行きたい所
素晴らしいクリスマスを送った私たちは前よりも絆が深まっていたと思う。お互いのことを前よりも考えれるようになっていた。私も少しずつだが成長していた。彼女のおかげで。彼女がいなかったらもっと歩みは遅かっただろう。それが事実だった。
「大みそかはどうするの?」
「学校は休みだし。」
「一緒に過ごしたいね。」
「うん。」
「私、遊園地で年を明けてみたい。」
「そうなの?いいよ。」
「ありがとう♪」
大みそかの夜は遊園地でカウントダウンに参加することにした。息子君と一緒だけど。普段は早く寝るけど特別な夜だから夜更かしするようにした。彼女は沢山の思い出を作ろうとしていた。だから積極的に彼女から提案してきたし私は彼女に合わせていた。それでいいと思っていた。
彼女は思い付きで色々なことを提案してくる。そして色んな事も知っている。私が知らないことを沢山知っていた。経験していた。私にも色々経験させたかったみたい。そして思い出も一緒に上書きしたかったようだ。言葉にして伝えてはこなかったけれど。
今にして思えば彼女は急いでいた。早く私が大人になるように。近づいてくるように。私が大人になるのを待っていたのだ。どんどん年を重ねていくから。いつまでも同じところにはいられないから。ただ待っていることができなかったのかもしれない。その意図を私はしっかりわかってはいなかった。
「夜の遊園地って素敵じゃない?」
「確かに行ったことない。」
「楽しいことは沢山やったらいいよ♪」
「そっか。」
「うん。どんどん色んな事吸収したらいい♪」
「なるほど。」
「怖がらないでいいから色々チャレンジしてみて。」
「そうだね。」
「約束だよ?」
彼女は私のことを分かった上で色んなことを経験させてくれた。それで私が大きな人間になると理解してくれていた。私の個性を分かった上で導いてくれていた。私はいつだってマイペースで彼女の手に引かれていた。焦っていたのは彼女だけだったかもしれない。
そんな彼女にずっと甘えていた。いつまでもこのままでいけるはずがなかった。私ははやく大人にならなければならなかったのだ。その意味をはやく知るべきだった。ただ当時の私はそれがわからなかった。若いというだけでそれにただ甘えていたんだ。