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第23話 セントリウスへ

 

 とりあえず、ゴリラもといゴフテスに挑むことになったのだけど、今は移動も終えてBOSSエリアの前にある廃墟でゴフテスと戦うための準備をしている。


 さっき会ったゴフテスを一緒に討伐することになったプレイヤーのNAMEはリラで、RACEはドラゴニュートの土属性らしい、と言うかステータスを見せて貰っているからそれは確実なのだけど。


 それで、そのリラが現在ログアウト中なので、時間つぶしに準備という理由を付けて【調合】で前に使った毒液玉を作っていた。

 うーん、当然だけど前に作ったやつよりQuが良い。【調合】の熟練度というよりは、ちゃんとした生産装備で作っているからかな。


「今、戻りました。お待たせしてしまい、ごめんなさい」

「ん? 別に謝る必要はないです…よ」


【調合】の方に集中していたから気付かなかったけど、いつの間にかにリラが戻って来ていた。


「いえ、でも、手伝って貰う側の私が……」

「ただ待っていた訳じゃないから別に問題はない……です」

「……そうですか、ありがとうございます」


 別に感謝もいらないのだけど。そもそも生きている以上生理現象をどうにかできる訳でもないし。



 そして、リラの準備が整ったところでゴフテスの戦闘フィールドに入る。


『アナウンス

 エリアBOSSの戦闘フィールドに入りました。これからエリアBOSS:【岩腕のゴフテス】との戦闘が始まります』


 あ、戦うか戦わないのかの選択肢は出ないのか。まあ、ゴフテス未討伐のリラとパーティーを組んでいるから当然か。


「ゴォアアアァアアッ!!」


 うん。前と同じ感じの挙動だ。オルグリッチも毎回戦い初めは同じ挙動だから、ゴフテスも同じだろうとは思っていたけど。毎回違う挙動をされるよりも圧倒的に戦いやすいからありがたい。


[(モンスター・BOSS)岩腕のゴフテス LV:28 Att:土]

 HP:4800/4800

 MP:290/290

 状態:

 スキル:■


 ステータスも前に【鑑定】した時と同じだ。パーティーを組んでもHPが増えたりはしないのは有り難い。他のゲームだと上がったりするから確認は必要だよね。




「グッゴバァッ!?」


 咆哮の予備動作が終わった瞬間、前回と同じように吸込み中に毒液玉を呑み込ませていたので、咆哮攻撃が不発してゴフテスに毒の状態異常になった。今回のスタック値は41。投げ込んだ数は前回より少ないのに、スタック値が多いのはQuの影響かな。

 まあ、スタック値が多かろうと、おそらくこの状態異常が切れる前には戦闘は終わりそうだけど。


「攻撃のチャンス! 行きます!」


 特殊行動をキャンセルされたゴフテスが動けなくなっている隙に、リラは一気にゴフテスとの距離を詰める。そして、ゴフテスの腹部に向かって拳を振り上げる。


「ゴガァッ!?」


 リラ自身で付与したバフの効果もあり、その攻撃はゴフテスに悲鳴を上げさせることが出来る程のダメージを与えた。

 同時に、私も同じようにブラッドウェポンを使いゴフテスにダメージを与えていく。


 うん。やっぱり、倒すまでそれほど時間は掛からないかな。今の攻撃だけでゴフテスのHPを5%くらいは削っているから、ここから5分も掛からない気がする。ああでも、次の特殊行動はSTRとVIT上昇系だったからもうちょっとかかるかも。



 2回目の特殊行動を終えても、ゴフテスとの戦闘は順調に進んでいる。

 ゴフテスのVITが上がっているから一撃当たりのダメージ自体は減っているけど、思った以上にリラがダメージを稼いでいるのでゴフテスのHPの減りが早い。


 それに、与えた総ダメージ量はまだ私の方が多いから、ゴフテスからのヘイトがあまりリラに向いていないのもあって、順調にダメージが与えられているのだと思う。


 リラの戦い方は、簡単に言うと兄と同じ近接格闘。ただし、兄とは違って回避型ではなく、本人も言っていたように耐久型でカウンターがメインのようだ。まあ、その戦い方はゴフテスとの相性が良くないので、今回はある程度距離を取って隙が出来たら攻撃、を繰り返しながら戦っているのだけど。


