ヲタッキーズ159 DDの彼方
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第159話「DD(誰でも大好き)の彼方」。さて、今回は環境リサイクル関係のスタートアップで殺人事件が発生。
被害者の妻、容疑者のスパイがそれぞれスーパーヒロインとあって、事件はスーパーヒロイン同士の対決に発展して…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 フィアンセ vs 妻
"秋葉原マンハッタン"と呼ばれるアキバ駅前の摩天楼群。中でも年代物の高層ビルには、今もダストシュートがアル。
ダストシュート?
各階で捨てられたゴミはチューブを通じ1Fに集積され搬出される。で、37Fのゴミポストにホットパンツ女子が登場w
「生ゴミの日だけど、萌えないゴミを捨てちゃおウキキ」
ところが、シュート周囲には既に黒いビニール袋が積まれ異臭を放つ。女子は鼻を摘みながらシュートのハッチを開け…
「ウッソォ。ビッチリ詰まってる!どんだけぇ」
"Uper Eats"で取り寄せたピザの大箱をシューターのポストに押し込む。お尻を突き出して、さらに奥へ…その瞬間!
「ドサッ!」
上の階から"死体"が落ちて来る!死んだ男と目が合い絶句スル女子。衝撃で詰まりは解消、ゴミと死体は落ちて逝くw
ホットパンツ女子の絶叫が、シューターを通じ各階に届くw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
御屋敷は"マンハッタン"の最上階にあり、窓の下遠く関東平野の形に広がる光の海。今、ソレをバックにヘリが飛ぶ。
「こちらマーベリック6J90。セクター0、エンジェルズ15。コマンダーから全ユニット、良く聞いてくれ。金星人が逃走してから90分が経過した…」
僕の切迫した声。
「ジャングル・ラジオ、デルタブラボー。金星人を発見。応援を要請!レーザービーム、イモビライザー発動許可をリクエスト!」
「許可はしません!リクエストは却下。テリィ様、私は"メイドミュージカル"のリハーサルまでに、こんなにたくさん歌を覚えなきゃ、なのですがw」
「わ、わかったょメイド長。ゼロ・ダーク・サーティ、タッチダウン」
台本片手に立つミユリさんの横を、ラジコンのステルスヘリBUH-60がフライパス、鮮やかに(ソファの上へ)着陸スル。
「コレ以上近づいたら撃墜ですょテリィ様。"ブラックホークダウン"の再現です」
「テリィたん、またまたラジコン遊びでミユリ姉様に怒られてるの?」
「いや、コレは遊びではナイ。繰り返す、遊びではナイ。ドローンの操縦訓練だ」
ハッカーのスピアがニコニコ笑いながら御帰宅。
「ところでテリィたん、推薦書にはサインしてくれた?」
「サインの偽造ぐらい覚えろょ」
「カードで払う時だけね。アキバ工科大学の市民講座の課題ナンだ。期間中に警察か消防かコロナが一段落で暇になった保健所でボランティアをスルの」
筋肉ムキムキの神田消防が人気では?
「で、警察にしちゃった。ラギィ警部もボランティアを許可してくれたし」
「万世橋のボランティアの先輩として色々教えてあげようか?」
「実は明日の朝、ラギィ警部が教えてくれるの」
出番なさそー笑。
「そっか。それじゃ先輩として署まで一緒に逝くょ」
「うん。そうね」
「よし、僕からラギィに…」
スマホ鳴動。
「あ、ラギィ。実は…え。死体?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
現場は1Fにあるゴミ集積場。既に非常線が張られてる。
「被害者は至近距離から音波銃で胸部を1発で撃たれてる。今のトコロ、ソレが死因だと思うわ」
「抵抗の痕は?」
「打撲傷がアチコチにアルけど…多分ダストシュートで落ちた時のモノね」
ラボにいる超天才のルイナが、僕のタブレット経由で"リモート鑑識"してくれる。当の僕は、両指で鼻を摘んでいる。
「テリィたん、何してるの?」
「ラギィ、僕は鼻で息が出来ない。嗅覚が鋭いんだ」
「警官なら慣れっこょ。私がデートの前、何時間シャワーを浴びてると思う?」
「今度、僕がストップウォッチで計ってやるょ」
ウィンクするラギィ警部。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
集積所のゴミの山の中からメイドが飛び出す。
「あったわ、テリィたん。きっとポケットから落ちたのね…免許証によると名前はサンデ・パーカ。池袋の乙女ロード在住」
「誰かに会いに来たのかな」
「ゴミ友?」
彼女はヲタッキーズのマリレ。ヲタッキーズはスーパーヒロイン集団でヒロイン絡みの事件では警察と合同捜査を行う。
「テリィたん、エアリからだった。被害者が撃たれたのは47Fだって」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
47Fには、同じくヲタッキーズのエアリがいる。因みに、彼女達は、いつもメイド服だ。何しろココはアキバだからね。
「血痕からして撃たれたのはココね。ソレで、ダストシュートに頭から突き落とされた」
「キチンとゴミ捨てスル犯人か。ある意味、几帳面だな」
「違うわ。数日は回収がないからバレないと踏んだンでしょ。現場を早く離れたかったのょ」
さすがラギィ警部は鋭いw
「まさか37Fに住むホットパンツ女子が、ちょうど同時にゴミを捨てるとは思ってはなかったのね」
「ピチピチのホットパンツ?その子、大丈夫かな。慰めていこうか?」
「(誰もピチピチって言ってナイしw)鑑識は?」
僕の提案は完全無視←
「銃声はしなかったそうょ」
「ゴミの中からペットボトルを拾ってサイレンサー代わりに使い、そのママ捨ててるわ」
「リサイクルか。エコだな…しかし、こんな身なりの良い彼がなぜこんな状態に?」
確かに"資源ゴミ"カモしれないがw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
朝焼けに染まるマンハッタン。神田リバーにかかる何本ものブリッジの向こうから陽が昇る。僕は万世橋のギャレーで…
「ラギィ。スピアのボランティアの件、迷惑じゃないか?」
パーコレーターから注いだコーヒーのマグを手渡す。
「え。迷惑なら許可しないわ」
