表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/249

おまけ 2日目のイスタット・ドワーフ 後 微かな邂逅

 

 戦いは混戦を極まる。と言うことは無く、傍観していたプレイヤーが一方的に他のプレイヤーを虐殺している。まあ、戦いの条件が一緒ではない以上、こうなるのはわかり切っていたことだがな。


 そして、俺の方にもプレイヤーがやってきている。しかし、他のプレイヤーに対する対応とは異なりどうやらかなりの警戒をしているようだ。これはもしかしたら俺が保有しているポイントが高いことをあらかじめ知っていたのかもしれない。

 いや、むしろこれは最初から俺を優先的にターゲットにするつもりだったのか?


 そう言えば2日目が始まる前に掲示板を覗いている時に、上位陣に特攻を仕掛けてペナルティを発生させて嫌がらせをする、なんて書き込みがあったことを思い出す。


 まさか、こいつらがそれか? 明らかに1対多を目的としているような動きだな。しかも、最初のやつが俺をターゲットにした時から、他のプレイヤーを見逃し始めていやがる。


 とりあえず、最初に向かってきたプレイヤーを切り伏せる。やはり一撃では倒せていないが、少なくとも体勢を崩すことは出来る。そして、追い打ちをかけるようにもう一撃を加えてそのプレイヤーはポリゴンとなり、リスポーン地点に戻って行った。


 向かってきているプレイヤーたちを見る限り、こいつらの技量はそれほど高くはなさそうだ。しかし、このままでは何れ物量に圧されて負けるな。


 イスタットで攻略を進めているプレイヤーの大半は、数の暴力の脅威はアッシュボアで十分に身に染みている。まともに相手をしなくとも1撃、もしくは2撃で倒せる敵でも、連続且つ大量に向かってくればジリ貧となって負けるのだ。しかも、武器の耐久値の問題もある。


 耐久値のある武器を扱う以上、連続戦闘には限界がある。イベント中は確かに耐久値の回復は簡単に出来るようになっているが、戦い続けながら、となるとその難易度は急激に高くなる。出来ない訳ではないが、少なくともウィンドウの操作を必要とするため、一瞬以上に目の前の状況から目を離さなければならないのだ。この瞬間程、相手にとって好機になる瞬間はないだろう。


 まあ、そこまで俺が持つかはわからないけどな。



 次々と向かって来るプレイヤーを倒し続けている。そろそろペナルティが発生しそうだが、一向に向かって来るプレイヤーが減っていかないな。まさかリスポーンしたらすぐにここに向かって来ているのか?

 何でそこまでやろうと思うのか。そもそも、これが成功したところでイベント的には何のメリットもないだろうに。


 俺的には向かって来るプレイヤーを倒すたびにポイントが入って来るから問題はないのだがな。1人倒したところで獲得できるポイントが100から200の間だから余程間隔があかない限り、その辺のエネミーを倒しているよりもポイント獲得効率は良い。


 ただ、獲得できるポイント量からして、こいつらの保有ポイント2000は超えていないと言うことだろう? 俺に向かって来るよりも、森や草原に居るエネミーを倒した方が余程効率的だろうに。


 まあ、俺にとってはこの状況は利点以外何にもないから、指摘はしないがな。それに戦い始めてから既に10000ポイント以上は軽く稼げている。このままというのは在り得ないとは思うが、これなら1位を抜くことも不可能ではないかもしれない。


 しかし、そろそろ今使っている長剣の耐久値が怪しくなってくるな。一応、何かあった時のためにもう一本用意してあるから、直ぐに取り換えられれば問題は無いのだが。プレイヤーが向かって来る切れ目がない以上それも難しいか。


「アースランス」


 チャージしていたスキルを発動させる。すると地面から土で出来た槍が複数突き立って来る。その槍は一時的ではあるが周囲に居たプレイヤーがこちらに近づいてくるのを阻んだ。


 まあ、難しいとは思うが、出来ないという訳ではない。要はそれを行うための時間を作ればいいだけだ。残念ながら耐久値を回復させるほどの時間は作れないが、武器を交換するだけの時間なら余裕で作れる。


【土魔術】のランスは他の魔術とは異なり射程は短い。と言うよりも飛んでいかない。その代わり複数同時に出現し、出現時間は短いが攻撃兼盾として使うこともできる。


 これにより一時的に周囲にプレイヤーが来られないようにする。そして、その隙にインベントリを開き、武器を持ち替える。今まで出していた武器に残っていた耐久値は8。直ぐに無くなると言う程ではないが、この後も継続して戦闘すると考えると心もとない耐久値だ。


