第43話 翼竜素材のナイフ
裁縫師の作業着に続き、鍛冶師の作業着、錬金師の作業着を作り終えた。
鍛冶師の作業着はつなぎのような見た目で、錬金師の作業着はローブタイプの物だった。
この2つもエンチャントしていないものと、エンチャントした2通りを作った。
素の性能は裁縫師の作業着と同じように、DEXとLUKの%アップと生産の成功率アップ。
そこから鍛冶師と錬金師に合わせて素材を変えて、鍛冶師の作業着はVITと火耐性が欲しかったためエリアBOSSであるアッシュボアの皮の強化した物を使用。錬金師の作業着はMNDが欲しかったため同じくエリアBOSSのペデュートの皮を最大まで強化した物を使って生産した。
予想通り鍛冶師の作業着にはVIT+32と火耐性(小)が、錬金師の作業着にはMND+32と毒耐性(小)がついた。
錬金の方の毒耐性は正直いらないけれど、デメリットというわけでもないので問題なし。
ただ、そのままでは錬金師の作業着は元の装備よりMNDの上昇量が下がってしまうので、さらにベテュードの皮を最大まで強化し追加でエンチャントしてMNDを上げた。
やっぱりというか、作業着自体の能力はエンチャントをしても上昇せず、Quによって多少変動する程度のようだ。
より効果を上げるにはおそらくこの作業着よりも高いRaの作業着のレシピを手に入れて、それを作る必要があるのだろう。
作業着も作り終わったし、さっそく兄のナイフの生産に取り掛かろう。
前回に作ったときは鋼のナイフを土台にエンチャントで強化していったけど、今回は別の素材で作ったナイフを土台にしていきたい。
鋼の上位素材となると銀や金があるけれど、この2つは武器向きの素材ではないから、他の素材を使わないといけない……のだけど、鋼より上の素材で武器に向いたものって見つかっていないのだよね。
私が今作れるナイフの中で一番強いのは翼竜の牙で作ったナイフ。次点で翼竜の翼爪ナイフになる。
どちらもワイバーン素材を使用したナイフだ。
この2つは鍛冶のレシピではあるのだけど牙と翼爪が素材であるため、鍛冶でイメージする炎の中に素材を突っ込んでカンカンするみたいなことはせず、牙や翼爪をナイフの形に研磨して作るものだ。
一応ナイフの柄は金属と木材で作られているけど、刃の部分は素材そのものである。
「どっちにしようか」
製作難易度的にそこまで差はないけれど、やっぱり爪よりも牙で作ったものの方が強そうではある。
「一回作ってみればいいか」
どちらを土台にするかを考えるにも、土台にするものによってエンチャントの難易度が変わるから、実際に作ってエンチャントできるかどうかを確認するのは必要だね。
ナイフの能力もレシピを持っているだけではわからないから、一回作ってみないことには何とも言えないし。
とりあえず、一旦錬金師の作業着に着替え、ナイフの柄に使う金属部分を先に作っていく。牙ナイフと翼爪ナイフ、どちらも使う柄の形は同じなので、2つ分用意する。
錬金で金属部分を成型し、さらに木工で木材を加工したところで柄の製作は終わり。
次は鍛冶作業なので作業服を着替える。
鍛冶炉に設置されている回転式の砥石を使って、ワイバーンの牙と翼爪をナイフの形状に加工し始める。
先に生産難易度の低い翼爪ナイフの方から生産を始める。砥石で翼爪を研磨していくとガリガリと音を立てて削れていく。
研磨するのって現実だと結構時間のかかる作業だけど、ゲームらしくある程度簡略化されているようでどんどん削れていき、まだ見た目は荒いけど1分ほどでナイフとして使える形になった。
このままではナイフとしての切れ味があまりないので、ここからさらに最初に使った砥石の隣に設置されているより滑らかな砥石を使って削っていく。
しっかり研磨したところで生産システムにより成功と判断されたので、研磨をやめて先に作っておいた柄を取り付けて完成。
[(武器)翼竜の翼爪ナイフ Ra:Uc Qu:C Du:100/100 SAS:21600]
ワイバーンの翼爪を加工したナイフ。元の形状を生かしたナイフのため、裂くことに特化した特殊な形状をしている。
装備効果:攻撃が相手の体に直接当たった場合、25%の確率で裂傷(5)の状態異常を与える。STR+34
作製者:秘匿
出来上がったナイフを確認したと同時に新しく状態異常の知識を得たというアナウンスがきた。
裂傷、継続ダメージを与える状態異常ね。
この手の状態異常は他のゲームであるからいいとして、ナイフの性能は微妙かなぁ。STR+34は悪くないけど、裂傷を与える以外に能力ないし、ワイバーン素材をつかったわりに弱い気がする。でも、ナイフだからこれくらいが普通なのかな。
しかし、作っている時からわかっていたけど、内側が刃になっている鉤爪型のナイフで少し使い難そうだよね。
これなら牙の方がいいかも。こっちは普通のナイフと同じ形状になるし、前に作ったナイフもこのタイプだからね。
翼爪を加工していた感じと生産したナイフのQuも使った素材と変わっていないから、作ること自体は可能だと思うけど、問題は最後までエンチャントできるかだよね。
まあ、とりあえず牙ナイフも作っていこう。
「む。なるほど」
翼爪と同じく研磨してナイフの形状に整形していくのだけど、翼爪とは異なり牙を研磨する時少し抵抗を感じた。
これは生産難易度の差なのだろうけど、翼爪ナイフは抵抗なく作ることが出来て、その1つ上の牙ナイフで抵抗を感じたということは、今の【鍛冶】スキルの熟練度では、翼爪ナイフまでが適正範囲ってことなのだろう。
抵抗を感じるといっても難しいってほどではないから、いっそ【鍛冶】スキルの熟練度を稼ぐためにこっちを土台にしてもいいかな。
そんなことを考えながら牙ナイフの生産を終えた。
[(武器)翼竜の牙ナイフ Ra:Uc Qu:D Du:100/100 SAS:22000]
ワイバーンの牙を加工したナイフ。翼竜の牙の特性を生かしたナイフのため、攻撃した際その牙に染み込んだ毒を相手に与えることがある。
装備効果:攻撃が相手の体に直接当たった場合、30%の確率で毒(5)の状態異常を与える。STR+38
作製者:秘匿
牙ナイフの性能を見て悩む。
使用した素材よりQuが下がってしまったのは熟練度不足だとして、性能の差がそこまでないのだよね。
追加効果が裂傷か毒かの違いはあるけど、どちらも継続ダメージを与えるものだからいいとして、STR+38か。
Quが同じならもう少し差は出るだろうけど、後でエンチャントする素材は同じだから微妙なところだ。
いっそナイフの素材からエンチャントして作ればもう少し差は出ると思うのだけど、それをしてしまうとナイフを作るのが難しくなるのだよね。
さて、どうしようかな。