「そうだけど…邪魔しないか心配でさ。ホラ、スピアは根がハッカーだし」←
「(いつも邪魔してるのは貴方よっw)問題ナイわ」
ヲタッキーズのエアリ&マリレが入って来る。
「被害者はサムデ・パーカ、38才。池袋の乙女ロード在住。妻子あり」
「"blood type BLUE"の奥さんが遺体確認のために向かってる」
「え。奥さんは"覚醒"したスーパーヒロインか?」
突如アキバに開いた"リアルの裂け目"の影響で腐女子がパワーに覚醒、スーパーヒロイン化する事例が多発している。
「誰かに会いに来たのね」
「詳しくは調査中。万世橋の鑑識が指紋を採取してるけど、関係ナイ指紋がドッサリ出そうょ」
「だけど、ダストシュートの取っ手だけはキレイに指紋を拭き取ってあったンだって」
プロかょ?嫌な犯人だw
「サムデが秋葉原で何をしてたのか、先ず奥さんに聞きましょう」
「待てょラギィ。奥さんに内緒でアキバに来てた可能性も排除出来ないぞ。エアリ、コーヒー飲む?」
「あぢぢぢ」
渡したマグを持て余すエアリ。ムクれるマリレ。
「私の分は?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の検視局は地下にアル。
「ラギィ、大丈夫か?」
「何度やっても遺族と会うのは辛いわ。慣れるコトは無い」
「ウソょ!誰かウソだと言って!」
ストレッチャーに載った遺体にすがりつき、真っ赤なレオタード&ブーツに青マントのスーパーヒロインが号泣してる。
「万世橋のラギィです。お悔やみ申し上げます」
「ねぇ!一体誰が彼を殺したの?彼は一般人で"RED blood"ょ!」
「目下、全力を挙げて捜査中です」
その時、検視局のドアが開き、全身シルバーのボディタイツを着たヒロインが入って来て…遺体を見るや嗚咽を漏らす。
「失礼。今、遺体の確認中です。外に出て頂けますか?」
「ラギィ警部。彼女が池袋の乙女ロードから遺体確認に来た奥様です」
「え。じゃ貴女は?」
遺体にすがる真っ赤なレオタードに声をかけるラギィw
「貴女と、その、コチラの"彼"との御関係は?」
「私は、彼の婚約者よっ!」
「何ですって?!私は、主人の遺体を確認に来た"妻"ですけどっ!」
絶句する2人のスーパーヒロイン。僕は遺体を責める。
「あちゃあ。お前、やっちまったなw」
第2章 男はみんなDDょ
2人を引き離すw"妻"は"婚約者"を睨み"婚約者"はヒタスラ泣く。で、2人ともスーパーヒロインのコスプレだ。
ココはアキバだからね←
「2人とも気マズいでしょうね」
「でも、仕方ないだろう」
「テリィたん。アチラが被害者の"妻"?」
関係者全員で銀色ボディタイツの美魔女を見る。
「で、コチラが"婚約者"?」
全員、真っ赤なレオタード娘へと視線を移動w
「テリィたん的にはレオタ推しでしょ?生脚だし」
「うーん人妻ヒロインにも萌えるな」
「ヒロピンAV?ミユリ姉様に言いつけるぞ」
ヲタッキーズのエアリ&マリレに突っ込まれる。
気づくとナゼかヨダレが出てて慌ててハンカチw
「事情聴取、つきあうょ」←
「テリィたん的に最高の展開だけど、どっちから?」
「若い順だろ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"婚約者"の名はサラサ・リード。
「リードさん。お辛いとは思いますが、いくつか質問を。サムデさんとの出会いは?」
「サムデ?」
「"彼"の名は、サムデ・パーカです」
取調室の粗末なイスから立ち上がる真っ赤なレオタード。
ヤニワに瞳が光り出して…ヤバい!目から光線が出そうw
「"彼"の名はジェク・ホランょ!」
「リードさん、落ち着いて!免許証を見る限りでは、彼はサムデ・パーカ氏です…でした」
「全部ウソだったの?!あぁ!名前まで?!」
天を仰ぎ絶望スル真っ赤なレオタードw
「"彼"とは何処で出会ったの?アプリ?」
「オフィスょ。ヲタ友からウチの部に良い人がいると言われて紹介された。私、確かにスコトグラファだけど、パワーは弱くてスーパーヒロインとは言えない。でも、コスプレした私が好きだと言うから、恥ずかしいけどコスプレで出社してた…バカみたい」
「(バカそのもの?)で、最後に"彼"と話したのは?」
目を見ながらユックリ質問(光り出したら即逃げるw)。
「今日の午後、秋葉原に戻る途中だって電話くれた。ジェクの父親はアルツハイマーで入院してて、彼は毎週末、病院まで車で…ああっ私ってバカ?週末は奥さんと過ごしてたんだわ!」
「今宵彼と会う予定でした?」
「"彼の家"でね」
頭をかきむしる真っ赤なレオタード。何か萌える←
「"彼の家"に行ったら、近所の人に警察が来てると言われて…問い合わせても、何の情報もくれナイw」
「(そりゃジェクの名前で聞くからょw)良くウチの検視局まで漂着したわね」
「私、一応スコトグラファょ。脳内残像を追ったの…」
左手の婚約指輪をジッと見るサラサ・リード。
「婚約した時、親友に驚かれたわ。カラダだけの交際なのにって。でも!ソレでも良かった。私は"彼"に決めてた…なのにヒド過ぎるわ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「こんなの馬鹿げてる!どういうこと?誰ょあの娘?だって夫は、絶対私を愛し、家族を愛してた!」
「奥さん、実は不倫以外にも不審なコトがあります。御主人は、会社で偽名を使っていました」
「何でソンな必要があるの?!」
ヒロインのコスプレで怒ると何やら"正義の怒り"ポイが、実際は、夫の不倫を暴く怒れる妻で良く見かける光景だw
「全て捜査中ですが"婚約者"との出会いも会社でした」
「今の会社に入ったのは半年前ょ。前の会社で昇進が見送りになって転職した。環境事業の求人は少ないから、家からは遠いけど受けるコトにしたの」
「サムデ・パーカ氏は、ライフワークとして環境問題に取り組んでいた?」
大きくうなずくコスプレ妻。
「彼は、ゴミや燃料問題に取り組む環境コンサルタントだった。そのコトに情熱を持ってた。因みに、私のコスプレは"環境戦隊エコレンジャー"の"エコピンク"ょ!愛ある限りリサイクル!とぉー!」
「(アラフォーのオバさんコスプレイヤー?でも旦那サンは)立派な人だなぁ」
「通勤時間が長いので秋葉原で1人暮らしをしてた。私も辛かったけど、しばらくしたら、家族で聖地に引っ越すつもりだった」
聖地ってアキバのコトか?この人、ヲタク?
