2回目の夜
「今日はなんだか雰囲気が違うね。」
「そう?」
「うん。なんか大人っぽく見えるよ。」
「そうかな。」
「うん。」
いつもの調子で話していた。しっかり手を繋いで歩いた。前よりもしっかりと。今日はエスコートをすると決めていた。2人で歩くいつもの道はまた違う景色のようだった。全てが鮮やかに見えていた。その時は。
今日はいつもよりゆっくり歩いた。2人で美味しい料理を食べにいった。美味しいお酒と美味しい料理。これだけで気分を上げるのは十分だった。お酒も控えめにした。前回の失敗をしないために。
「これからどうするの?」
「夜の公園に行ってみない?」
「いいね!メリケンパークに行ってみたい。」
「一緒に行こう。」
三ノ宮から海岸線に乗ってメリケンパークに向かった。少し距離があったけれど2人で話をすれば時間は気にならない。楽しい時間を過ごしていた。海が近い。潮風が吹いていた。
「初めてきた。素敵……。」
「綺麗だよね。カップルも多いねここ。」
「確かに。」
SK8をするために度々メリケンパークに来ていたがよく見ると昼間も夕方も夜もカップルは沢山いた。みな海に向かって二人で並んで座っている。そんなカップルが無数にいる場所だった。雰囲気を上げるにはぴったりの場所。気持ちを盛り上げていくには十分だった。
「今日は本当のデートみたいだね。」
「デートみたいじゃなくてデート。」
「あはは。ごめん。」
二人で並んで座った。ゆっくり話した。お互いのことや子供のこと。今までのこと。これからのこと。話したいことは沢山あってどれも時間が足りなかった。夜のメリケンパークを満喫してマンションに向かう。二人の気持ちは最高潮に上がっていた。
途中、コンビニでまたお酒とおつまみを買った。家でゆっくり飲もうって話したからだ。また帰り道に手を繋いでいた。会ってからずっと手を繋いでいる。汗ばむ手の平をこっそりズボンで拭ってはまた繋ぎなおした。彼女も黙って手を繋いでくれている。笑顔の彼女。
また同じようなシュチュエーションになった。今回はテレビをつけずにBGMを流した。ムードを盛り上げるためだ。彼女も酔っているようだった。二人の目的は一つだった。黙って服を脱いで唇を重ねた。
電気を消した。不思議と焦ってはなかった。根拠はないが今日は最後までいけると思った。夜は静かに老けていく。朝方に二人とも眠りについた。とても満足していた。
「……おはよう。」
目が覚めると彼女はそう言ってくれた。前回と同じ笑顔のまま。いつだって彼女は私より早く起きて私の顔を見ていた。だけど今回は前とは違っていた。ちゃんと確かめ合えたから。やさしく抱き合った。