サヨナラ
3歳にだった息子君も小学生になるのが見えてきた。小学生になるまでに決めなければならない。このまま寄り添って歩いていくのなら息子君のことをもっと考えないといけない時期にきていた。小学校を変えるのは息子君にとっては大きな負担だ。それに養育費は息子君に最低月1で会うことが条件だったからだ。
神戸に呼ぶということはおそらくそれがなくなるということを示していた。相手と会ったことがないのでどういう人がわからなかったけれど。彼女が妊娠中によくケンカをしていたらしい。それしかわからなかった。彼女と生活がうまくいかなかったようで彼女はよく私は結婚に向いていないと言っていた。
好きで一緒に暮らしても生活するのは別だと言っていた。他人同士が同じ屋根の下にずっと住むというのはそれほど難しいと言っていた。同棲なんてしたことなかったからあまりピンとはこなかったけれど。
「△△が小学校に上がる前にはっきりしたい。」
「うん。」
「生活が大きく変わってしまうから。」
「そうだね。」
いつも気の利いたことが言えなかった。今ならすぐ一緒に住もう。こっちにきてほしい。無理ならそっちに行くってすぐに言える。この時はこんなこといえなかった。ただの臆病者だったから。
こういう話が続くとやはり2人の距離も少しずつ変わっていく。同じ歩幅で歩かないとどちらかが先にいってしまう。またはどちらかが立ち止まってしまう。同じ歩幅を合わせることが必要なことだった。その答えがわかるのは何年も年を重ねてからだった。
「将来がこわい。」
「うん。」
「私だけなのかな……。」
会うたびに重たい空気になることが増えていった。純粋にデートを楽しめなくなっていた。それに時間も足りなかった。答えはわかっていたはずなのに。すぐそばにあったのに。段々と2人の心にひび割れが増えていった。壊れてしまう前に繋ぎ留めなければならなかった。2人で手を繋いだみたいに。
この時に一番の喧嘩をした。彼女は泣いていた。この時は車で彼女だけこちらに来ていた。長期の休みがあり初日の出来事だった。彼女は部屋のものを蹴散らしてこう言った。
「もう別れよう。」
「このまま帰るから。」
「サヨナラ。」
そういって彼女は荷物をもって車に向かった。私はあわてて彼女を引き留めようとした。彼女は車に乗り込んでエンジンをかける。そのまま駐車場を出ていった。私は急いで彼女を追いかけた……。