「ご主人の不倫を疑ったコトは?」
「なぜ気づかなかったか不思議でしょ?でも、2人の子供がいるの。1日の全ての時間は子供に割かれる。ベビーシッターも雇えない。何かあれば、彼は必ず電話で対応してくれてた。だから、夫の不倫を疑ったコトは1度もナイわ」
「完璧ですね(御主人はw)」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋に捜査本部が立ち上がる。
「池袋の妻には、平日電話をして安心させ、秋葉原の婚約者には、週末は病院で電話出来ないと言いくるめる。実に鮮やかだ。因みに、僕は毎正時にミユリさんに定時連絡を入れている(ウソ)」
「揃いも揃ってスーパーヒロインが2人もダマされるナンて。何だか情けないわ」
「スーパーヒロインも女。愛されてるって信じたかったのょ」
ソコが付け入る隙だなw
「ホントはバレてたンじゃナイか?」
「でも、別の女がいるとわかったら…激昂してスーパーパワー大戦争が勃発ょ。秋葉原の半分が焼け野原になってるわ」
「でも、可能性はアル。2人ともアリバイの証明がない。妻は、家でサブスクを見てて、婚約者もサムデと会う前にメーキャップしてた…ヲタッキーズ、一応2人の通話記録を調べて」
エアリ&マリレに指示を飛ばし、僕の方を向くラギィ。
「ねぇテリィたん。男の人って、ホントに出来るの?」
「何を?」
「同時に婚約と結婚」
答えは慎重に選ぶ。
「婚約者には立派な婚約指輪を送ってたし、奥さんは、デカい結婚指輪をしていた。ウソだとはバレてナイだろう」
「でも、不思議なのは、婚約者と出逢う前から"彼"は偽名を使ってた」
「転職のためだろ?」
良くある話だ。
「履歴書の偽造ならワカル。でも、名前まで変える?」
「僕もワカラナイ。妻が2人か…DDだな」
「テリィたんは…推しは1人で充分?」
「ってか、2人目からは元カノだろ」
ラギィは長い溜め息をつく。
「男は、みんなDDね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。チャパティーにモロヘイヤとトマトを載せクルクル巻く。チーズは載せない(doctor stopで)w
「喜んでくれ!スピアから教わったオーガニックの知識が活きてるょ!」
「あら?テリィたん、私のランチを作ってくれてるの?」
「万世橋の捜査本部には硬くなったドーナツしか置いてないし…おおおっ!」
振り向いたら…スーツ姿のスピア。微笑んで立ってる。
「わぉ!スゴいな!」
「テリィたん、何が?」
「何だか…大人っぽくなって」
カウンターの中でニコニコ笑って見ているメイド長。
「ホント?ミユリ姉様が第一印象が肝心だってコーディネートしてくれたの(スーツの下はトレードマークのスク水だけどw)」
「ミユリさん。僕の時も突然大人の男になって驚いた?」
「いいえ。テリィ様は未だ5才児でしょ?」
ウマいコトを逝うなw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の地下資料室。
「…で、スピア。ココが保管室ょ。ココには証拠品では無いけど、現場で見つかったモノが大量に保管されてるワケ」
「現場の"おとしもの"って感じ?」
「ピンポーン。まぁそうね」
ガラクタの詰まった棚、また棚が並ぶ地下室だw
「こーゆーの遺族が取りに来ないの?」
「うーん指輪や時計は取りに来るけど、サングラスやライターなんて誰も欲しがらないし」
「そっか…コレは事件番号?」
棚に詰まった書類箱には記号と番号が振ってアル。
「YES。で、コレを全て倉庫に入れルンだけど、その前に目録を作らないと」
「OK。品物と事件番号をデータベースにまとめるのね?」
「ますますYES。地味な仕事で悪いけど、人手が足りないから助かるわ」
ソレは本心だ。
「大丈夫!見違えるほど綺麗に整理スル」
「期待してるわ」
「ラギィ。テリィたんは、いつも貴女の邪魔ばかりスルけど私は大丈夫。仕事熱心ょ」
うなずくラギィ。後ろ手にドアを閉め出て逝く。溜め息をつき、上着を脱ぐスピア。ガラクタで溢れ返る棚を見上げる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
地下資料室の外。
「ラギィ、どうだった?」
「スピア?彼女なら大丈夫そうょ」
「僕と別れて、次のカレとの初デートの日、和泉パークの茂みに隠れてズッと見張ってたんだ、実は」
「テリィたん。私も元カレが次の子と初めてキャンプに行った時、2人を追って山まで行っちゃった」
僕とラギィは肩を叩き合い、ギャハハと大笑いスルw
第3章 環境リサイクルの闇
万世橋の捜査本部。
「サムデのアパートに入れたわ」
「エアリ、サムデじゃなくてジェクのアパートね」
「同じでしょ?マリレ」
ヲタッキーズの2人のメイドがこだわり合戦w
「いいえ。わかりやすいようにね」
「とにかく、サムデのバックが玄関に…」
「ジェクのバックょエアリ」
話が前に進まないw
「池袋で家族に会って、秋葉原に帰って来たばかりだった。
だから、殺された時には、未だ池袋用?の財布を使ってた」
「つまり、サムデ用の財布ね」
「(そのドヤ顔、何?)コッチの秋葉原用の財布には、ジェクの免許に仕事用のIDが入ってる。あとこれ。デスクのフォトフレームなんだけど、婚約者とのツーショットが、あっという間に家族写真に大変身ょ。家族が突然訪ねてきた時のためね」
国際救助隊の秘密基地みたいだw
「あとスマホもあった。キッチンに置きっぱなし。で、この留守電がスゴいの。聞いて」
"ただで済むと思うな!このクソ野郎、電話しないとヘレルに何もかもバラすぞ!このヤロー!」
「あら。サムデの二重生活は"男の世界"では有名だったみたいね。ダマされてたのは女だけ?」
「声の主はチャズ・デペロ。スマホの契約名義ですけど」
「デペロって奥さんの旧姓ょね?確か、免許証の裏に旧姓が描いてあった」
ラギィがPCで調書をチェック。
「うーんチャズは奥さんのお兄さんみたいね」
「妹の旦那の二重生活に気づいてた?」
「ソレで、サムデをダストシュートから捨てたのかしら?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の取調室。
「わかりますょデペロさん。私だって、妹の旦那さんの浮気を知ったら激怒します」
「違うんだ、おまわりさん。俺はソレで怒ったんじゃない」
「え。旦那の浮気については知ってた?」
チャズ・デペロは初老の男だ。大きくうなずく。
「奴の浮気は、妹から聞いた。事件の後でだが」
「では、留守録に残された"許されると思うな!"とは何のコトですか?」
「金を貸してた。300万円だ。住宅ローンの支払いに必要だと言っていた」
またまた新事実だw
「サムデが貴方に借金をしていた?」
「YES。300万円だ。銀行にも借金があって、もうこれ以上は借りられないと言って泣きついて来た」
「どんな約束をしたの?」
すると、意味もなく小声になるチャズ・デペロ。
「奴は、数ヶ月で必ず返すと言って来た。新しい会社に移って収入も増えるハズだとな」
「奥さんのヘレルには一切話さズに?」
「男同士の固い約束だ。奴が金さえ返してくれれば、全て黙っていると約束した」
ますます意味もなく胸を張るチャズ。
「でも、サムデは返済しなかった?」
「YES。1円もな」
「やれやれ」
典型的な"義理の兄弟問題"だ。
「転職でボーナスが減ったと聞き、怪しいと思ったンだ。そもそも、ナゼ妻子を置いて秋葉原で働く必要がアル?でも、ようやくわかった。奴は、秋葉原のメイド風俗にハマっていたに違いナイ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。
「チャズ・デペロのアリバイが確認で出来ました。彼はシロょ。シッカリ地元の八百屋で残業してた!」
ヲタッキーズのマリレが本部に駆け込んで来る。
「うーんサムデの家計状況はどうだったかしら?」
「ローンの支払いがギリギリのラインね」
「義理の兄のチャズには、給料が減ったとボヤいてたそうだけど、なぜワザワザ給料の下がる転職をしたんだろう?前の会社で昇進出来なかったからかな?」
ラギィはニヤニヤ笑う。
「出た!男のプライドの問題ね?」
「うーんプライドごときで?一人暮らしの方がヨッポドお金がかかるぞ。プライドだけじゃ払えない」
