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第33話 ん?

エピソードナンバーを変更しましたが、内容に変更はありません。


 レミレンが生産施設の奥から出てきたので、作業をやめて出していた素材をインベントリの中にしまっていく。


「あの、ちょっと聞きたいことがあって」

「なんでしょうー?」


 出していた物をすべてしまったところで話を切り出す。レミレンは首を小さく傾げながら私の言葉を待っている。


「錬金の師匠を探しているのですが、レミレンさんなら知っていると伺ったのですが」

「え、あー。それですかー、うーん」


 そう聞くとなぜかレミレンは目を閉じ少し考え込むような動作をした。これまで質問した時は考え込むことがあっても指を口元に当てる仕草をするくらいだったのに、今回はじっくり考え込むような様子を見せるのはどうしてなのか。

 考え込むような内容じゃないと思うし、やっぱり師匠関連については厳しかったりするのかな。


「どなたからそれを聞いたんですー?」


 いつも通りの緩めの語尾ではあるんだけど、何か圧を感じるというかもしかして怒ってる?


「えっと、ガルスから」

「なるほど」


 短い返事でさらに語尾が伸びていないのが何か怖く感じる。

 これ、絶対に怒っているよね? ガルスは直接の知り合いではないって言っていたけど、レミレンとは多分知り合いだよね? ガルスは呼び捨てだったし。


「まー、アユさんなら紹介自体はできますけどー、母……いえ、師匠は頑固……気難しい人でさらにあまり1つの場所に留まっていない人なのでー、そもそも私でもすぐ会えるかどうか」

「母?」

「いえ、気にしないでくださいー」


 母って…。伝手があるとは聞いていたけど、こういう繋がりでの伝手だったということなのか。ガルスが一応弟子って言っていたのは、レミレンとその人が親子関係だからなのと、今は専門にしていないってところからかな。


「それで、師匠のことなんですが紹介はできますー。ただ、その先に関しては私がどうこうすることはできないので、弟子入りできるかはアユさん次第ですねー」


 出す予定のなかった情報を漏らしてしまったことをなかったことにしたいのか、レミレンは私の言葉をスルーし聞こえなかったかのように話を続ける。

 いつの間にか、怒りが収まったのかそれとも完全に隠されたのか、レミレンの様子がいつも通りのほんわかスタイルに戻っていた。


「わかりました。ありがとうございます」


 そう言ってレミレンに頭を下げる。


「別にそこまでかしこまらなくてもいいよー。弟子にしてもらえるかどうかはまだわからないしねー」


 まあ、それはそうなんだけどね。レミレンの様子からして何か嫌々感があったし、自力で探しても多分見つからなかっただろうから感謝はすごいしている。これで失敗したら本気で凹みそう。

 ああ、それにあとでガルスにも感謝しておこう。まだ弟子入りできるかはわからないけども、師匠の情報はガルスがいなかったら手に入っていなかったし。


「それで、今から行ってみますかー?」

「今から?」

「はいー。居るかどうかはわかりませんけどねー」


 何かポンポン話が進んでいく感じがして戸惑うけど、このまま師匠を紹介してもらえるのは非常に助かる。ログアウトの時間が迫っている時に行きますか? って言われても困るからね。


「よろしくお願いします」

「わかりましたー。それでは、少し待っていてくださいねー」


 レミレンはそう言うとギルドの奥に戻っていった。そして、それから数分経ったくらいで荷物を持ったレミレンが小走りで向かってきた。


「それじゃあ、行きましょうー」

「え、あ」


 レミレンが私の背中を押してギルドの外へ移動するように催促してくる。

 

 いつもの様子からは想像できない強引な行動だけど、何か意味があるのかな? この様子を見ているプレイヤーと思われるアバターも驚いた表情をしてこちらを見ているのが視界の端に映る。

 変な噂を立てられないといいんだけど、それは難しいかなぁ。


「ん?」


 レミレンに背中を押されながらギルドを出ると、何か不思議な感覚を覚えた。これは特殊エリアに移動するときに感じるものと同じものなので、ギルドから出た瞬間にインスタンスエリアに飛ばされたということなんだろうけど。

 これ、もしかしなくても特殊イベント?


「師匠がいる可能性が一番高いのは工房だと思うので、まずはそこへ行きましょうー」

「あ、はい」


 ギルドを出た後は背中を押してくることはなく、私の少し前を先導するように歩いている。


 今までレミレンが歩いている姿をしっかり見たことはなかったけど、身長が私の視線の高さくらいしかないので、カバンを背負いちょこちょこ歩いている姿が何かかわいらしい。


 そういえば少し前にUWWOの掲示板でレミレンのファンとかいう人がいたけど、これを見たら少しだけ気持ちがわかる気がする。


 そうしてしばらくレミレンの歩く姿を眺めながらセントリウスの街中を歩いていく。


「さあ、着きましたよー。ここが工房になります」


 到着した場所は普通の家がいくつも並んでいるエリアの一番端。セントリウスの街の外壁が見える場所でレミレンが示してきた工房は、少し洒落た店舗付きの洋風の一軒家だった。


 工房というからもっと大きな建物や無骨な建物の感じをイメージしていたのだけど、見た目は本当に小さな店舗付きの家でしかない。

 白を基調とした木造の建物ですっきりとしながら華やかさもある外見の建物の中には、工房というよりは小さな休憩スペースのような空間が見える。


 見える範囲で工房感はないけど、ガルスの店と同じ感じで奥が工房になっている構造なのかな。


「師匠がいるか確認してきますのでー、少し待っていてくださいねー」


 そう言ってレミレンはその一軒家の中に入っていった。

 

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