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葛藤

 朝の湘南の海はとても綺麗だった。いつもの日常と違う。当たり前だけれど。砂浜を3人で歩く。まだうまく歩けない息子君の手を引きながらゆっくり歩く。息子君と彼女と私は手を繋いでいた。真ん中が彼女。そうやって歩いていた。それが私たちの関係性だった。


 よく悩んだら海をぼーっとみたらいいって言うけどわかった気がした。海のにおいと音が心を落ち着かせる。刺激がないと色々と考えてしまうから。それらをやさしく流すのが海だった。彼女は海の近くで育ったんだな。そう思った。


 

 「私はここでずっと生まれ育ったんだ。」

 「良いところでしょ?」


 「……うん。海っていいね。」


 「うんうん。朝の海って好きなんだ。」



 3人で少し歩いた後、座ってしばらく話した。色んな事を。息子君を彼女が抱っこしていたらいつの間にか寝たようだ。周りにちらほら人がいたけどただ黙ってキスをした。キスした後も特になにも言わなかった。

 

 これからのことをずっと話していた。色んな未来が待っている二人だったから。これからの気持ちや行動次第でいくらでも未来は変わる。そう思ってた。実際にそうなんだけど。明るい未来しかないと思っていた。


 

 「今日はこの後どうしよっか?」

 「お昼何食べたい?」

 「どこか行きたいところある?」


 「そうだなぁ……。」


 

 彼女は質問攻めしてきた。私が喜ぶことがしたいようだ。私は観光よりもゆっくり過ごしたいと言った。息子君ともコミュニケーションを取りたいとおもったからだ。正直会う前は複雑だった。だって前の旦那さんとの子供だからだ。嫉妬という感情が無かったかと言えば嘘になる。


 今なら全然受け取り方が違うけれど当時は最後とは言えまだ10代。今ほど包容力があるかと言えば当然なかった。やはり元旦那さんのことは嫉妬するし彼女だけを独り占めしたかった。私だけのことを考えてほしかったし。言葉でも態度でも欲しがった。満たされることはないとわかっていたとしても。


 それでも彼女の子供を受け入れたかった。彼女の半身だから。様々なことがグルグル頭の中を駆け巡る。話しながらそんなことを考えていた。当時の私は独りよがりで視野も狭く包容力もない。今でもないれけど。今よりずっとそれらが無かった。


 彼女の車でドライブをした。レストランで美味しい食事も取ったし3人で一緒にブラブラした。公園で3人でずっと長い時間過ごしていた。滑り台やブランコで一緒に遊んだ。息子君はニコニコ笑顔で遊んでいた。こういうのも悪くないなって思い始めていた。

 

 

 「夜は家でご飯作るね。」

 「何食べたい?家で一緒にいたい。」


 「うーん。ハンバーグ。」

 「子供が好きそうなものが好きだね。」


 

 そう言って彼女は笑っていた。息子君が好きなものとほぼほぼ被っていた。まだまだ私も子供だったのだ。今でも中身は成長していないけれど。好きなものは好きだとそう伝えた。そういうところは当時から変わっていない。彼女が大好きだった。とても大好きだった。




 

 

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