「でも、ホラ。男の自尊心って傷つきやすいからクスクス」
ラギィは、コーヒーを1口飲む。
「そんなコトはナイないょ!なぁ、エアリ?」
「テリィたん、コレはワナょ。黙ってれば魔女の力は消えて逝くわ」
「さ。じゃ私はサムデの転職先に行くわね…アラ?何処にいっちゃったかしら?ナイわ」
デスクの上で探し物をするラギィ。
「どーした?何か探し物?」
「テリィたん、ダメ…」
「あれ?何処だろう?私の…魔女のホウキ」
ニヤリと笑うラギィ。ヤラレタ…が、ココは笑うに限る。
「ハハハ…楽しませてもらったょ。なぁエアリ?」
「私はホウキ、探してナイから」
「行くわょテリィたん」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
サムデの転職先"秋葉原リサイクル"。
「ああっ私も気がつけばよかった!履歴書があまりに完璧で。アキバ工科大学を首席で卒業。海外の大学院にも行ってる。そんな人材が弊社に入社を熱望スルはずがなかったぁ!」
僕とラギィの前で、ガックリと肩を落とすランスCEO。
「他に彼が偽名を使う理由は?」
「…わかりません」
「前の会社に確認はしましたか?」
ランスCEOは、いきり立つ。
「モチロンです。全部、自分で電話しました。どこも彼をベタ褒めだった…架空の男なのに!」
「履歴書の控えはありますか?」
「後で人事にメールで送らせます。お名刺を…」
ラギィがネームカードを差し出す。
「サムデは、御社の女性と恋愛関係にあったようですが…」
「サラサ・リードだ。彼女はとても優秀なエンジニアです」
「何か問題はありましたか?酔って2人が喧嘩したり?」
首を横に振るランス。
「ありません。あの2人は、お互い強い絆で信頼し合っていました…彼女も、さぞかし苦しんでいるコトでしょう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"おかけになった電話番号は、現在使われておりません"音声テープが流れる。溜め息をついて、スマホを切るラギィ。
「コレで最後だけど…履歴書の電話番号は全部ウソ」
「半時前、ランスCEOが確認した時は繋がったって…」
「誰かが応答してたのね。何の番号か令状とって調べて」
指令を飛ばしてからラギィは僕の方を向く。
「転職のためだけに、こんなに手間をかけるかしら」
「福利厚生が良いンじゃナイかな」
「歯科保険とか?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
地下資料室。腕まくりでガラクタと格闘中のスピア。
「誰に似たんだか。その働き者の性格は僕の影響ではないな。全てGO?」
「GOょ!PCがノロいのはソフトのアップデートが未だだったから。2年もシてなかったのょ。ついでに、ウィルスも退治してワクチンも注射しといたわ」
「秋葉原がひれ伏す天才ハッカーにこんな仕事をさせるのは申し訳ないわ」
差し入れの缶コーヒー持参のラギィ。
「あ、ラギィ。1つ質問がアルの。大半がくだらないものだけど、こんなモノがあった」
「…チェキ帳?"推し自慢"に持ち歩くンだ。僕も持ってたょ。懐かしいな!」
「スゴく古いチェキも入ってるわ。持ち主に返したら喜ばれそうょ」
そりゃそうだ。当時のドルヲタにとっちゃ命ソノモノだ。
「でも、事件番号が振られてナイから、持ち主を特定するのはかなり難しいわね」
「このママ、倉庫に入れられちゃうの?」
「この事件に関わった可能性のある刑事のリストをあげるわ。その人達にチェキ帳を見せれば、何かわかるカモ」
ヒントをくれるスピア。僕は釘を差す。
「でもスピア、忙しそうだったら邪魔しちゃダメだ」
「(そりゃアナタでしょ)頑張って」
「(テリィたんに言われたくナイわ)ありがとう!」
スマホが鳴る。
「失礼。はい、ラギィ…了解。直ぐ行くわ」
「何だ?何だ?何だ?」
「婚約者が話しに来たわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
引き続き、万世橋の取調室。
「私、あの女に見覚えがあったわ!」
「奥さんのヘレル・パーカを別の場所で見たってコト?」
「だって、見覚えのアル顔でしょ?ソレに、あのデーハーなコスプレだモノ。数週間前ジェクのアパートで見たわ」
断言する"婚約者"サラサ・リード。真っ赤なレオタード。
「アパートの中で見たの?」
「外よ。車の中にいた」
「確かにヘレルだった?」
ラギィが念を推す。答えは明快。
「間違いナイわ!」
「車の中なのにハッキリ見えるかな?」
「だって私を品定めするかのように見てたンだモノ!」
僕とラギィは顔を見合わせる。
「リードさん。貴女は、事件の直後で動揺してるのでしょう。コレは良くあるコトなの。特に辛い出来事の後は記憶が混乱するモノょ」
「今、我々に必要なのは"確証"ナンだ」
「見たのは確かよっ!シルバーのボディタイツのアラフォーが同じシルバーのハイブリット車の中にいたわ!」
ほとんどホラーだw
「"婚約者"には、そのコトを話した?」
「いいえ。その時は何も…だって、事実を知らないのは私だけだったンだモノ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
池袋の乙女ロード。覆面パトカーで乗りつける。
「シルバーのハイブリット車にシルバーのボディタイツのスーパーヒロインねぇ」
「妻は、夫の浮気に気づいてたのかな」
「だとすれば、立派な殺人の動機にナルわ」
FPCを降りると、車庫にはシルバーのハイブリッド車w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「私が夫のアパートの外にいた?ソンな彼女の馬鹿げた話を信じて、秋葉原からはるばる来たの?」
「我々は、業務上どんな証言も無視出来ないのです」
「彼女が疑われないように考えた作り話でしょ」
憤慨するヘレル・パーカ。
「しかし、ハイブリッド車の特徴は一致してる」
「シルバーなんてありふれてるわ」
「ヘレルさん、未だ質問に答えてませんね」
うなずくヘレル。
「答えはNOょ。この半年間、ただの1度も夫の部屋には行ってないわ」
「顔を見にも行ってナイ?そんなに離れてないのに」
「あのね。10歳以下の子供がいると、ちょっと顔出すコトも難しいの。毎週末帰って来るから、その時に会えたし」
ラギィは、踏ん切りをつける。
「そうですか。確認したまでです。きっと、リードさんの勘違いでしょう」
「彼女がウソを見抜いていた可能性は?」
「え?」
唐突に質問するヘルラ。僕とラギィは顔を見合わせる。
「可能性は否定出来ませんが…」
「先月、無言電話が何度もあったの」
「そのコトを御主人には話しましたか?」
うなずくヘルラ。
「セールスだって言われたわ。でも、アレはきっと彼女ょ」
「どーして彼女だとワカルンですか?」
「だって、ウチの電話番号を知っていたから」
慎重に質問するラギィ。
「サラサ・リードさんから電話があったの?」
「YES。葬儀について聞いて来たのょ。参列出来るとでも思ってるのかしら。トンだ大間違いょ」
「電話は1度だけですか?」
首を振るヘレル・パーカ。
「今朝もサムデにあげたモノを返してと留守電があった。何でも彼にプレゼントしたお祖父さんのペンがどうしたとか…あのね!私達は10年と8ヶ月結婚してた。たった半年の交際で勝てるとは思わないで。彼女に何も返す気はナイわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ヤタラ疲れて万世橋に戻る。
「乙女ロード、遠かったなー。単身赴任で逝きたくなるのもワカルょ」
「ラギィ、サムデの前の会社について調べてみたわ。廃業寸前の"外神田ソリューションズ"ょ。既に市場シェアの半分以上を"秋葉原リサイクル"に持ってかれてるw」
「サムデは、沈みかけた船を降りて、勝ち組の船に乗り換えたワケか。利口だな」
エアリはうなずく。因みに、僕以外は全員メイド服だw
「サムデが転職した"秋葉原リサイクル"は、新技術で儲けてる。2社のCEOはライバル同士らしいわ」
「ゲイツとジョブズみたいな?だから、サムデは履歴書にウソを描いたのか。誰もライバル社の人間は雇いたくナイものな」
「なるほど。あり得るわね」
珍しくラギィが僕に相槌を打った、その時…
「ウソでしょ!」