「はぁっ!」


 やっぱり、人数が増えると単純に与えられるダメージ量が増えるから戦いが楽になるね。前回はちまちま攻撃をしてダメージを稼いでいたから時間が掛かったし、気に掛けないといけないことも多かった所為で、精神的にも楽ではなかった。



 そして、そう時間が掛からない内にゴフテスの残りHPが20%を下回った。

 これで最後の特殊行動が起きるのだけど、事前に決めていた通りにリラへ合図を送り、ゴフテスを挟んでリラが居る側とは反対へ移動する。


 最後の特殊行動はゴフテスが自身で纏っていた岩を投げつけて来るのだけど、こうすることでゴフテスに狙いを定めさせない、もしくは投げられても被害を最小限にしようという考えである。

 まあ、実際にゴフテスがどう動くかはわからないし、それ以上に攻撃される前に倒してしまえばいいのだけどね。


「態々鎧を脱いでいただけるなんてありがたいです!」


 リラはゴフテスが投げ付けた岩を躱しながら接近し、先ほどまで岩が覆っていた部分に攻撃を加えダメージを与えていく。

 ダメージ量を見る限り、どうやら岩で覆われていた場所は最初から覆われていなかったところに比べてダメージが通りやすいようだ。そして、リラもそれに気付いているから、そこを積極的に狙って攻撃している。


「スラッシュ」

「ゴガァッ!?」


 そして私もゴフテスの背後から、スラッシュを乗せた攻撃を放ち、それが首に当りゴフテスが大きくよろける。

 そして、その隙を逃すことなくリラが追撃を放った。


「これが最後です! やあっ!」

「ゴアァァ……」


 リラの攻撃によりゴフテスはHPが尽きて力なく地面に倒れ込む。それと同時にゴフテスの体はポリゴンになって消えていった。


『アナウンス

 第3エリアのエリアBOSS【岩腕のゴフテス】の討伐に成功しました。


 アナウンス

 エリアBOSS【岩腕のゴフテス】をプレイヤーの中で初めてパーティー討伐しました。討伐時間00:08:03。

 それにより討伐特典としてSTP10・SKP8を獲得しました 』


 ≪ワールドアナウンス

 エリアBOSS【岩腕のゴフテス】がプレイヤーによって初めてパーティー討伐されました≫


 あ、そう言えば、まだゴフテスってパーティーで討伐されていなかったのか。

 

 ゴフテスを倒したことでエリアBOSSとの戦闘フィールドから出された。

 今回はセントリウス側に出ることにしたのだけれど、第3エリアに入る前に気になった事は正しかったようで、セントリウスの防壁が近い場所に飛ばされていた。


「これでようやく別のエリアに行けます。って、結構遠くに飛ばされましたね」

「うん」


 廃村から見えた防壁に比べて、より近くに見える防壁を見てリラが驚いたように声を上げる。私も同じように驚いてはいるので相槌を打っておく。

 それに、ここまで近くに出て来られたのなら、後30分程走れば防壁の所まで着けるはずだから大分楽が出来そう。

 次に第3エリアに行く時は多少の手間ではあるけど、ゴフテスを倒して行くことにしよう。


「後はあの防壁の所まで行けばいいのですよね?」

「うん。そう」


 そうしてゴフテスを倒した時に得たアイテムを軽く確認した後、私たちは防壁に向かって移動を開始した。




 30分程走り、防壁の前に着いたところで第3エリアに行く前に軍人に言われた通り、ノッカーを使って駐在している軍人を呼び、防壁の向こう側に移動。


 リラはまだギルドカードを持っていないので少し時間が掛かったけど、私が最初にここを通った時のようにインベントリを軍人に見せて異邦人であることを証明したことで、問題なく防壁を通過することが出来た。


