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愛情と感傷

 彼女は改札口まで来てくれた。明るく話してくれているけどやっぱり別れ際になると少し目が潤んでいる。感受性が豊かな人だった。ストレートで気持ちを伝えるし態度にも出す。彼女はそんな人だった。



 「もう時間になっちゃうね。」

 「……寂しい。」


 「あ、うん。また来るから。」


 「……うん。絶対だよ。」


 「必ず来るから。」


 「……うん。」

 「……約束してね。」


 「約束する。」




 元気な顔も悲しい顔もすべてそのままの人。握っていた手をぎゅっと握り返してきた。息子君は状況がわからずニコニコしている。少し彼女の方が震えていたように見えた。やはり目がうるうるしている。また連休まで会えない。お互いに日常があるからだ。彼女には仕事もある。


 時間が来たので新幹線に乗り込む。ドアが閉まる。彼女はじっとこちらを見ていた。ずっと見えなくなるまで手を振っていた。見えなくなるまで。


 彼女のことはまだまだ知らないことが沢山ある。話してくれないことも。やはり距離が遠くなればなるほど後ろ向きに考えてしまうようだ。近くにいたら前向きに考えられる。けど距離が遠くなればなるほど前を見ることができない。新横浜から新神戸までの間にずいぶんちっぽけな自分になってしまった。


 1人いる時間が長いほど、2人の距離が遠いほどマイナス思考に陥る。ただのメンヘラかな。すこし悲しい気持ちになった。でもどうすることもできない。ならどうすればいい?答えがない答えを探した。


 新神戸駅から降りたとき、彼女からメールが来ていた。



 ――今、家に着いたよ。来てくれて本当にありがとう。嬉しかった。愛してるよ。



 メールを見てすぐに返事ができなかった。自宅までの道を歩く。感傷に浸っていた。お気に入りの曲を聞きながら。今はこれがベストだった。ただこれ以上のことができなかった。


 帰り道に寄り道をした。ただただ遠回りして歩いた。まっすぐ帰りたくなかったからだ。それに月がとても綺麗だったし公園のベンチに座ってぼーっと空を見ていた。言いようのない感情がそこにあったからだ。この感情を家に持ち帰りたくはなかった。


 時間にしたら30分ぐらいだったけれど。それでも少し気は楽になった。まだまだ気持ちの整理は追いついていなかったけれど。楽しいことを思い出しながら歩いた。楽しかったのは事実だったから。ゆっくり三ノ宮の繁華街を歩く。今日も人々で賑やかだった。


 家に着くとメールをした。


 

 ――ついた。こっちも楽しかったよ。ありがとう。愛してる。



 今まで愛してるなんて言葉を使ったことがなかった。使うのが恥ずかしかったし使い方もしらなかった。愛してるの使い方を教えてくれた最初の人。すぐに会いたくなった。


 

 「もしもし?」




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