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ラーメン博物館

 ラーメン博物館に来た。ここに来るということはお別れの時間が近づいているということ。わかっていたが合えてわからない振りをしていた。やはり別れは寂しいものだから。どうせ寂しくなるのならそうなってからでいい。今は全力で楽しむべきだ。そう思った。


  

 「おおー!ちょっとテンション上がってきた。」


 「ね!沢山あるでしょ?」

 「やっぱ人多いね~。人混みが凄い。」


 

 当時のラーメン博物館は凄かった。人が沢山で歩くのも困難なぐらい。3人でしっかり手を繋いで歩いた。今回は私、息子君、彼女の繋ぎ方だった。息子君が真ん中の形。ちょっと信頼関係が築けたみたいで嬉しかった。息子君もぎゅっと握り返してくれていた。私も握り返した。

 

 

 「何食べようかな~。」


 「何味好きなの?」


 「うーん。醤油も好きだし豚骨も好きだし味噌も好きだよ!」

 「全部好き!」


 「なるほど。とにかくラーメンが好きなのね。」


 「うん!うん!」


 

 自由って言葉が似合う人だった。たぶん、自由じゃないとだめな人。好きなものは好きだという。好きな人も分け隔てなく好きだという。そのままストレートに気持ちを伝える人。今思えば凄く影響を受けた人だった。言えるときに言わないと後悔する。それを教えてくれた人だった。


 人生には影響を与えてくれる存在が沢山いる。それぞれの時代にそれぞれいる。年上だったり年下だったり。身内の時もあれば他人だったりもする。私の人格形成の一つになったのは間違いなく彼女だった。振り返ればわかる。だから好きだったんだろう。


 

 「△△は何が食べたい?」

 

 「……これ!」


 「ならこれにしよっか!」

 「□□君は?」


 「うーん、醤油ラーメンかな。」

 「トッピングはどれにする?」


 「うーん。たまごトッピングしようかな。」

 「すみませーん!」


 「この醤油ラーメン2つにたまごトッピングしてください。」

 「あとチャーハンもいるよね?半チャーハン2つも!」

 

 

 彼女は元気よく注文した。どんどん自分で決めて先に進む人だった。私は終始圧倒されていた気がする。ただそんな私がたまに自己主張するとちょっとドキっとすると言っていた。ギャップがよかったらしい。自由奔放な彼女との距離感は大事だった。

 

 ラーメンがきた。彼女は息子君にラーメンを取り分けた。ラーメンを一つしか頼まなかったのは息子君が残したものを食べないといけないかららしい。そういうこともその時知った。好きなものはもちろん食べたいけれど息子君が優先。子供を持つってことはそういうことだと知った。


 抱っこもそうだった。子供は抱っこしてほしいとき。ベビーカーに乗りたいとき。コロコロ変わる。不思議に思っていた。子供の気持ちに寄り添わなければならないこと。彼女と彼女の子供を通してこの時に色々知った。私は知らないことばかりだった。何もかも。


 

 「駅までいくね。」






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