第32話 錬金の師匠を訪ねて
レシピを教えてもらった後、ガルド店からセントリウスのギルドに向かった。
レミレンがギルドにいればいいけど、いつもいるわけじゃないからね。いなかったら次にギルドに来るタイミングで話を聞いてみればいい。
ギルドに到着し、レミレンが居るかを受付の女性に尋ねる。
「レミレンさんですか? 少々お待ちください。んー……あ、今日は裏にいるようですね」
「そうですか。ありがとうございます」
どうやら運よくレミレンはこのギルドにいるらしい。裏にいるらしいからすぐに会えるわけではないけど、いないよりは断然いい。
それにこの前は生産施設の受付の人に聞いたら呼んできてくれたし、すぐに来てくれるかはわからないけど今回も同じように呼んできてもらえばいいよね。
「彼女に何か御用でしょうか。必要でしたら声をかけてきますけど」
「え、あ、それならお願いします」
「それでは少々お待ちください」
ありがたいことに声をかけてきてくれると言われたのでその言葉に甘えて声をかけてきてもらうことにした。
受付の人が奥に下がってすぐに戻ってきた。
「今は手を離せないらしいので少し待ってもらえれば、とのことですが、どうされますか?」
「うーん。なら待ってます」
他にすぐやろうと考えていたことはないし、ちょっとくらいなら待っててもいいかな。
レミレンがすぐに出てこれないならその間、時間つぶしで適当にロックワイバーンの素材を使って何か作りながら待っていればいいよね。
そういうことで受付を離れギルドの生産施設で適当に作業をすることにした。
生産設備室の中で作業した方が気持ち的に楽なんだけど、そうするとレミレンが来たときに対応できないしなぁ。まあ、今は他に人がいないからいいか。
まずは何を作るかだけど、とりあえず少しの量で作れるポーチでも作っていこう。
オーレスワイバーンの皮を取り出し、皮素材として使えるように加工する。
「うーんちょっと硬めだね」
形を整えたところで折り曲げてみると、今まで使ったことのある普通のワイバーンの皮や熊系の皮に比べてだいぶ硬いことが分かった。
「ポーチは作れそうだけど、これも軟化剤を使ってから作ったほうがいいかも」
とりあえず、そのまま加工しないで使ってみるかな。硬いは硬いけど、使えないほどではないから試しにこれで作ってみていまいちの出来だったら、師匠を紹介してもらっていろいろやった後に軟化剤の材料を取りに行こうかな。
あ、そういえば今委託に水面菊ってあるのかな。ちょっと確認してみるか。
ポーチを作る前に委託を確認していく。
水面菊は……あるね。値段はアイテム説明欄に載っている基本価格よりちょっと高めの800ASだけど、在庫も結構あるし取りに行く手間を考慮して、ある程度まとまった数を購入しておく。
まあ、数があるってことは採取自体はそこまで難しくないってことだし、それに採取できる場所も多い感じなのかな。採取しやすいならスキルの熟練度も上がるしお金もかからないから自分で取りに行く方がいいのだよね。今はとりあえず買っておくけど。
それとダン木の実と枝も同じく売られていたので購入しておく。マッヒカン茸は少ししか売られていなかったけど、とりあえずある分だけ購入。やっぱり第3エリアにある素材はあまり数がないね。特にマッヒカン茸は麻痺毒の素材に使われているみたいだし、自分で取りに行かないと駄目そう。
軟化剤の材料も買えたし、早速ロックワイバーンの皮でポーチを作っていく。
レシピ自体は他のポーチと同じなので、スキルの補助を使いぱぱっとポーチは出来上がった。
出来上がったポーチは今まで作ったものに比べて形のしっかりしたものになった。
「これはこれで悪くない感じ?」
ちょっとポーチの入れ口が堅いから取り出し難さを感じるけど、実用には十分な感じ。がっしりした装備にはこっちのポーチの方が似合うかも。それに素材として使ったものは、重ね掛けエンチャントをしてないロックワイバーンの皮だけなのにVIT+8がついているし、性能としても結構いいかもしれない。
これでエンチャントしたロックワイバーンの皮を使ったらどれだけ強化されるのかな。今は手持ちにそこそこ数はあるけど沢山手に入るようなものではないから、ポーチのために強化することは多分ないけども。
そういえば、装備できるアイテムって着色できるのかな。出来るならちょっとやってみたいのだけど。
色が付けられるなら色付け剤みたいなものがあると思うんだけど、委託に売ってたりするのか、それともレシピがあってそれで作る感じなのか。
でも色を付けるようなアイテムって今まであまり見たことがないんだよね。それに染色された装備を身に着けているプレイヤーも見たことがないし。
気になるからちょっと調べてみたら普通に売ってて驚いた。
プレイヤー用の専用委託の方にはおいてなかったけど、住民も使う総合委託の方に染色調色セットなるものが置かれていた。
染色剤そのものじゃなかったけどあるんだね。値段が10000ASと高かったけど数個しか残っていなかったのでとりあえず1つ購入してみる。
[(追加道具)染色調色セット Qu:- Du:-/- SAS:-]
特定の素材を染めるための染色素材を調色するための道具。調合台もしくは錬金台と組み合わせて使用することで染色剤を作ることができる。
※一度調合台もしくは錬金台に合わせた場合取り外すことができなくなるので注意してください。
アイテムカテゴリと説明文の※の一文から生産設備のアップグレード用のアイテムっぽいよね。しかも取り付けたら外せないタイプのものだから錬金と調合どちらでも作りたいなら複数買わないといけないのか。
まあ、耐久値も存在しないし、壊れないものだと思うから10000ASは安い方なのかも。
染色された装備品が売られてなかったのって、個人で生産設備を持っている生産プレイヤーが少なくて、まだ染色できる生産者がいないからなのかも。
あとさこれ。結局着色剤を作るための素材が必要だからすぐに使えないし、多分だけどギルドの生産設備室に置かれているものにも使えないよね。
装備に色を付けるのはもうちょっと時間がかかりそう。
「お待たせしました。今日は何の用事ですかー?」
すぐに染色することができないとわかりちょっとげんなりしているところで、生産施設の受付の裏からレミレンが顔を出した。