 アースランスで出した槍の間を縫って近付いて来たプレイヤーを切り伏せる。それと同時にアースランスの効果が切れ、土の槍が崩れて消えた。


 アースランスでダメージを負ったプレイヤーを優先して倒していく。3人ほど倒したところで不意に気になる者が視界の端に映った。それはこの戦いを傍観しているプレイヤーがまだ居たからだ。


 何故まだ傍観している? もしくはインターバルと言うか休憩しているだけか? ただ、何かが引っかかるが、こちらに向かってこない以上は俺が攻撃をする理由はない。



 しばらく、最初と同じように向かって来るプレイヤーを持っている長剣で切りつける、と言う作業が続いた。

 ポイントも大分溜まったな。2日目が始まった段階で保有していたポイントが倍以上になっている。しかし、これでもまだ1位に届いていない。6時間を少し過ぎた、と言うところでこれであればイベント終了までには追いつきそうだが、そこまでこいつらが向かって来るとは考え辛い。


 ああ、そう言えばペナルティの方は発動していないな。もしかしたら意図的にルールを破らせた場合は、ペナルティが発生しないようになっているのかもしれない。


 そう思っていると、先ほどから一切動いていなかったあの傍観をしていたプレイヤーが大きな声を発した。


 何だあいつ。そう思うと同時に、この戦いを指示しているプレイヤーが居たのではないかという、考えが頭をよぎった。

 たしかこの戦いの発端は掲示板だ。なら、最初にこれをするように煽ったプレイヤーが居てもおかしくはない。それに共感した、もしくは元から仲間内だった奴らが今、向かって来ているプレイヤーか?


 と言うことは、あいつがこのプレイヤーたちを扇動している…のか?


 そう考えた瞬間にそのプレイヤーの頭が飛んだ。突然のことで理解できなかったが、どうやら別のプレイヤーからの攻撃によるものだろう。倒れながらポリゴンになって行くところでアナウンスが流れた。


 ≪ワールドアナウンス

 賞金首のレッドNAME:グリニアが討伐されました。

 討伐判定の際、カルマ値が一定以下になったため、レッドNAME:グリニアが投獄されました≫


 アナウンスだと? いや、まさかレッドNAMEだとはな。遠目過ぎてNAMEカラーまで確認できていなかった。しかし、何故一撃で倒せているんだ?


 俺も含め、周りのプレイヤーがアナウンスに驚いている間にも他に傍観を決めていたプレイヤーの首が飛んでいく。


 何故首ばかり…まさか、弱点判定なのか?

 いや、そもそもUWWOはリアル志向のゲームだ。少なからずリアルから乖離している部分もあるが、それは間違いない。と言うことは、首を切り落とせば即死判定であっても不思議ではないか。


 とりあえず一番近くに居たプレイヤーに対して首を攻撃してみる。そのプレイヤーの首が飛ぶ。そのプレイヤーの顔は何をされたのかわからないといった表情で直ぐにポリゴンになって消えた。まさかここまで一撃且つ簡単にプレイヤーを倒せるとは。


 俺は急いで先ほどレッドNAMEを倒したプレイヤーを探した。既に傍観を決めていたプレイヤーはほとんど残っていない。今も森の近くで立っていた最後のプレイヤーがポリゴンになって消えていっているくらいだ。


 もう既に10人は倒されているだろう。早い、と思うと同時に一つの可能性が浮かび上がる。


 もしや、あれが1位か?


 森の近くに居たプレイヤーを殲滅したと思わしきフードを被ったプレイヤーを見つけてそう思う。

 残念ながら気付いた時には殆ど姿を確認できる距離ではなかったため、フード付きのコートを身に着けている以外は何もわからなかったが、少なくとも容易く1撃で敵を倒すことが出来ている以上、1位以外は在り得ないだろう。


 まあ、いい。少なくとも俺は敵を1撃で倒す方法を手に入れた。全ての敵にそうすることは出来ないだろうが、今までよりも断然効率は良くなるだろう。


 そうして俺はもう一度出て来たワイバーンや高LVエネミーを向かってきたプレイヤーたちと共闘し、終わったらまた元に戻る、と言った流れを何度か繰り返し、イベント2日目を終えた。


 最終的に俺が1位となりイベントは終了したが、腑に落ちないのはあの1位のポイントが、2日目終盤にあまり伸びなかったと言うことだ。どうしてあれだけのことが出来るというのにそうなったのか。直接会って聞きたいところだ。

 まあ、誰もどこの誰だかを知らないらしいから無理だと思うが。


 まあ、いい。腑に落ちないが1位は1位だ。祝いとして、今日はいいワインでも開けるか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