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ペアピアス

 毎日を繰り返す。平日は学業とバイトの日々。そして夜はチャットや電話で話す。遅くまで話して朝遅刻して学校に行く。このループだった。学校はギリギリ出席日数は足りていて1年目は留年することはなかった。彼女とこういう関係になって何か月か経った。

 

 相変わらず連休になるとどちらかが会いに行っていた。8割型彼女がこちらに来てくれていたのだけれど。途中から深夜バスで来るようになった。それが一番交通費がかからないから。夕方に乗って朝にこちらにつく。正直お金は負担させていた。彼女は何も言わなかった。彼女の時間とお金を奪っていた。

 

 経済的にも時間的にもどちらかに負担がかかる。私たちの場合は彼女だった。毎月、横浜から神戸まで移動しているのだからお金はかかる。仕事して自立している彼女に甘えていた。仕方ないと言えば仕方ないかもしれない。ただ確実に意識のズレはあった。


 

 「5月になったら20歳になるんだね。」

 「お祝いしなきゃ。」


 「特に欲しいものはないよ。」


 「誕生日だから好きなもの言ってよ!」


 「いや……特にない。」


 「一緒に身に着けるもの買おっか?」

 「左耳にピアス空いてるからペアピアスはどうかな?」


 「それいいかもしれない。」


 「そうしよう♪」


 

 神戸に来る前に左耳にピアスの穴を空けた。特にピアスがしたかったわけじゃない。その場のノリだったんだけど。せっかく開けた穴をふさぐのがもったいなかったから常につけていた。あまりアクセサリーにも興味がなかったからシンプルなものを付けていた。それが気になったらしい。


 二人で誕生日に買いに行った。何を選んだらいいのかわからなかったけれど彼女が気に入ったものを買ってもらった。シンプルだけど何か特別感があるデザインだった。また2人の距離は縮まった。

 

 

 「大切にします。」


 「無くさないでね。約束。」


 「いや、無くさないよ。」


 「どっちかというと無くすのは私のほうか。」



 彼女は笑っていた。性格的にも凸凹した2人だったと思う。几帳面な私と雑な彼女。行動力は彼女のほうがあって話も面白くて何一つ勝てる気はしなかった。とても誇らしかったのを覚えている。


 彼女は子供を元旦那や実家になるべく預けてきてくれていた。2人だけの時間を作ってくれていた。元旦那と会うのがだんだん許せなくなっていた。ただの嫉妬だ。気持ちが大きくなるにつれ独占欲がでてきてしまった。自分でもどうしたらいいのかよくわからなかった。


 この頃から少しずつ彼女を困らせていた。会えないのがわかっていてすぐ会いたいと言ったり。喧嘩した時も来なかったら別れるなんてセリフを吐いた。彼女の状況も気持ちも大切にできずただ困らせた。彼女は最後は折れてこちらの都合に合わせてくれていた。


 もっとやりようがあったはずなのにその時はそうできなかった。今の私なら同じことはしない。でも今じゃ遅いのだ。彼女の笑顔が少しずつ曇っていたのに気がついてはいなかった。


 会えない時に例のチャットで他のコと話したりもしていた。寂しさを紛らわしていてそれも彼女を傷つけていた。見てない振りをしてくれていた。もっと彼女を大切にできていれば結果は変わったかもしれない。思い出はやはり海のにおいがしていた。





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