最高のクリスマス
クリスマスの朝を迎えた。正確にはすでに朝方起きていたのだけれど。2人で軽く朝食を取るとゲレンデに向かう。8時過ぎだったと思う。やはりまだ人はまばらでゲレンデの一部を二人占めすることができた。朝日が差したゲレンデの雪がとても綺麗だったのを覚えている。そこにいた彼女の横顔はもっと綺麗だった。
彼女に見とれていたら彼女が振り返って笑ってくれた。雪を投げてきた。そこには年齢差を感じないただのカップルがいた。無邪気にじゃれあう2人。この時間がずっと続けばよかったかもしれない。いつだって彼女は私の手を引っ張っていた。彼女が手を引いてくれていた。もっと私が前にでて引っ張ればよかったのだ。
「ねえ。滑ろうよ♪」
「いいよ。」
「どちらが早く下まで滑れるか競争ね。」
「わかった。何賭ける?」
「負けたほうがお昼を奢る。」
「了解。それでいこう。」
「私が勝つからね♪」
彼女は不敵に笑った。実際彼女の滑りは見事でとても勝てる気はしなかった。私は滑ることはできたがスピードが出せずやはり初心者ボーダーと言わざるを得なかった。彼女は年数が違ったようだ。
午前中はひたすら滑っていた。夢中で滑っていると気が付かないが足がパンパンになっていた。普段使わない筋肉も使っていたし思った以上に体に負荷がかかっていた。
昼前になったのにで早々と食事をとりに向かった。賭けに負けた私が奢る番だった。スキー場で食べたい料理と言えばやはりカレーだった。彼女はラーメンを選んだ。何でこんなに食べたくなるのだろう。定番の組み合わせだった。仲良く昼食を取って休憩したらまた午後は滑り始めた。
クリスマスにゲレンデで滑る。恋人のイベントを着実に熟した私たちはとても満足だった。充実感に溢れていたしカップルなのを再確認できた。年の差なんて考える必要がないことに気づき始めていた。気づき始めているはずだった。あと少しだった。そしてわずかに届かなかった。
「今日も□□君を独り占めできるね……。」
彼女は積極的で憂いに満ちていた。2人だけのクリスマスは過ぎていった。お互いにプレゼントも交換して。それぞれアクセサリーを送った。身に着けてお互いを思い出すように。普段離れている分、距離が近づくものがほしかったから。またお互いが身に着ける特別なものが増えた。夜が止まればいいと思った。