第13話 料理をする
いつものように生産施設に入り、いつも使っている場所に行こうとしたところで、これまで見なかったプレイヤーが居たため私は足を止めた。
何か知らないプレイヤーが居る? 上にネームが出ているからプレイヤーなのはわかるけど、誰?
ん? いや待って、もちもっち……どこかで見たような、どこで…ああ、アナウンスで見たNAMEだ。確かイスタット側のエリアBOSSを倒したパーティーにNANEがあった。という事は私がオルグリッチを倒している時にここに着いた感じかな。
あ、こっちに気付いて…頭を下げて来た。とりあえず私も頭を下げておく。するともちもっちはそれ以上私を気にするような様子は無く、作業に戻った。
気にしてこないなら私も気にしないことにしよう。もし、干渉してくるようなら別の場所に移動しても良いのだしね。
とりあえず、いつも使っている場所とは違う、もちもっちから離れた位置の机に携帯料理セットを広げる。そして先ほど購入した調味料を出して、…胡椒とスパイスシードの入れ物がミル付きのやつなのだけど、入れ物は使い捨てなのかな。まあいいか、そのうち分かるはず。そして最後にウサギ肉を出す。
…これはウサギ肉? 何か普通のブロック肉的なやつが出てきたのだけどウサギにしては形がおかしい気が。いや、ゲームだからある程度扱いやすいようになっているのかな。サイズ的には1匹分っぽい? 見ればちゃんと普通の肉とは違って脂肪分が少ない赤身の肉なのがわかる。
味に関しては焼いてみないとわからないけど、確かウサギ肉は脂身が少ない赤身肉で、鶏肉みたいな味らしいから形以外の見た目は変ではないのか。
とりあえず焼いてみて出来上がったものはこんな感じ。
[|(アイテム・料理)焼きウサギ肉 Ra:C Qu:F SAS:150]
ウサギ肉をそのまま焼いた料理。味付けもしていないため、素材そのままの味が楽しめる一品。
製作者:秘匿
単に焼いただけだからだと思うけど、説明の内容が薄い。うーん、これでも依頼の納品に使えるのか。それに使った金額よりもSASが高いから損もない。まあ、これだと委託に流したところで買うような住民もいないだろうし、ましてやプレイヤーも居ないだろうから、依頼の納品一択になるのだけど。
それにこれはあくまでも肉の味を確かめるために焼いたのだから、これは私が食べるのだけどね。
……見た目、鶏肉感は薄い。ただ、他の肉に似ているかと聞かれれば否だ。まあ、普通の牛肉と鶏肉の中間みたいな感じ?
食べてみる。って、そう言えば箸とかフォークって買ってない。菜箸で食べなきゃだめ? 手づかみはあまり好きではないのだけど、あ、皿の近くにフォークがあった。これは念じたから出て来たのか、お皿と一緒に出て来たのかがわからないな。まあ、どうあれ出て来るのなら問題は無いか。
食べてみるとまあ、鶏肉みたいな味。多少野性味というか雑味を感じるけど不味いってほどでもない。よくある焼いてみたらすごく美味しい!みたいな感じはないけれど、普通に素材の味。
食べ終わったので、次からは納品用として作っていこう。
ウサギ肉を出して、今回は切り込みを入れていく。そして胡椒と塩を振って軽く揉み込む…スパイスはどうしようか。臭みがなかったから使う必要は無いのだけど、雑味が少しあったからなぁ……使ってみようかな。別に納品するものだからうさぎ肉オンリーでもいいのだけど、他のパターンの売値の確認は必要。
とりあえず使うのはスパイスシードの方にしようか。
[(アイテム・料理)ウサギ肉の香実焼 Ra:C Qu:D SAS:250]
ウサギ肉に下ごしらえを施してから焼いた料理。あっさりとした味付けとほのかに香るスパイスの香りが食欲をそそる。最低限の味付けであるため肉本来の味も楽しめる一品。
製作者:秘匿
おお! Qu上がった。というかアイテム名が変わった。香実というのはスパイスシードのことだと思うけど、スパイスグラスを使ったら香草に変わるのかな。
後、SASもこちらの方が利益が大きいね。納品するのはこっちにしておこう。手間もそう増えてないからこちらを納品した方が得だね。
納品用のつもりで作ったけど、やっぱり味の確認は必要だよね。どんな味なのかもわからない料理を納品するのは良くない。
という事で食べてみる。
すごくおいしいという訳ではないけど、十分においしいと思う。ただ、スパイスシードを後から追加したからなのか、若干辛味が強い気がするから次からは少し減らすことにしよう。
とりあえず、ウサギ肉は全て消費した。出来上がった物のQuは殆どがDで、もう少しQuを上げようと工夫している時に出来たQu:Eが少しあるくらい。どうやら今使っている素材のQuなのか素材の種類の影響、もしくは生産装備による制限でQu:D以上は出来ないようだ。