マリレが大声で笑って立ち上がる。
「ラギィ!テリィたんも…ねぇ履歴書にあったウソの電話番号を調べたら、料金請求先は"外神田ソリューションズ"だったわ!」
「え。前の会社がサムデの転職をサポートしてたの?」
「サムデにライバル社へ転職して欲しかったってコト?」
僕とラギィは顔を見合わせる。
「サムデは、スパイとして潜入するため転職したのかw」
「昇進出来なかったと言うのはウソね?」
「彼は"産業スパイ"として送り込まれたんだ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
再び"秋葉原リサイクル"を訪れる。三角形が2つ重なったような複雑なオブジェが立つメインエントランスのロビー。
「警部さん。すみませんが、頭がついて行きません。サムデは、会社のピクニックでも障害物競走とか企画してくれて…大いに楽しんでくれてると思ってました」
「サムデ氏が御社に送り込まれた、と言うのは状況証拠ばかりで、証明は出来てません」
「弊社としても、真相を解明したい。全面的に協力します」
ランスCEOは胸を叩く。頼もしい。
「"外神田ソリューションズ"がスパイを送り込んでまで狙う御社の"新技術"とは?」
「電池リサイクルの技術です。ご存知の通り、電池はゴミとして捨てるコトは許されていません」
「分別して適切に処理しないと、液漏れが起こり、危険な重金属や毒素が地下水に染み込む?」
昔、環境NGOでスピーチライターをしてた知識が役立つ。
「その通りです。さすがは国民的SF作家だ…コストのかかる保管を避けるため、弊社は画期的なリサイクル方法を開発しました」
「古い電池を安くリサイクル出来るのか?だから、御社は市場を席巻、シェアを伸ばしているのか」
「もはや市場のガリバー。他社は勝負になりません」
またまた胸を張るランスCEO。
「その技術開発にサラサ・リードも噛んでいた?」
「YES。携わっていました」
「だから、サムデは近づいたのか。賢いな」
顔をしかめるランスCEO。
「失礼ですが"狡猾"の間違いでは?」
「時として、どちらも似た意味になる。要は聡いンだ」
「南秋葉原条約機構のハッカーにPCを調べさせます。サムデ…ジェクの。ハッカーが見れば、御社のセキュリティが破られていないかどうか、サムデがどんな情報を入手したのかが分かります」
ランスCEOは、大きくうなずく。
「もちろん協力しますとも」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「"ウチのハッカー"ってスピアのコトだょな?」
「YES。お願い出来る?」
「もちろん。しかし、電池のリサイクル技術のために産業スパイか…"なんだかな感"が半端ナイょ。産業スパイっても少しカッコ良い企業秘密を狙うンじゃないの?」
ラギィは淡々としている。
「ビジネスはビジネスょ。重要な企業秘密に変わり無いわ。"外神田ソリューションズ"のトップは、言いワケを考えるのに苦労しそうね」
なんて話しながら、エントランス前の階段を降りていたら…
「ホントなの?」
背後から呼び止める声。振り向くと真っ赤なレオタードw
「サラサさん?」
「噂に聞いたの!ねぇ噂はホントなの?」
「サム…いいえ。ジェクが企業秘密を盗もうとしていた可能性はあります」
氷のように冷たい声。語尾が震える。
「…演技だったのね」
「(わ、瞳が光り出した?こんなトコロでデス光線を撃つなw)彼の気持ちまでは、わからない」
「い・い・え!ハッキリわかるわ。愛してなかった。私を利用しただけ!」
キビスを返し歩き去るサラサ(危ねぇw)。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
「極めて優秀だわ。ハードドライブの隠しパーテーションから直接メールクライアントを起動してる」
「ソレ何?美味しいの?」
「つまり…会社のネットワークを通さずにメールが送信出来るようにしてる。これなら会社には絶対にバレないわ」
スピアが"秋葉原リサイクル"から提供されたサムデのPCを解析してる。キーを叩くと何やら複雑な化学式が現れる。
「あら。私の守備範囲外だわ。ココから先はレイカ司令官に頼んでSATOの錬金術師に聞かなきゃ」
「OK。ところで、メールの送信先はわかるかな」
「もちろん。全て1つのメアド"第3新東京電力"に送信されてる。衛星回線にスクランブルかけてるけど、宛先のサーバーは"外神田ソリューションズ"だわ。受取人は"アンデ・バマン"で"blood type BLUE"」
BLUE?"覚醒"したスーパーヒロイン?
「その人は競合他社"外神田ソリューションズ"のCEOで、ランスのライバルだ。メールのやりとりは頻繁?」
「いいえ。しばらく間が空いてたけど、殺害当日にも1件、サムデが飛ばしてるわ」
「何だって?」
スピアが読み上げる。
「たった1行ょ。"電話を。会って話がしたい"」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の取調室。相手がテレパスなので僕達は対ESP用のヘッドギアを装着。僕のには"SF作家"と大描きしてあるw
「サムデからのメールを読んだ。もちろん直ぐ電話したわ」
「秋葉原駅の公衆電話から?」
「総武線下りホーム。福島県民のソウルドリンク"酪王カフェ・オ・レ"を飲みながらね」
僕をジロリと見るアンデ・バマン。黒スーツの下は花柄ボディタイツと聞き慌てて妄想を消す。何しろ相手はテレパスw
「サムデは"秋葉原リサイクル"の秘密がわかったと言って来たわ」
「彼を産業スパイとして送り込んだコトは認めるのね?」
「いいえ。転職のサポートをしただけ。福利厚生の一環ょ…向こうだって汚い手を使って顧客を奪ってる。アチラの新技術を盗まないとビジネスにならない。コレでやっとイーブンな立場ょ。もし成功すれば1億円の報酬を与えるとサムデに約束したわ」
彼女には、何処となく経営者としての風格がアル。
「敵の企業秘密がわかったと聞き、急いでサムデに会いに行ったのか?」
「YES。ただ、サムデは以前も同じコトを言って来たけど、間違った化学式を握らされてた」
「以前も企業秘密を入手したと言って来たコトが?」
うなずくアンデ・バマン。
「握らされた化学式の検証リサーチに数千万円を費やした。どうも化学式が完全ではナイようで、ウチの科学者が式を補完して何度も試したけどダメだった。毎回失敗して資金も底をつき、サムデを解雇したわ」
「え。サムデを解雇したのなら、なぜ貴女に電話を?」
「知らないわ。ただ、私に何かを見せたいと言ってた。ソレを確認しに彼のアパートに行くと、警官がたくさん集まってた。嫌な予感がしてそのまま引き返したわ」
ラギィは首を横に振る。僕はスッカリ腹落ちしたがw
「アンデさん。ソレは、とても興味深い話だけど、私の予想はこうょ。貴女はサムデのアパートに行き、ライバル社の秘密を入手した、と言われた。ソレは事実ょね?でも、既に活動資金は底をつき報酬の1億円は支払えない。だから、最終手段に出たの。サムデを殺し、報告書を盗めば"外神田ソリューションズ"は潰れズに済むってワケ」
「弁護士を呼びたい」
「そーして」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
取調室を出る僕達。
「ラギィ。さっきの推理、悪くなかったな。僕の調教の成果かな?」
「調教?なんかいやらしい響きw」
「萌える?」
露骨に顔を歪めるラギィwソコへ…
「テリィたん、緊急事態!東池袋署管内でヒロインファイト発生、目からデス光線を撃ち合って建物損壊、現場は負傷者多数。SATOに"ムーンライトセレナーダー"の応援要請あり!」
「ヒロインvsヒロインのキャットファイト?」
「現行犯です。しかし、相手が凶暴なスーパーヒロインで、駆けつけた警官隊にも負傷者が多数出てる。レイカ司令官は既に"ムーンライトセレナーダー"の派遣を決定済み!」
おぉ!ミユリさんは既に変身してるのか。
「スーパーヒロインが妻と不倫相手に別れコスプレでキャットファイト!ソレにメイド服の"ムーンライトセレナーダー"が仲裁に入った?ウマく逝けば2 vs 1プレイでスーパーヒロインのフルボッコ敗北シーンが見れるカモ!ポップコーン買って見に逝こう!」
既に男性署員の全視線は、集中豪雨となって僕に注ぐ!
