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第35話 見覚えるある名前

 

 工房の奥に居たレミレンと私をここまで連れてきてくれたレミレン。本物は先に工房に居た方のレミレンだろう。


 外からここに来るまでの少しの間しかレミレン(?)と会話していなかったけど、思い返せばレミレンの間延びした語尾ではなく普通の話し方をしていたのだよね。


「お…師匠ー。またその魔法使っているんですかー。私は耐性があるからもう騙されませんけど、アユさんはそうではないんですよー」

「そのためにこの魔法を使ったからな」


 魔法を使っているらしいけど、どんな魔法を使っているのか。姿を変えているから変身魔法とかだろうか。


「そうですかー」


 いつも大体にこにこしているレミレンが疲れた表情をしていることに少し驚く。

 もうってことは昔は騙されていたってことなのかな。レミレンからは気難しい人って聞いていたけど、多少茶目っ気のある人なのかもしれない。


「まあ、目的は果たせたし、このままでは話が進まんか」


 そう言ってレミレン(?)が指をはじくと目の前のレミレンの姿が霞み、気づけばその場所に長身で赤いロングヘアの女性が立っていた。


 レミレンが口を滑らせたのが間違いではないなら親子みたいだし、人と違って耳が尖っているのはレミレンと同じだけど、レミレンよりは尖りが小さいかもしれない。

 身長もかなり違うし、声質もレミレンより低いのにレミレンの声に聞こえていたし、視線の向きとかも違和感がなかった。


 変身系の魔法なのかそれ以外の魔法なのか、どういうスキルを使っているのだろう。というかこのスキル、もしプレイヤーが使えたらいたずらに使われそうだけど大丈夫なのかな。


「騙すようなことをして悪かった。この子の師匠をしているアフィアラ・ミルフォスだ。よろしく」

「あ、はい。アユです。よろしくお願いします」


 レミレンのことをこの子って呼んでいるのは親子だからなんだろうけど、レミレンの見た目とこの人の見た目が違い過ぎて本当に親子なのかちょっと疑問。

 もしかしたらレミレンは父親似なのかも。アニメとか漫画だと全く似ていない親子とか存在しているし、そのパターンの可能性もあるけど。


 うん…あれ? この名前どこかで見たことがあるような。どこだったっけ?


「どうした?」


 私が首を傾げたところを見て、不思議そうにアフィアラが私の顔を覗き込んでくる。


 どこで見たのか記憶を掘り起こし、あれこれ思い出していく中でそれが何だったのかを思い出した。


「圧縮袋の作製者?」


 セントリウスについてそう時間が経っていない頃、総合委託で見つけて購入した圧縮袋の作製者の欄に載っていた名前が、確かこんな名前だった記憶。今はギルドの倉庫の中にしまってあるから確認はできないけど、確かこの人の名前と同じだったはず。


 総合委託では他にもアイテムを購入しているけど、あの圧縮袋みたいに作製者の名前が載っていたアイテムってあれ以外になかったのだよね。

 プレイヤー作製品ならたまに載ってる物もあるんだけど、住民が作ったと思われるアイテムで名前が載っているのは本当にあれ以外見たことはない。まあ、そんなに住民作製のアイテムを買っていないから見てことがないだけの可能性はあるけども。


「圧縮袋?」


 さすがにそれだけでは何を言っているのかわからなかったのか、私の言葉が理解できないといった表情をした。


「えっと、総合委託掲示板で前に圧縮袋を買ったことがあって、それの作製者の名前であなたの名前が載っていて」

「ふむ?」


 アフィアラはそれを聞くとそれを思い出すように視線を少し上に向け顎に指を当てる。それから数瞬の後、「ああ」と言葉を零すと思い当たるものが在ったようで、上に向けていた視線を私の方へ戻した。


「あの売れ残りのアイテムを買ったのはお前だったか。半端な素材で作ったものだったが、使った素材のせいで物の割に高額になってしまい売れ残っていたんだ」

「ああー。だから教えたわけでもないのに鞄の拡張方法知っていたんだねー。納得ー」


 錬金板で鞄を圧縮しようとしてできなかった時、レミレンに聞いて驚かれたのだよね。


「ほう」


 レミレンの言葉を聞いてアフィアラは少し感心したような声を上げ、隣にいた私の元へさらに近寄って来た。


「なるほどな。アユ、自作した拡張鞄は今持っているか? 持っているなら見せてほしいのだが」

「えっと、ウエストポーチなら」


 インベントリの中に拡張鞄が入ってはいるのだけど、すぐに見せてほしいという圧というか勢いがすごくて、すぐに見せられるウエストポーチを外しアフィアラの前に差し出す。


「内容量が拡張してあるのならウエストポーチでも構わん。少し借りるぞ」


 アフィアラはそう言うと私からウエストポーチを受け取り、じっくりそれを調べ始めた。


「悪くはないな。粗はあるが」


 しばらくウエストポーチを調べていたアフィアラは、そう言うとウエストポーチをこちらに返してきた。


「ここへ入る前から騙して様子を見させてもらってなんだが、正直なところ弟子入りの話は最初から断ろうと考えていたんだ。だが、自力でこれを作ったのであれば弟子入りに関して考える余地はある」


 お、おぉ。最初から断るつもりだったとは。

 いや、弟子入りできるかはわからないってレミレンが言っていたからおかしな話ではないのだけど、拡張鞄のところまで話を持っていけなかったら、そこで弟子入りの話が終了していたってかなりの綱渡りしていたって事だよね。名前を思い出せて本当によかったよ。

 

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