃのように小さくなり、雷鳥は豆粒ほどの大きさになる。前方には山を切り開いて作ったという、大きなバベルの塔がそびえたち、スカイドラゴンは三十九階のぽっかり開いた窓にすいーっと着陸した。

「やれやれ、やっと空の旅から解放された」

 ルインは心底嬉しそうに塔の床に降り立った。アイラもよいしょとドラゴンから降り、エルミニオも続く。

 三十九階には、ベン老人と、金髪に金目の少年が立っていた。少年はアイラたちを見て駆け寄ってくると勢いよく頭を下げる。


「あの……助けていただき、ありがとうございました!」

「ワシからも、礼を言わせてくれ。本当にありがとうのう」

「お礼と言ってはなんですが、雷鳥のヒナがくれたこのマドンナの実をどうぞみなさんで分けてください」


 リアム少年の手には卵ほどの大きさのつやつやした実がたくさん抱えられていた。


「え、いいの? これ、すっごい高いんでしょ?」

「いいんです。命が助かったのは、ここにいるみなさんのおかげですから。待っている間におじいちゃんが話してくれたんですけど、あなたが雷鳥の巣にいる僕を見つけて、そこから助け出すために色々としてくださったんですよね。竜商隊や、フィルムディアご一族の助けもあったと聞きました。本当に、ありがとうございます」


 アイラは差し出されたマドンナの実と、エルミニオの顔を見比べた。


「じゃあ、お言葉に甘えて半分こする?」

「いえ、僕たちはこの件関して、きちんとオデュッセイア様から依頼金を頂いているので受け取れません」

「そんなこと言わないで、もらっちゃえば?」


 エルミニオは困ったように眉尻を下げた。


「竜商隊のモットーは『清く正しく誠実な商売人』です。依頼以上のものは受け取れません。勝手に受け取れば、それこそ僕が隊長に叱られてしまいます」


 エルミニオは頑として受け取らない様子だった。


「じゃ、こうしよう。あたしが全部もらって、料理して、みんなで食べる! もちろん、ベンおじいちゃんとリアム君も!」

「えっ、僕たちもですか?」

「ワシらはこれ以上厚意に甘えるわけには……」

「いいじゃん。ごはんはみんなで食べたほうが美味しいよ。それにリアム君だって、お腹空いてるでしょ? 一体何日くらいあの場所にいたの?」

「かれこれ……十日ほどでしょうか。ずっとマドンナを食べて生きていました」

「そんなに!? 生き延びられてよかったねえ」

「はい」


 アイラは労うようにリアムの両肩にポンと手を乗せた。


「大変だったね。マドンナは遠慮なくあたしが全部もらって料理しておくから、ゆっくり休みなよ」

「はい、ありがとうございます」

「じゃあ、ワシらは一旦帰るとするかのう。本当にありがたい限りじゃ。お前さんん、また今度うちの店に寄ってくれ。なんでも好きなものをタダで作ってやる」


 ベン老人とリアム少年が三十九階から去っていくのを見送ったアイラは、抱えているマドンナに視線を落とした。艶々した橙色の実はいかにも果肉が詰まっている感じでパンパンに膨らんでおり、しかも香りがいい。


「さっそくマドンナとシトロンを使って料理を作ろう!」


 アイラは、とてもはりきっていた。


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もふもふと行く、腹ペコ料理人の絶品グルメライフ 



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