「テリィたん!動画も忘れズに!」
熱い期待に、ダブルサムアップで応える!
第4章 ヒロインファイトの彼方
が、既にヒロインファイトは終わってるw
乙女ロードの裏路地。雑居ビルの壁が熱線で黒く焼け焦げ…3階建てが2階に潰れ、瓦礫の中からは呻き声が…
パトカーが何台も集まり、救急車に消防車までかけつける大惨事。警官隊にも負傷者多数で野戦病院みたいw
「"ムーンライトセレナーダー"、来てくれて助かった!"サラサ・ワンダー"さんがサムデ・パーカの書斎に不法侵入、応戦に出た"デビル・ザ・ヘレル"と激しい光線の撃ち合いとなり…乙女ロードが半壊した」
「彼女のデス光線は照準が甘くて、危うく"急所"に当たるトコロだったわ!」
「久しぶりにアクションポーズをとったら四十肩が…」
僕達の顔を見るや、2人は同時に自らの正当性を主張スル。
レフリーに反則をアピールする女子プロレスラーみたいw
「わかった、わかったから!落ち着いて…サラサさん。なぜ不法侵入ナンかしたんですか?」
「ペンを返さないからよっ!曽祖父から代々伝わる大事なペンをジェクにあげた。ペンを返してっ!」
「サムデ!夫の名前はサムデよっ!」
金切り声がさえぎる!それぞれの瞳が妖しく光り出すw
「こんなウソつきに、曽祖父のペンを持ってて欲しくない!」
「書斎を探したけどなかったの!」
「あらそう?じゃあ教えて。コレは何?」
サラサがバッグからペンを出して示す。
「あったの?」
「引き出しに入ってた。貴女に探す気がなかっただけ!」
「にしても、サラサさん。不法侵入は許されナイわ」
顔をレオタード並みに真っ赤にして怒るサラサ。
「大事な曽祖父のペンなのっ!」
「ねぇ…2人とも良かったら今回のツマらない行動はお互い水に流さない?建物更生は共同補償というコトで…」
「彼女は泥棒に入ったのょ?他にも何か盗んでるかもしれナイわ!」
両成敗のチャンスだ!
「サラサ、バッグを見せて。この場に中身をブチまけて」
「わ、わかったわ…ほら」
「ホントに全部?」
バッグは女の聖域。敵の女のバッグを逆様にして満足するヘレル。その間にサラサはペンでコンコンとテーブルを叩く。
「御満足?良いかしら。さぁ帰るわょ」
「…この泥棒レオタード、またこの家に来ようモノなら」
「しつこいわね、アラフォーヒロイン。アンタのコスプレが余りに痛いから彼が胃潰瘍になるのょ!」
サラサもアラサーで立派なオバさんだが…
「胃潰瘍?そんなの彼はなってないわょ?」
「ふん。彼のコト、何も知らないのね」
「2人とも静かに!裏切られた気持ちはわかるけど、お互いを訴え合っても状況が悪化スルだけ。かなり面倒なコトになるわ。ソレが嫌なら、今すぐ落ち着いて解散して」
睨み合う2人のヒロイン。瞳から妖しい光が消えて逝く…
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌朝の"潜り酒場"。
「ミユリさん。ヒロインファイトの仲裁後、ココに戻って徹夜したとか逝うなょ」
「大丈夫です、テリィ様。変身後はユックリお風呂に入り、さっき起きたトコロです。ソレにしても、あのキャットファイトが気になって」
「2 vs 1にならなかったょね。残念だ」←
そーゆーだろうと思ったって顔のミユリさん。
「私が1人から羽交い締めにされ、もう1人からの腹パンチ連打を浴びて敗北との妄想シナリオですか?テリィ様がヒロピンAVの監督をなさる時には、絶対に声をかけてくださいね…ところで、あんな安物の万年筆のためにヒロインファイトするでしょうか。それと胃潰瘍」
「だょな。まるで"デスパレートなヒロイン達"さ。サラサが勝ち誇った顔で言い放ってたけど…あの目つき、好きだなー」
「(またテリィ様の病気が出たわw)ねぇエアリ。サムデの検視報告ではどーなってるの?」
ヲタッキーズは、ミユリさん率いるスーパーヒロイン集団でミユリさんはエアリ&マリレの上司に当たる。CEOは僕←
「ソレがミユリ姉様。不思議なのは、万世橋の検視報告によると、サムデに胃潰瘍はありません。少しヘモグロビンが高いけど、健康そのもの」
「じゃあサラサの話はウソなの?」
「検視局が再調査中です。でも、サムデのスケジュール帳を確認スルと3週連続で火曜日には通院となってます」
直ちにピンと来る僕。
「胃潰瘍の有無ナンて、検査すれば1発でワカル。きっと"胃潰瘍"はスーパーヒロインの名前で、毎週火曜に、彼は別のスーパーヒロインと会ってたンだ!」
「"ブラック胃潰瘍ガール"みたいな?目からデス光線?」
「ヘソ出しコスプレで腹パンチが弱点だ!」
エアリとマリレが一斉にミユリさんの方を見る。
彼女は肩をスボめ微笑む。フランス人みたいに。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
数時間後、エアリ&マリレが御帰宅。
「ミユリ姉様!調べてみたら"外神田ER"には、サムデもジェクも通ってませんでした。送迎のタクシー会社によると、いつも行き先は病院としてたけど、サムデは、乗車後に毎回目的地を変更してたそーです」
「ファンをまくロックスターの手法だな。で、サムデは何処へ逝ってたのかな?」
「1週目はロングアイランドのアパート。次の週は"秋葉原リサイクル"の産業廃棄物処理場。そして、3週目の先週は神田リバー沿いにあるニューアークの港です」
なんなんだ、その3ヶ所は?