そしてありがたいことに同じ料理、且つ同じQuであれば重ねてインベントリに入れられるようで、残りの枠の心配が少なくて済んだ。
【料理】スキルの熟練度はウサギ肉を全て消費してようやく30%に届いたくらい。これが早いのかどうかはわからないけれど、3時間掛からないくらいでここまで上がったと考えれば、まあ順調……なのかもしれない。
ついでに、納品の関係で一つだけウルフ肉を使ってみた所出来たのがこれ。
[(アイテム・料理)ウルフ肉の香実焼 Ra:C Qu:F SAS:360]
ウルフ肉に下ごしらえを施してから焼いた料理。下ごしらえの際にスパイスシードを使用しているため肉の臭みが薄れ、少し食べやすくなっている。最低限の味付けであるため肉本来の味も楽しめる一品。
製作者:秘匿
アイテムの説明を読んで、うーん、って感じ。SASに関してはウサギ肉を使った物よりも高い。ただ、元値を考えればそう利益が変わるわけでもないし……ああいや、SASが低いのはQuのせいか。それと説明文にある臭みが薄れという部分がちょっと。おそらくウルフ肉をよりおいしくするには材料不足という事なのかもしれない。もしくはウルフ肉その物のQuが低いのか。
まあ、どうあれ依頼の条件は満たしているから、このまま納品するのだけどね。極端に味が悪いってことは無いだろうけど味見は怖い。
とりあえず、今出来上がっている料理を納品してこよう。ウサギ肉を使った料理が98個と、ウルフ肉を使った料理で合わせて99個だから、依頼としては33回分。その内、10回分は2回分のギルドポイントがもらえるから、実質43回分依頼を熟したことになるはずだ。
という事で、納品してみると予想というか、依頼に書いてあった通りに43回分のギルドポイントが入ってきた。金額の方は24310AS。ASの方はいいとして、これで私の獲得したギルドポイントの合計は441になった。
WIKIで調べた限り、総合ギルドのギルドランクをDにするにはポイントが500以上になる事と書いてあったので残り59ポイントでそこに到達することになる。料理を納品するのなら59回分で177個必要だ。まあ、これくらいなら今日中には終わるのでさっさと終わらせてしまおう。
また生産施設に戻って料理をしていく。使う素材はまあ、ウルフ肉でそれが無くなり次第、羊肉か山羊肉にしよう。もともとウルフ肉はそれほど多くないし、正直私は食べるつもりが無いのでさっさと料理にして在庫処分してしまおう。
黙々と料理していきウルフ肉をすべて消費したので次に羊肉を使うことにする。
羊肉を薄めに切って、塩と胡椒を振りかける。スパイスシードは先に油を引いたフライパンに投入しておいて油に香りを移しておく。そして味付けした羊肉を入れる。薄くした分焼けるのが早いから気を付けてまんべんなく焼いて行く。
焼いている時の匂いはスパイスシードを先に入れていたからかそこまではしない。全くしないと言うことは無いのだけど、このくらいなら問題なく食べられそうな範囲かな。
[(アイテム・料理)羊肉の香実焼 Ra:C Qu:E SAS:440]
羊肉を薄くスライスしてから焼いた料理。焼く際にスパイスシードの香りを油に移してから焼いたため肉の臭みは殆どなく、食べやすくなっている。最低限の味付けであるため肉本来の味も楽しめる一品。
製作者:秘匿
出来上がった物はウルフ肉のものとそう変わらない。同じQuのウルフ肉のSASが420だから、若干ウルフよりも高い感じか。そして説明文を読む限り、ウルフ肉よりは匂いの処理が上手くいっているらしく、臭みは殆どなく、という文言が入っている。これなら味見をしても十分食べられる気がするね。
それで食べてみたけど、味はまあ塩と胡椒だからそこはいいとして、臭みは大分薄くなっているのかな。何もしないで焼いた物を食べていないから比較できないけど、リアルの羊肉と同じ感じだ。癖はあるけど食べられない程ではないってところか。
こうやって食べると本当に他の調味料が欲しくなるね。残念ながら塩以外の調味料は見つかっていないから無理なのだけど、魚はあるから出汁くらいなら作れるのか。
あ、いや、その前にフライパンしかないから煮込みは出来ないんだった。リアルだったら多少フライパンで煮込み料理を作ったりは出来るけど、ゲームだからなぁ。フライパンでやったらファンブル判定食らいそうだし、変なことはしない方が良いよね。
肉を薄く切る分時間は掛かるけど、これで問題は無いから熟練度とギルドポイントのために数を作っていこう。
そうして私はログアウトする時間まで料理を作り続けた。
フライパンで煮込むことは可能
ただし、煮込み料理判定にならず料理名の後ろに?がつく
料理道具の追加は初心者セットでは不可で、次のランクのものから追加が可能になる