同棲気分
次の連休前に彼女はこちらに来てくれた。今度は息子君と一緒に。お金も時間もやはり彼女がいつも負担していた。この構図はやはり変わらなかった。まだまだ私は未熟だったのだ。いつまでも彼女をリードすることができないでいた。彼女の気持ちを繋ぎとめる努力が足りなかった。
「おかえり♪」
「ただいま~。」
「遊ぼ!」
仕事を終えた私は彼女と息子君に出迎えられた。彼女はわざわざ有休をとってこちらに来てくれていた。どうしても会いたいからと。息子君も保育園を休んでこちらに来ていた。私は当たり前に仕事だったので仕事が終わるとすぐに自宅に戻った。少し同棲気分を味わっていた。
仕事をしながら出迎えてくれる彼女がいる。子供がいる。そういう日常を彷彿させた。悪くなかった。いつかこういう毎日を過ごしたいと思った。この日常があればいつまでも笑っていられると思ったからだ。
「一緒にゲームしたい!」
「一緒にやろうか。」
息子君にゲームを教えていた。世間ではもうプレステ2が出ていた時だったけれど。古いプレステでワンピースの対戦ゲームをした。少し手加減してわからないように負けたりもした。息子君も何度もやっているとうまくなってきていて操作が上手になってきていた。
「勝った!」
「う~。負けたわ。」
「ねえ。ちょっともうご飯だから。」
「もう一回だけ!」
「わかった。ちょっとまって。」
「もう!冷めるよ。」
彼女は少し不機嫌だったが息子君の希望を優先した。息子君にゲームに勝った後、3人で夕飯を食べた。以前食べておいしかったカレーだった。私も息子君も大好きなカレーなので終始笑顔だった。
こんな当たり前の家族の一コマを楽しんでいた。3人で生きていける。こうやって歩んでいけるなら。私はそう思った。彼女と息子君と一緒に暮らす未来。それが見たくなった。
「おなか一杯。」
「一緒にお風呂入る?」
「□□と一緒に入りたい!」
「わかった。」
「やったー!!」
息子君は喜んでくれた。お風呂場では息子君の体を洗って流してあげた。シャンプーも目に入らないように下を向いて目をしっかりと焦れるように成長していた。成長していたのは私たちだけではなかったのだ。小さな体で精いっぱい成長していた。それをいつまでもいつまでも見たいと願った。




