表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/60

決心を形にするために



 2回目の夜はうまくいった。お互いにちゃんと確かめ合えたのだ。彼女も私も満足していた。それぞれ負い目があったから。うまくいったことで関係性がうまくいった……かに見えた。新しい問題は次から次へとやってくる。この時はまだ知らなかった。


 服を着た彼女は優しく微笑んだ。一緒に朝食をとる。簡単な軽食だけれど。ちゃんとパンとコーヒーを買っていた。朝ゆっくり過ごすためだ。優しい時間は過ぎていった。夕方には彼女はまた新幹線に乗らなければならない。彼女には彼女の生活があるのだ。

 

 一通りの観光をする。南京町に行った。そこで中華の昼食をとる。彼女も満足してくれているみたい。二人で人込みを駆け巡る。ただ楽しかった。気持ちが一つになっていたからだ。

 


 「横浜にもこういうところあるよ。すごく似てる。地名も。」

 

 「そうなんだ?行ってみたいな。」

 

 「今度来てよ!横浜に。」


 「うん。行きたい。」


  

 二人で約束を交わした。駅名も横浜と神戸は似ていると言っていた。この時はまだわからなかったけど。後にその意味がわかる。

 


 「あっという間に時間が過ぎちゃうね……。」


 「……うん。」


 

 確かに時間はあっという間だった。約束の時間までもうすぐだった。急いで新神戸駅に向かう。ちゃんと送り届けなくてはならない。責任があるからだ。



 「じゃあ、またね……。」


 「じゃあ、また……。」



 帰り際はいつも口数少な目だった。さみしい気持ちが勝っていたから。元々、口下手ではあったが更に口数が減っていた。それでもせめて態度だけは示したかった。できることは手を繋ぐことだった。それだけ。

 

 彼女はまた新神戸から新横浜まで帰っていった。距離にしたらどれぐらいだろう。いつも帰り際は焦燥感に苛まれた。2度目の帰り道はさらに思いが溢れた。もっと一緒にいたい、そう思っていた。


 

 「もしもし、今着いたよ。」


 「お疲れ様。疲れたよね。ゆっくりしてね。」

 

 「うん。」



 彼女は自宅についていた。時刻も22時を過ぎていた。それほど遠い距離にいるのだ。私は一つ決心をしていた。彼女の住んでいる街が見てみたいと。彼女の住む世界を見てみたいと。次の連休の時に私が横浜に行こう。そう心の中で決めていた。そのためにはお金がいる。アルバイトを探すことにした。

 

 元々コミュ障で話すのは得意ではない。話すことが好きではあったけれど。適当にフリーページからアルバイトを探す。最初に選んだアルバイトは中華まんの店頭販売員だった。家から近かったのが一番の理由。絶対に接客業はしないほうがいいと散々身内に言われていた接客業を選んだ。


 アルバイト先に電話してみる。

 

 

 「もしもし。アルバイト募集でお電話したんですけど……。」


 「あ、わかりました。少々お待ちください。」


 

 電話に出たのは若い女性の声だった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