海老名
お昼ご飯はハンバーグだった。これも私が好きだと言っていたからだ。息子君も大好物のようで2人ともニコニコだった。もちろん彼女も。美味しいにおいが部屋の中を漂っていた。
「はい。出来たよ!」
「ごめん。お皿用意してー。」
「あ、はいはい。」
「ありがとう♪」
食卓で食事をする準備を手伝った。いつもの小さな食卓のテーブル。窮屈で狭くてお皿を置く場所なんてなくていつも場所に困っていたけれど。そんなテーブルも大好きだった。距離は近くに感じれたから。
小さな茶色のテーブルだった。とてもちっぽけなテーブル。それでも幸せをそこに載せることはできた。どれだけ載せれるかじゃない。何を載せるかだ。それを気づかせてくれた人。
「……美味しい!」
「お替り!」
「早くない?」
「まだあるから落ち着いて。アハハ。」
日常がフラッシュバックするのならこの時の映像がフラッシュバックしてほしい。幸せを形にするとこんな感じなんだろう。幸せは目に見える。何も考えないで楽しいことだけを考えていたかった。
食事を終えた後は少し家の中でゆっくり過ごした。彼女の実家は横浜の海老名にある。予約しているレストランに車で向かうらしい。彼女の母親は来ないらしくパチンコに出かけると置手紙を残して出ていったらしい。彼女の母親らしい行動らしかった。結局、母親とは会うことはなかった。
夕方早めに彼女の家をでた。約束の時間よりはやく着くためだ。彼女の父親も息子君に会えるのを楽しみにしているらしい。内心、緊張していたが素知らぬ顔をして車に乗り込んだ。大人の自分を見せる時だった。
着くまでに色々と話をした。彼女は彼女の母親とうまくいってないらしい。性格が合わないと言っていた。一方、父親はよく理解者で話を沢山しているらしかった。ざっくり言うと父親は応援しているけれど母親は反対していた。よくわからない若いやつとの恋愛なんて遊びだと思っていたようだ。
確かに心配なのは今ならわかる。いくら気持ちを伝えようとそれが真実だとしても。何年も同じ熱量でいられる保証なんてないからだ。いつまでたっても不安な関係。それを危惧していたんだと思う。
そうこうしてる間に駐車場についた。彼女は父親の車があるかキョロキョロしていた。ちょっと見てくるねと言って彼女は車から降りた。それをただ目で追っていた。彼女が遠くで誰かと話しているのを見かけた。どうやら父親はもう着いて待っていたらしい。緊張が走った。




