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終わりの始まり

 就職して最初の年末がやってきた。私はやはり実家に帰るつもりはなかったけれど。この時の彼女はさらに焦っていたようだった。よく冗談っぽく私の実家に行きたい。私の両親に会いたいと言ってきていた。認めてほしかったみたい。当然の思いだった。


 

 「ねえ。年末は私だけそっちに行くね。」


 「そうなん?△△は?」


 「元旦那が△△と長期的に過ごしたいんだって。」


 「そうなんだ。」


 「だから今回は相手側に預けることにした。」


 「そっか。」


 「お正月はどうするの?」

 

 「うーん。」


 「私、そっちにいっていいかな?」


 「うん。それでいいの?」


 「車でいくね。」



 彼女はいつもと少し様子が変わっていた。湘南から神戸まで彼女だけで車でくるらしい。車で長時間になるから大丈夫か尋ねたけれど彼女は平気だと言った。元々、車が好きで長時間ドライブするのが趣味だった彼女だった。休みながら高速で向かうから平気だと言った。


 私は相変わらず仕事をして彼女が来るのを待っていた。もうすぐ彼女に会える。それはとても嬉しかった。久々の2人きりだからとても楽しみにしていた。単純にデートができると喜んでいた。


 部屋の合鍵は渡していた。どうやら彼女は部屋に着いたようだ。メールが入っていた。私はまだ仕事の休憩中だったので終わったらすぐ帰ると伝えた。急いで仕事を終わらせる。終わると同時に彼女の待つ部屋に帰った。汚い作業服のままだったけど。はやく会いたかった。


 明日から年末のお正月休みだったので気持ちも軽やかだった。部屋に戻ると電気がついていて好きな人が家にいることがこんなにも安心するんだってことを再確認した。部屋の鍵を開ける。そこには満面の笑みの彼女が待ち受けていた。いい匂いもしながら。


 

 「おかえりなさい♪」



 私を出迎えてくれた彼女はとびっきりの笑顔だった。長時間運転して疲れているはずだったのにご飯まで作ってくれていた。凄く献身的で私のことを本当に大切に思ってくれていた。私がその彼女の思いにどれだけ答えれていたのかはわからない。


 彼女がほしいものの10分の1も答えることができていなかったと思う。やはりここでもまだ甘えていた。彼女のことをもっと考えていたら違う選択をしていただろう。基本的に受け身な私はただ彼女の一挙手一投足に身を投げていた。最後の連休が始まった。




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