夢の後
ディズニーランドのパレードは格別だった。馴染みのキャラクターが踊りながらこちらにくる。凄く幻想的でまさに夢の国だった。私は息子君を肩車して見ていた。横には彼女。一つの夫婦のそれにしか見えなかった。ここで一つの形をなした。
息子君の目はキラキラしていた。本当に連れてきてよかった。そう思った。本当の父親ではないけれどできることはしたくなった。まだ考えると嫉妬する部分は確かに残っていたけれど。それでも喜ばせて上げたいとその時は思った。息子君の笑顔はそれほど素敵な笑顔だったから。
時を忘れてという表現がこれほど当てはまることはなかった。あっという間に夢のパレードは終わった。凄く充実した時間を過ごせた。また見たいねと彼女は言った。私もそうだねと言った。そうなることを望んでいた。そうなってほしかった。
「パレード見れたし帰ろっか。」
「残念だけど。」
「うん。」
「きっとまた来れるよね?」
「うん。」
「きっとだよ?」
「また来よう。」
みんな名残惜しんでいた。私たち以外の夫婦やカップル、友達。それぞれ同じ思いを共有していた。そんな空間だった。夜空に星が輝いていた。明るすぎてあまり見えなかったけれど。確かに存在していた。
帰り道、彼女は少し俯いていた。さっきまであんなに楽しそうだったのに。私は気づかない振りをしていた。ラジオから流れる音楽だけをただ聞いていた。理由は聞かなかった。
やはり投げかけられたあの言葉を気にしているのだろうか。そう思っていたけれど口出すことはなかった。そんなこと言う必要がなかったからだ。言われなくてもわかっている。それが2人が選択したものだから。
「楽しい時間だけ過ごしたいね。」
「うん。そうだね。」
「□□君とはそういう風に過ごしたい。」
「大丈夫だよね……」
「うん。大丈夫。」
「……うん。」
ラジオからは聞きなれた曲が流れていた。いつだって音楽がそばにあった。2人の思い出は曲と一緒にしまっていった。いつでも思い出せるように。これなら色あせることなんてないからだ。いつかさよならしたとしても。
優しい空間が流れた。それは心を優しくさせた。この人を大切にしたい。心の中でそう願う。どうやって大切にすればいいのかよくわからなかったけれど。手探りでそれを探していた。




