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カウントダウン

 0時に時間は迫っていた。いよいよカウントダウンが始まるらしい。その場の空気は最高潮だった。みんな新しい年を待ちわびていたんだ。きっと良い年が来ると。誰もがそう信じて疑わなかった。もちろん、彼女も私も息子君もきっとそう思っていた。カウントダウンが始まる。


 「10」


 「9」


 「8」

 

 「7」


 「6」


 「5」


 「4」


 「3」


 「2」


 「1」


 「ハッピーニューイヤー!!!♪♪♪」


 カウントダウンを全員で大合唱した。いつだってカウントダウンは興奮する。刺激を与えてくれる。新しい年が始まった。そして私たちの年もはじまったんだ。もうすぐ一つの決断をしなければならない。それは音で立てずに近づいてきた。見てない振りはもうできない。


 目に見えるものと見えないもの。確かなものと不確かなもの。相反するものが混在するこの世界。全てには意味があって全てが必要なものだった。私にとって彼女は必然だった。なくてはならなかった。


 彼女に似合う男になろうと色々背伸びした。息子君のこともわかろうとしていたし、どうやったら彼女が喜ぶかいつも考えていた。それがうまくいったときに確かな幸せを感じていた。それがどうしても欲しかった。私が存在する理由だったのだ。


 

 「また新しい年が□□君と過ごせた。」


 「うん。」


 「……それだけで幸せだよ。」


 「ありがとう。」


 「□□君もでしょ?」


 「もちろん。」



 彼女はいつだってはっきりと聞いてきた。自分の気持ちはストレートに投げるし返答も求めた。それが彼女だった。今の私の基本的な部分。そこに繋がっている。そこに彼女は今もいるのかもしれない。それが大切だって教わったから。いつ言えなくなるときがくるかわからないのだから。


 彼女と息子君を同じくらい愛そう。そう思えるのに十分な夜だった。いつもこうやって心が離れそうで近づいてを繰り返していた。出来ることと出来ないことがはっきりしていたからだ。そして2人の距離は確かに存在して縮まることはないからだ。それを繋ぎとめるのが両の手だった。


 3月から就職する場所は決まっていた。神戸の長田で職人になる予定だった。パソコンの専門学校に行ったのだがあまりにもブラックな環境だと聞いて尻込みしていた。なのでまったく違う分野で働くことを決めたのだ。彼女の住んでいる湘南に行く計画もあった。だがそれは私は選ばなかった。選べばよかった。





 

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