真夜中の遊園地
大みそかに夜の遊園地に来た。ここで3人で一緒にカウントダウンを迎えるためだ。あまり遊園地なんてきたことはなかったが夜から来たことはなかった。夜の遊園地っていうのは興奮した。普段帰る時間に入場するのだから。そして普段は空いていない時間を大勢の人と一緒に過ごす。それが大みそかのカウントダウンだった。
思ったより人は多かった。新しい年をみんなで過ごすというのは一つのお祭りのようなものだ。笑顔が遊園地に溢れていた。老若男女それぞれのドラマがある。楽しいドラマもあれば悲しいドラマもあるだろう。私たちのドラマもそこに存在していた。結末がわからないドラマのままで。
「めちゃくちゃ人が多いね♪」
「多いね~。」
「これアトラクションも動くのかな~。」
「動いているのもあるね。」
「ねえ。ちょっとブラブラしようよ。」
「わかった。」
特別な夜に特別な人達と特別なことをする。そんな特別が詰まった夜だった。観覧車に乗ってみた。息子君も怖がらずに乗っていた。意外と高いところは平気なようだ。息子君とどちらが彼女の横に座るか戦った。結果は息子君の勝利だった。もちろん譲ったのだけれど。
夜の観覧車には不思議な魅力がある。言葉では言い表すことのできない雰囲気。どのカップルにもマッチする夜だった。特に話をすることをなくみんなで窓の外を見ていた。ただただ幻想的ですべてが輝いていた。街の明かりが洗練されたデザインになっていて素晴らしかった。ただ見とれていた。
「ずっとこのまま乗れてたらいいね。」
「何にも考えなくていいから。」
彼女はぽつりとそう言った。確かにとそう思った。彼女はずっと私よりももっと深く考えていた。やはり年齢差はあった。彼女にだいぶ追いついていたつもりだったのだけど。実際は遠くにいた。
夜は老けていく。新しい年がもうすぐやってくる。それは紛れもない事実だった。夜は多くは語らなかったが優しく教えてくれた。これからのことも。未来をちゃんと見ないといけない時間が迫っていた。
彼女の声も彼女の匂いも忘れることはできない。そして息子君も私のことを慕ってくれていた。□□と頻繁に呼んでよく遊んでとせがんできた。後から知ったのだけれど彼女は息子君からこう言われていたらしい。△△の新しいパパになってほしいと。パパにならないの?と。