「やっぱり別のスーパーヒロインだ!ヒロインマニアだから色んなヒロインとつきあいたいんだ!」
「で、そのヒロインと産廃処理場やニューアークの港でデートプレイを?"レインボー産廃ガール"?目から"産廃光線"とか?弱そうです」
「ミユリさん。ヒロピンAVマニアにも夢を見させろょ」
ミユリさんは、エアリ達の方を向く。
「乗合タクシーの行き先を変更スルのは、サラサに秘密したかったからね。彼が隠したがったモノは何かしら?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の地下資料室。スピアは腕まくりで山のようなガラクタを片っ端からセッセと片付け中。額に爽やかな汗キラリ。
「法律により5時間に1回は休憩だ」
僕は、甘いホットココアのマグを2つ持って登場。
「テリィたん、ありがとう!ちょうど休みたかったの」
「持ち主探し中のチェキ帳の方はどうだ?」
「ソレが…行き詰まってるw」
スピアは、湯気の立つココアを1口すする。
「ラギィがくれた刑事のリストは?」
「さっきの刑事が最後。全員空振りだったわ」
「なるほど。でも、そのチャレンジする姿勢が大切だ」
僕は、ラギィの肩を叩く。
「ワカル。でも、ホントに持ち主に返してあげたいの。もしテリィたんが持ち歩いていたチェキ帳だったら、私は返して欲しいモノ」
「スピア…ソンな想像は必要ナイ。僕がスピアを置いて、アキバから消えるコトは絶対にナイ。何があっても、いつでも"元カノ会長"を守り抜く。ソレは約束スル」
「テリィたん…」
ハグ。スピアのスイカみたいなバストが僕の胸で潰れるw
「でも、チェキ帳が大事なコトに変わりはナイわ」
「そうだな。でも、推しのチェキ帳を取りに来ない理由ってのもアルょ」
「それじゃ後は目録作りに集中するだけだわ!」
再びガラクタとの格闘を始めるスピアを見て、僕は何気に…
「そうだな。警察を引退したら、またハッカーに逆戻りだモンな。あはは」
すると…スピアの動きがピタリと止まるw
「…テリィたん、ありがとう」
「え。どういたしまして、かな?」
「ヒントになったわ!」
スピアは、僕の頬をピシャピシャ叩く。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
数時間後、再びエアリ&マリレが御帰宅。
「ミユリ姉様。サムデの画像を見せたトコロ、港湾労働者の1人が覚えてた。船の積荷について聞かれたそうです」
「積荷?何で?」
「さぁ。知らないと言ったら直ぐに立ち去ったらしい」
ミユリさんはカウンターの中で頭をヒネる。
「で、エアリ。1週目に出掛けたアパートは何だったの?」
「ミユリ姉様。ココからが面白いの。あの家に住んでいるのはロレン・ブラソ。シングルマザーで6才になる娘がいる。"blood type BLUE"」
「やっぱり、スーパーヒロインだ。残るセクシーコスプレはミニスカ&パンチラ系しか残ってナイけど…シングルマザーのヒロインとは"通好み"だな。三角関係から四角関係に高次元化も果たしてる」
すると、エアリは上から目線で微笑む。何だ?
「いいえ、テリィたん。三角のママょ。ただ名前だけ四角になったわ」
「名前だけ?」
「見て」
エアリのスマホ画像を見る。メタル眼鏡をしたヒッツメ髪のシングルマザーの免許証の画像…あれ?この顔、何処かで?
「まぁ!婚約者のサラサ・リードだわ?!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
パーツ通りの地下にあるSATO司令部。フテブテしく余裕をカマすサラサの前に僕とムーンライトセレナーダーが並ぶ。
「ふーん婚約も恋愛も、全てウソだったのね」
「愛の証明は難しいわ。ムーンライトセレナーダー…しかし、モノホンと会うのは初めてだけど、ホントにセパレートのメイド服なのね?お腹、冷えない?」
「…貴女のモノホン免許証のコピーはコッチね。ソレからモノホンのマイナンバーカードもアル。"秋葉原リサイクル"の雇用記録もね。偽名を使って入社してるのね」
全く動じないサラサ。
「心機一転ょ」
「調べたら、別の会社でも偽名で働いてるのね?」
「全て生活のため」
うそぶくサラサ。婚約者の死に涙した面影は微塵もナイw
「ホントはこんな感じ?"秋葉原リサイクル"CEOのランスは、サムデが産業スパイだと気づき、カウンタースパイのエキスパートである貴女をダークウェブで雇ってサムデの仕事を妨害しろ、と命令した」
「私は、男をその気にさせただけ。ソレって犯罪じゃナイでしょ?」
「犯罪だょ!」
僕の魂の叫びは2人のスーパーヒロインに無視される。
「私達は、殺人の捜査をしているの。貴女は、サムデを妨害しろと命令された。そして、貴女は彼のアパートにも逝ける関係だった」
「YES。でも、ムーンライトセレナーダー。私は産業スパイを撹乱しただけ。付き合う前に、彼の前で極秘情報を握っている素振りを見せた。すると、彼は直ぐに情報目当てに私に接近して来たわ」
「具体的には何をしたの?」
得意げに語るサラサ。
「会社のPCやデータを、ワザとサムデの目につく場所に置いた。彼に"自分って賢い"と思い込ませるように仕向けたトコロがミソょ」
ドヤ顔のサラサ。嫌な女だw
「その時、PCに入っていたのは?」
「私は、ランスCEOからニセの化学式を入れて敵を撹乱しろと命令されてた」
「何でソンな手の込んだコトをスルんだ?解雇すれば済む話だろう?」
鼻で笑うサラサは、悪の女幹部ソノモノw
「あのね。炙り出した産業スパイは、解雇スルよりも利用スル。逆手にとって、ライバル社を潰す作戦に利用したワケね」
「サムデは、君のハニートラップに引っかかったのか?」
「ソ、ソレが…実は、サムデは私を抱こうとはしなかった。不思議に思ったけど、単なる一穴主義だと分かったの。だから、私は貴方は古風ねと心から感心したフリをした。私は、ターゲットを完全に騙せたわ!」
残念だが、サラサの力説には合格点が出ないw
「うーんどうかしら?やっぱり貴女のスーパーヒロインとしてのコスプレ、少しセクシーさに欠けてたと思うの。シングルマザーとは言え、アラサーなら最低ヘソ出しはしないと。私なんか…ソレからコレ、サムの検視報告ょ」
「おや?サムデに胃潰瘍はナイみたいだ。このストレス社会の現代に羨ましいコトだ」
「ソンなバカな…私がセクシー不足?」
狼狽が隠せないサラサ。
「で、でも。彼は通院してたわ!」
「だ・か・ら、ソレはウソだ。サムデは、とっくに君のハニートラップを見抜いてた」
「ウソょ。彼は、いつだって私のコスプレがセクシーだって…ちくしょう!シングルマザーだと思ってバカにしやがって!クソ野郎!」
怒りの余り両目から涙がコボれる。
「凄腕のカウンタースパイを気取ってたようだが、サムデは君のロングアイランドの自宅も突き止めてた。君がタダの色目を使うスーパーヒロインじゃナイってコトも知ってたのさ」
トドメを差す。茫然としたママ瞳から涙が溢れるサラサ。
「でも、自分の正体を知られたコトは、貴女もわかってたンでしょ?そして"秋葉原リサイクル"が秘密を知られたコトも。だから、殺したのょね?サムデ・パーカを」
「ムーンライトセレナーダー。ソレは、確かに非常に興味深い話だけど(貴女の痛いコスプレと同様)少し強引過ぎる。問題があるわ」
「あら、何かしら(貴女より年上だけどヘソ出しコスで頑張ってマスけど!)?」
スーパーヒロイン同士のテレパシーが火花を散らすw
「事件の夜、私は6才になる娘のダンスの発表会にいたの。真っ赤なレオタードでね…証言スル人なら大勢いるわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
取調室から出た僕はミユリさんと意見交換。
「好きだなー。あの獲物を狙う女豹の目つきがもう最高だね、スーパーヒロインの殺人犯として」
「テリィ様、また病気が…」
「テリィたん!やっぱりサラサは娘のダンスの発表会にいたみたいょ!アリバイは成立!」
エアリがスマホに報告して来る。
「うーん。でも、あの目つきは最高だったけど」←
「ハニートラップをかけた方も、かけられた方も、お互い騙し通せると思ってたのですね。アラサー男女の空虚なウソの応酬…若過ぎるとは逝え虚しいわ」
「でも、結局犯人は?全く見えて来ない。何か見逃しがあるハズだ。何だろう」
ミユリさんは、あっさり言い当てる。
「万年筆ですょね。もし愛してないなら、サムデに曽祖父の大事なペンは送らないわ」
「結局サラサはサムデの書斎に忍び込んで、何をしてたのかな?」
「真実は現場にアリ、ですね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アキバのサムデのワンルーム。ココに真実が?