「うん? あれ、何で向こうからアユが? しかも知らないプレイヤーと一緒に居る?」


 防壁を通過してセントリウスに向かおうとしたところで、セントリウス側から兄のパーティー、正確に言えばエンカッセのパーティーがこちらに向かって来ていた。


 そう言えば兄たちは第3エリアに行くために依頼を熟していたんだっけ。夕飯の時にそろそろその依頼も終わりそうだとも言っていたから、ここに居るという事はおそらくその依頼を終えて今から第3エリアへ行くところなのだろう。


「知り合いのプレイヤーですか?」

「うん、まあ」


 リラが驚いている兄の顔と私に視線を移してそう聞いて来た。

 知り合いには違いないので肯定はしておくけど、兄が驚いているのは私が第3エリア側から来た事なのか、見たことのないプレイヤーと一緒に居たことなのか。まあ、たぶん後者だと思うけど。


「アユさん。そちらは?」

「第3エリアで会ったプレイヤー」


 エンカッセが私に一緒に居たリラのことを聞いて来たので要点だけ答える。リラが近くに居るのだから詳しいことはリラに直接聞くべきだよね。


「……なるほど」


 私の言葉を聞いてエンカッセはリラの方に向いた。おそらく先ほど流れたゴフテスを初めてパーティー討伐したというアナウンスが、私たち2人によるものだと気付いているのだろう。


「すいません。ちょっといいですか?」

「ええ、いいですよ?」


 エンカッセがリラに話し掛けたので、話に加わるつもりが無い私は一旦そこから離れて兄の元に近付く。


「アユさん? もしかしてさっきの討伐アナウンスはあのプレイヤーと?」

「そう」

「そうか。前のこともあるから知らないプレイヤーとは一緒にプレイしないと思っていたんだけど」

「……そうでもない」


 確かに、元から私は知り合いのプレイヤー以外とパーティーを組んでプレイすることは殆どない。でも、全くないわけでもない。

 それに、前のゲームでの出来事で知らないプレイヤーとプレイするどころか、関わりたくないと思っているのは否定しない。だけど、問題ないと判断できるプレイヤーならちょっと一緒にプレイする程度なら、絶対に嫌というわけでもない。


 まあ、あの事の後のことを知っている兄が驚くのは無理はないと思うけど。


「いや、うん……まあ。アユが問題ないと判断しているならいいか」

「うん」

「ファルキン、ちょっと」

「うん?」


 リラとの話が終わったのかエンカッセが兄のことを呼んだ。他のメンバーも近くに居るところからして、リラとフレンド登録をしているのだろう。


 兄がエンカッセに呼ばれてそちらに移動したので、私はステータスウィンドウを開いて現在の時間を確認する。


 現在は、リアル時間で22時過ぎ。UWWO内の時間で言うと20時半前と言ったところ。

 確か、リラはそろそろログアウトする時間だと話していたので、今日はセントリウスに行かずに近くの廃墟でログアウトすることになるだろう。


 一応、この防壁の門付近も簡易セーフティーエリアとしての機能はあるみたいだけど、前に私がログアウトしようとした時にすすめられなかったから、ここでログアウトするのはあまりいい事ではないのかもしれない。


 なので、リラがどこでログアウトするのかにもよるけど、ここでパーティーを解消した方がいいかもしれない。


「ふぅ、またフレンドが増えました。嬉しいですね」

「そう」


 やっぱり、兄たちはリラとフレンド登録をしていたようだ。

 そして、兄たちは第3エリアに向かうために、これからゴフテスの討伐に向かうらしいのでそのまま見送る。


「私もここでログアウトですねぇ」

「ん? 大丈夫なの?」

「ああ、そこはログアウト用のテントを譲っていただきましたので問題ないです」

「そう」


 なるほどテントか。前にPK対策に安全にログアウトするためのテントがあるって聞いたきがする。私は使うどころか買ったこともないけど。


「今回は本当にありがとうございました。アユさんが居なかったらここに来るまでに何日かかっていたことか」

「別にそう言うのは」

「いえ、感謝はちゃんと言葉にしないと駄目なので」

「……そう」

「もし、また一緒にプレイできる機会がありましたら、一緒にプレイしてくれると嬉しいです」

「うん」


 そうして私はリラと別れ、1人でセントリウスに向かった。



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