ドライブ
彼女のいる所まで新幹線と電車を使うと4,5時間はかかっていたと思う。なのでその間何をしているかというとギャンブルの雑誌をひたすら見ていた。オカルト的なものから確率や出現率、確定演出を覚えるなど。昔からはまるとそればっかりしていた。それが見事なまでにそれにマッチしていた。
雑誌のよくわからないことを鵜呑みにしていたし休みの日は開店から閉店までうろうろしてることもよくあった。ASDのこだわりが強い部分やそれしかやらない部分が顕著に出てきていた。その当時はそんなことまったく思っていなかったけど。それが単純に楽しかった。
だからやはり少しでも時間が空くとウズウズしていた。なんなら仕事の休憩1時間の間に少しでも打ちたいぐらいだったからだ。それぐらいだった。
それでもまだのめり込んだばかりだったし自制は効いた。それに彼女のいる所が近づくにつれ気持ちも彼女の方にちゃんと向いた。そういう切り替えはちゃんと出来ていた。だったと思う。
「□□君!」
「あ、ひさし……。」
「会いたかったよ♪」
彼女は喜びも悲しみも全身で表現する人だったからこの時は会った瞬間抱き着かれた。照れ臭かったがまあ、いっかで済ませた。人がめちゃくちゃ沢山いて気にしてる人なんてほとんどいなかった。
この頃は彼女が真ん中が多かったかもしれない。息子君と彼女が手を繋ぎ、彼女と私が手繋ぐ。彼女が中心の布陣だ。変わっていると言えば変わっているけどこの時はこれがスタンダードだった。
「車でドライブしよ♪」
「いいね。湘南の海も見れるしね。」
「お洒落なレストランも予約したよ♪」
「いつもありがとう。」
彼女は予約などてきぱきなんでも率先してやってくれていた。私はそれについていった。いつだって彼女が主導権を握る。そんな恋愛だった。その関係性が少しずつ狂ってきてることにお互いが気づいたのはもう少し後のことだった。
彼女と息子君と湘南の海岸沿いをドライブデートする。もう3人でいることには慣れていたし当たり前だった。好きな音楽を聴きながら鼻歌まじりにデートを楽しむ。お洒落なレストランにも着いた。料理もやはり洒落たものばかりで味も納得だった。素敵な食事を楽しんだ。
私はスケーターでもあったのでこの頃になるともっと本格的に息子君にもスケボーを教えたりした。オーリーなんてまだまだ息子君にはできる技ではなかったけれど。転ばないように滑れるようになっていた。