「何もナイわ。サラサのバッグを調べた時、何も出て来なかったし…テリィ様、何してるの?」
「ミユリさん、静かに。今、現場で"脳内執筆"の最中さ。またの名を"推理中"とも逝うが…サラは探し物を見つけて、手にしたとスル。ソコにヘレルが来る気配。手にした何かを処分しなくては!」
「テリィ様、私達が結ばれるハッピーエンドまで、チャンと描いてくださいね」
"私達が結ばれるハッピーエンド"だって?何て恐ろしいコトを逝うんだw
「と、と、とにかく!ヘレルに気づかれナイよう、先ず椅子から立ち上がり…」
僕は、実際に立ち上がりキョロキョロする。
「お!見つけたぞ、ミユリさん!」
「シュレッダー?電源も入っています」
「どーやらセロテープが大量に必要になりそうだ」
とりあえず、今宵のハッピーエンドは、こんなモンでw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
シュレッダーで細断された文書を再現スル。
「サムデが撮った写真と文書でした。ニューアーク港から神田リバーを出航して逝く産廃の運搬船。でも、同じ船が夕方帰港スル時は空船になってる。積荷の産廃を海洋投棄してルンだわ」
「そもそも"秋葉原リサイクル"は、回収した不要な電池は"新技術"でリサイクルしてるハズ。でも、ソレなら産廃の運搬船は必要ナイわ」
「何が不要電池のリサイクルだ。ラベルを変えて海洋投棄してるだけじゃナイか!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"秋葉原リサイクル"のランスCEOをSATO司令部に呼ぶ。
「サムデは、まるで電力会社から300億円の和解金を勝ち取った環境活動家エリン・ブロコビッチね」
「まぁ男だから、若い頃に美人コンテストを荒らしたとは思えませんが、ムーンライトセレナーダー。ところで、私は何で呼ばれたのでしょう?権利の告知もナイようですが」
「あら。SATOは超法規組織だから、令状ナシで何でも出来るのょ(本人の合意さえあればねw)。和解金の話を知ってるなら話は早いわ。"秋葉原リサイクル"には電池リサイクルの新技術なんてなかった。貴方は電池を船に積み、海洋投棄してた。電池の処理や保管のための経費は、全て中抜きして会社の利益に計上してた」
グッと詰まるランスCEO。
「権利はわかってる。SATOに何も話す必要はナイ」
「御社は、環境保護すると顧客と契約を交わしたハズなのに儲けるために環境を汚染した。その証拠を握ったサムに追い詰めらてタイヘンだったわね」
「私は殺してない。万世橋もSATOも証拠は何もナイだろ?」
最後の強がりだw
「実はアルのょ」
傍らに控えていたエアリが、証拠物件を入れるビニール袋を示す。中に入っているのは…リボルバータイプの音波銃だ。
「音波弾道分析の結果、サムデを撃った音波銃と一致した」
「貴方の自宅近くのゴミ捨て場に捨てられてた。エアリは、残留思念を操るサイコメトラーょ。コレは、貴方の音波銃」
「環境企業の経営者でしょ?音波銃もリサイクルすれば良かったのに」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜、僕はミユリさん、と逝うか事件解決後も変身を解かないムーンライトセレナーダーについてヘレル宅を訪れる。
向き合うシニアなスーパーヒロイン2人←
「ヘレルさん(やっぱりヘソ出しコスじゃナイのね。生脚でもナイわw)。殺害された夜、御主人様、じゃなかった、御主人は"秋葉原リサイクル"の不正の証拠をまとめていました。その行動を察知したライバル社のランスCEOは行動に移すコトにした」
「ムーンライトセレナーダー(げ。モノホンと会うの初めてょ。多分同年代なのにヘソ出し?大胆w)。ソレを伝えに来てくれたの?」
「YES。サムデは、先ず自分を解雇した"外神田ソリューションズ"に連絡を取り、事実を公にしようとした。ソレを直前に察知したランスCEOは、先ずサムデを買収しようとした。でも、サムデは敢然と拒否した」
ヘレルは、目を見開き、やがてユックリうなずく。
「でしょうね。彼は、そーゆー人だから…私、彼が愛したこのコスプレを着続けるコトにスルわ。ムーンライトセレナーダー、貴女も愛する人のために、その(ヘソ出しw)コスプレを?」
「きっと御主人様、じゃなかった、御主人はお喜びでしょう。彼は、情熱を注いだ環境保護のために命を落としました。貴女の御主人様が、そういう人であったと逝うコトを、貴女に知って欲しかった。ソレを死ぬまで、死ぬまで、誇りにして欲しいから」
「ありがとう、ムーンライトセレナーダー」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"CEOが殺人罪で起訴 CEO charged with murder"腕組みし不敵に笑うランスの画像。ネットのTOP NEWSだ。
「コレで"秋葉原リサイクル"は廃業ね」
「そもそもリサイクルしてなかったからな」
「あら。署の受付からだわ」
ラギィのデスクでダベってたら内線電話w
「はい、ラギィ…アナナ・ノルズ?知らないわ」
「あ、ラギィ。ソレ、私にょ」
「OK!来てもらって」
タマタマ通りかかったスピアが声をかける。
「アナナ・ノルズ?誰ソレ?美味しいの?」
「チェキ帳に写ってた地下アイドル」
「え。どうやって探したの?」
スピアは淡々と語る。
「テリィたんの"警察を引退"って言葉がヒントになった。卒業した地下アイドルのTOかもって思ったの。そしたら、ドンピシャ。でも、TOさんは既に亡くなってた」
「ドルヲタって若死にが多いから…でも、お見事ね。感心だわ。さすがはテリィたんの"元カノ会"の会長」
僕も驚いたけど、スピアは珍しく控えめw
「ありがとう…でも、ホントの事件と比べたら、全然重要じゃないけどね」
「"家族"を亡くした人にとっては、どちらも重要なコトだわ。アイドルとドルヲタは家族も同然だから」
「お。彼女が来たぞ」
エレベーターが開き、恐らくアラ還のオバさんが…パステルカラーのフリルがヒラヒラしてるアイドルコスプレで降臨w
今回はデーハーなオバさんヒロイン/アイドルが多いなw
「…話して来てくれる?」
スピアにチェキ帳を渡すラギィ(実はドン引き?笑)。
「え。良いの?ありがとう!」
スピアが声をかけて、両手で古いチェキ帳を渡すと年老いた元アイドルは全身で喜びを表し、大切そうにページを開く。
「やっぱり元カレそっくりだな」
チェキ帳に見入る元アイドル。自分を指差し微笑むスピア。
僕はその2人のコトをいつまでも誇らしげに見上げている。
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"環境スタートアップ"をテーマに、環境意識の高い熱血漢、その妻のスーパーヒロイン、その婚約者のスーパーヒロイン、それぞれの偽名のスーパーヒロイン、何も知らない妻の兄、環境関係リサイクル企業のライバル同士のCEO達、往年の地下アイドル、殺人事件を追う超天才に相棒のハッカー、ヲタッキーズに所轄の敏腕警部などが登場しました。
さらに、主人公の元カノのボランティア話などもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、円安に誘われ、非ヲタク系インバウンドが急激に増加、街が急速にパンピー化しているように思える秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。