パレード
そんな声が聞こえた気がした。実際に言われたのかわからない。横目で彼女を見ていた。少しこわばった顔で前だけを見ていた。後ろを向いたけれど誰か言ったのかわからなかった。そしてそれを私たちに言ったのかもわからなかった。ただ気にしていることを言われたと感じたのは事実だった。
確かに年の差というものは一緒にいたら全然感じなかった。でも鏡に映る私たちは服装も含めて年の違いは分かりやすかったかもしれない。当時の私はスケボーをしていたのもありそういう系の服装をしていたし、彼女はやはり少し大人の恰好をしていた。余計、年の差を感じてしまったのかもしれない。
彼女自体は実際の年よりも若く見える。20代後半ぐらい。どちらかというと私のほうが年より若く見られていた。それが問題だったかもしれない。声も低いわけではないから余計に。一緒にいたらまったく思わないのだけれど。彼女は気にしない振りをしていたのかもしれない。
彼女を横目で見てみた。まだ前をしっかり見ている。聞こえてなかったのか……。いやそれならこんな顔をしていないはずだ。なんて声を掛けていいかわからなかった私に彼女はこう言った。
「人多いね~。」
「う、うん。」
「ねえ。もっとアトラクション乗ろうよ!」
「楽しいやつ♪」
「……わかった。」
彼女は無理に笑顔を作ってくれた。お互いに聞こえてない振りをしていた。こういう問題は年齢差があるカップルにはつきものだろう。今よりも当時のほうが珍しかったはずだ。実際に彼女は綺麗だったのだけれど。私より上に見られるのは確かだった。それをカバーすることがその時はできなかった。
「パレードが見れよ。見たいだよ。」
「一緒に見たいな……。」
「うんうん。早めに場所取りする?」
「うーん。ギリギリまで遊んでたいなぁ。」
「時間が近づいたら見にこようよ。」
「わかった。」
パレードの時間を確かめると私たち3人は他のアトラクションを回った。お土産物屋にも行ってみたり笑顔が作れるとこに沢山いった。また彼女は笑顔で楽しんでくれていた。よかった。そう思った。
パレードの時間が近づいてきた。パレードが通る道を調べた私たちはそこに向かった。良い場所はすでに取られていたけれどみんなで見れる位置には来た。音が聞こえてくる。もうすぐパレードが始まるようだった。




