第40話 ランクアップ
錬金の師匠であるアフィアラに弟子入りした後にログアウトしてから、ハウスに戻りせっせと魔鉄や魔法石を作り続けたことでようやくJOBの錬金師がランクアップし、上級錬金師になった。
……錬金師の次、錬金術師じゃなかった件。
何か肩透かしを食らったような感覚になったけど、そもそも次は錬金術師だろうと高をくくって調べていなかった私が悪い。
まあ、とりあえず2次JOBになることが出来たので、現在セントリウス内にある生産ギルドの方に足を運んでいる。
ここに到着して最初に説明してもらったのだけど、生産ギルドと今まで使っていた総合ギルドとは違い、生産施設に当たる場所と戦闘系の施設がなくなっていて、生産設備は今まで使っていた物よりもランクの高い物になっているらしい。
ギルドとしての機能はほぼ同じだったけど、掲示されていた依頼は生産スキルに合わせた物だけになっていて、戦闘系の依頼は一切なくなっていた。
生産ギルドというだけあって、しっかり生産に特化した内容になっているようだ。
個人的に一番うれしかったのはギルド内に図書館が存在したこと。今までセントリウスのギルドには図書館がなかったから、調べ物をするなら他のエリアのギルドに行く必要があった。
まあ、そこまで何度も頻繁に行っていたわけではないのだけど、生産専門のギルドだけあって図書館にあったレシピの種類がたくさんあってかなりの収穫になった。
ただ、残念なことに生産ギルドで閲覧できるレシピは、対応しているスキルの熟練度によって許可が出る形になっていたのだよね。だから取得している中で熟練度が低い【鍛冶】【細工】【木工】スキルは、ほとんどレシピを得ることが出来なかった。
この3つはこれから合間を見てちまちま熟練度を上げていこうと思う。特に細工スキルはアクセサリー作りに使うものだから、この中でも優先的に上げていきたいところ。
こんな感じでそこそこの量のレシピを手に入れたわけなのだけど、今回手に入れたレシピの中で嬉しかったものは、各生産スキルに合わせた作業服のレシピと錬金の一部レシピ。
作業服についてはここで見つからなかったらガルスのところに行って話を聞こうと思っていたから、作業服のレシピは純粋にありがたい。汎用的に使える作業服のレシピもあったから、これは練習用に作って適当に委託に流せば売れると思う。
まあ汎用的に使えるだけあって、各スキルに合わせた作業服に比べたら効果は落ちるのだけど、いちいち着替えなくてもいいってメリットがある。
装備の変更自体はすぐにできるのだけど、使うスキルに合わせて毎回装備を変えるのは手間だし、インベントリの中にないとできないから作業の邪魔になるのだよね。
まあ、これは近くに倉庫なり装備がしまって置ける場所があればいいだけなのだけど。
それで錬金のレシピなのだけど、取得している物とは別の人工血液のレシピが手に入った。
もともとサウリスタの図書館でレシピは手に入れていたのだけど、今回手に入れたレシピはそれとは別で錬金窯を利用したレシピになる。そしてこちらの方が製作コストが軽かった。
知っていたレシピは魔石(小)が5つも必要だったけど、こちらは2つで製作可能と、使用する魔石の数が半分以下とかなり作りやすくなっている。
作るとしたら今回手に入れたレシピを使った方がいいよね。多分製作難易度は今回手に入れた方が高いだろうけど、使用する素材が少ないのは大きなメリットだ。
それと人工血液を素材として利用したレシピも取得した。
これは回復用のアイテムだったのだけど、錬金スキルでしか作ることのできない回復アイテムで、使用した素材によってはかなり強力な回復薬になるらしい。
これを作る際に使用する素材というのが血液系の素材で、この素材の種類によって効果の強さが変わるというわけなのだけど、この回復薬のレシピの説明で気づいたことがあるのだよね。
この『素材の種類によって効果の強さが変わる』ってところ、これ人工血液を作る時にも影響があるよね? おそらく出来上がった人工血液のアイテム説明では明記されないだろうけど、絶対何かしらの影響があるはず。
というか、人工血液を強化するのってこういう部分でしかできない可能性が高そう。今まで後から強化するためにエンチャントをしようとしてもできなかったわけだし、ここ以外で強化できるタイミングはないよね?
ということは、血魔術の火力を上げるためには血液系の素材を見つけるしかないわけだ。
本当にどうやったら手に入るのだろうか? 公式WIKIにも掲載されていないし、まだ誰も採取することが出来ていないのか、もしくは手に入れてもWIKIに書き込まないで秘匿しているか。
回復薬のレシピを手に入れる前は誰も見つけていないのだろうなって思っていたのだけど、回復量が多い回復薬の素材になるってわかった今は、イベント終了まで秘匿している人が居る可能性も十分に考えられるのだよね。
うーん、人工血液の強化は後回しにするしかないかな。
手に入れるどころか情報もほとんどない素材をどうすることもできないし、それに他の部分で補えないわけでもないから、そっちの強化を進めて行けばいいよね。
でも、とりあえずその前に生産用の作業着を作ることにする。すぐに作れる範囲だし、使用する素材も委託で購入できる物なのだ。ハウスに戻ってから製作でもいいのだけど移動に時間がかかるし、ここでパパッとできるものはやっておきたい。
「ん?」
ギルドの生産設備を借りるために担当の職員に声を掛けようとしたところで、フレンドチャットの通知が1つ届いていることに気づいた。
確認するとチャットの送り主は兄で、書き込まれていた内容は『聞きたいことがあるんだが、今大丈夫か?』とだけ。
何を聞きたいのかわからないけれど、とりあえず短く返事をしておこう。