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第6話 失敗どころか……

 

「さて、話は終わったがこれからどうする? 時間的にまだ昼のログアウトには微妙な時間だが」


 今はUWWO内の時間で23時。リアルだと11時半くらい。確かにお昼のログアウトする時間にしては何時もより若干早いくらいだね。まあ、今からログアウトしても多少お昼が早くなる程度だから、早すぎるってことは無いのだけど。


「今から何かをやるには微妙かぁ」


 そう言いつつも私の方を確認してくる兄を無視する。


「俺は一旦ログアウトだな。どの道今日はジュラとぎーんが抜けているから、午後からは自由行動だろう?」

「そうだな」

「私もログアウトするわ。このままここに居てもやることは無いし。アユちゃんはどうするの?」

「もうちょっと作業してからログアウトする」


【錬金】で鞄を弄るくらいの時間はあるから、それをやってからログアウトしても遅くはならないはずだ。


「あの、手伝いは…」

「いらない」

「……ですよねー」


 ちょっと作業するだけだし、そもそも何の手伝いをするつもりなのか。近くで見守るだけなら気が散るし邪魔でしかないよ。


「……俺も一旦ログアウトします」


 兄がそう言ったのをきっかけに兄のパーティーメンバーはログアウトをするためにギルドからそろって出て行った。


 それを見届けてから私は総合委託取引から容量不明の鞄を3つ購入。出来れば容量がわかればよかったのだけど、何処にも記載がなかった。よく思い出してみれば3倍圧縮袋も通常より3倍と記載してあっただけで、どのくらい入るかは記載がなかった。


 今買った鞄を確認してみる。よくあるドラムバッグみたいな形だけどそれより少し小さい感じの鞄だ。容量的には40Lは行ってなさそう。ちょっと大きめのリュックくらい? これの3倍だとしたら100Lくらいにはなるのか。


 うーん。100Lは鞄としてはかなり大きいけれど、アイテムを入れる物としてはあんまり大きくはないな。だけど、小さかったり薄かったりするアイテムならそれなりには入るか。


 まあ、その辺は作ってから確認すればいいよね。と言うことで、また生産施設に向かう。



 生産施設にある机の上に錬金板を出してその上に鞄を3つ置く。

 ……何か錬金板から鞄がかなりはみ出ているけど大丈夫なのだろうか。さすがにこれは想定していなかったな。

 錬金板が直径40センチくらいの円盤で鞄が一番狭い面で直径30センチより少し大きいくらいだ。当然鞄の所為で錬金板はほとんど見えなくなっている。


 これ大丈夫なのだろうか。そう思いながらも私は錬金板に魔力を流していく。


 む? むむ? 錬金板が光らない。魔力はしっかり流れていると思うのだけど、どうしてだろう。

 頭を捻りながらも魔力は流し続けている。しかし、いくら魔力を流しても錬金板が光るようなことは無い。もしかして錬金板からはみ出しているから出来ないとか? 大きすぎた? 

 そう言えば本当なら錬金板の溝に素材を入れてアイテムを作るのだった。素材を合成する時はその当たりを無視しても出来たから忘れていた。


 これはもしかして、この錬金板だと、この鞄の容量を増やせない? 

 いやまあ、確かにアイテム名が初心者の錬金板だし、水筒とかの容量を拡張する時にダメージを受けたくらいだから、おそらく見習いの段階で作るようなアイテムではないのかもしれない。


 うーん。どうしよう。錬金板を良い物にと言うか、初心者のやつから別のやつに替えれば出来るのだろうか。わからない。ギルドの人に聞けばわかるだろうか。錬金担当のレミレンが居ないとわからないかもしれないけれど、聞かないでずっと考えているよりはいいかな。そう思って生産施設の受付の人に話を聞きに行く。


「ごめんなさい。錬金に関しては私だとあまりわからないから」

「そう…ですか」


 やっぱりわからなかったか。聞いても分からないなら仕方ない。ここは一旦諦めよう。


「錬金だと、確かレミレンだったかしら。今日は確かあの子は常駐していたような」

「ぅえ?」


 え? 居るの? いつもだったら夕方には居なくなっていたのに。今日に限って居るの? もしかして錬金関係の話を聞くと帰ってないことになるとか? ……いや、前は居ないから無理って返された記憶があるな。


「居たら、呼んできましょうか?」

「可能ならお願いします」

「じゃあ、ちょっと待っていてね」


 そう言って受付の人は奥に引っ込んで行った。



 数分もしない内に受付の人がレミレンを連れて戻ってきた。


「いやー、何か聞きたいことがあるってー?」

「ごめんなさい。こんな時間に」

「いいってー、別に暇だったからー」

「それならいいのですけど」


 うーん。本当に何でいたのか。いや、居てくれたのは嬉しいのだけれど理由は何なのだろうか。夜勤?


「それでー?」

「これを合成したかったのですけれど、錬金板が反応しなかった…のは何故でしょうか」

「え、ふぇ…え? もう容量の拡張とかやっているの!? 熟練度とか足りていないんじゃ?」

「作っている時ダメージ受けるから多分足りていないです」

「だよね!? いやでも、MNDが高ければ多少のダメージに目を瞑れば出来ないことは無いかなー? 少なくとも【上級錬金】の終わりごろにやるようなことなんだけどー」


 ああ、やっぱりそれくらいは必要なのか。でも、鞄の容量が拡張できないのとは理由が違う気がする。そもそも錬金板が反応していないからね。


「それと、その鞄だとー、ちょっと大きいかも? そのサイズだと錬金板だと無理かなー」

「錬金板だと無理?」

「うんー。錬金板っていい物になってもサイズはそんなに変わらないからねー。大きいアイテムを扱うのは無理だねー。そう言うのは錬金設備で扱う感じだよー」

「錬金設備」


 聞いたことが無い単語が出て来た。設備ですと? もしかして錬金板って携帯するためのものだったの? と言うかよく考えれば錬金板のサイズが大きくなったら住民が使い辛くなるし、プレイヤーからしても出すたびに場所を取るから問題があるかもしれない。


「ハウスとかクランハウスに備え付けるタイプの生産設備ですねー。一応この施設にもあるんだけどー、ギルドランクがD以上じゃないとつかえないのねー。アユちゃんは今ギルドランクは?」

「…Eです」

「じゃあ、あと少しで使えるようになるね」

「そうですね」


 Dランクってあとどのくらい依頼を熟せばいいのだろうか。時間が掛かりそうなのだけど。


「こんなところだけどー、これで大丈夫ーかな?」

「あ、はい。ありがとうございました」

「いえいえー、じゃあ私は戻るねー」


 レミレンはそう言って受付の奥に消えて行ったけど、私は気分が大分落ち込んでいた。まさか失敗どころか使うことすら出来ないなんて、そんなことは一切考えていなかったからショックが大きい。


 でも、このまま鞄を持ったまま佇んでいても時間の無駄だよね。そう思い私は、使う当てのなくなった鞄をギルド倉庫に預け、宿に戻りログアウトした。


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