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第31話 新しいレシピ

 

 軟化剤の作り方を教えてもらうことになり、ガルスが材料を取りに工房の奥に行った。

 お店の方はガルスが奥に行く前に離席中の立て札を置いていたので問題はない。


「軟化剤で使う素材はこれだ」


 奥から戻ってきたガルスがそう言いながら作業台の上に素材を3つ置いた。その内の2つは見覚えがあったが、残り1つの素材は見たことがないものだった。


「こっちからダン木の実、マッヒカン茸、水面菊の3つだな。他には水と塩が必要だ。軟化剤自体の作り方はそこまで難しくないが、この素材を集めるのが少し面倒なのがネックだな」


 ダン木の実もマッヒカン茸も第3エリアに生えている素材だし、数もそれほど手に入らないからちょっと面倒だね。前に教えてもらった強化剤の素材にもマッヒカン茸があったし、実の方じゃなかったけどダン木の枝も使ったから、この2種類は防具関係の薬剤によく使うのかもしれない。


 そういえばダン木の実と枝は手に入れたことはあるけど、樹木の方は見たことがないような、第3エリアで樹を伐採しているときにも手に入れたこともないし、どこに生えているんだろうか。


 あとは今まで見たことのない水面菊。名前的に水の中に生えている植物だと思うけど、これがどこに生えているのかわからない。今まで水中の素材を採取しようとしたことがなかったから、水生植物は結構盲点だったな。

 師匠問題が解決したらちょっと探しに行ってみよう。


「軟化剤はダン木の実をすり潰して一度ペースト状にしたものと、マッヒカン茸と水面菊を細かく刻んだものを、一緒に煮込むことで完成する。途中の火加減さえ気を付けていればそこまで難しくはない」


 説明しながらガルスは私の前にすり鉢と鍋、素材を刻む用の包丁セットを用意してくれた。

 やることは簡単だし失敗はしないかな。ちょっと煮込むとどうなるかがわからないからそこが一番心配どころだけど。


「今の説明でわからないところは、……ないようだな。それじゃあ、とりあえず説明したとおりに作ってみてくれ」

「はい」


 前に強化剤を教えてもらった時は材料はこっち持ちだったけど、調合用の道具は貸してくれたし、ガルスってかなり親切だよね。他の師匠もこんな感じなのか、ガルスが特別親切なのか。まあ、多分後者なのだろうね。最初に装備を作ってもらった時も素材を融通してくれたし。


 説明してもらった通り、ダン木の実をすり鉢ですりつぶして、マッヒカン茸と水面菊を細かく刻む。そしてそれを水と塩を入れた鍋の中に投入して工房に設置されているコンロの上に置いて火にかけた。


「火加減は弱めにしてくれ。沸騰してしまうとダン木の実の粘りが強く出てしまって軟化剤として使えなくなるからな」

「うん」


 沸騰NGね。確かに現実でも粘度が高い液体を沸騰させると酷いことになるから気を付けないとね。


 火加減に気を付けながら、鍋の中に入れた物をしっかり混ざるように撹拌する。次第にダン木の実ペーストと水が混ざりはじめ、とろみが付き液体が白濁していく。そして徐々にマッヒカン茸と水面菊の成分が溶け出してきたのか茶色がかってきた、……かと思ったら一気に薄青色の透明感のある液体に変わった。


「え?」

 

 突然の変化に驚いて声を上げてしまう。

 茸と植物が入っているから茶系の色に落ち着くと思っていたら急激に色が変化して最後には透明な薄青色になるとか想像できないでしょ。


「どうした? ああ、完成したのか」


 これで成功なのか。いや、まあ失敗しているような色合いではないけどさ。何がどう変化してこの色になったのだろう。ダン木の実のペーストとか一切透明感がないのにどうしてこうなる? 青色要素どこにもないよ。


「QuはCか。初めて作ったにしては上出来だろう」


 驚いていて【鑑定】するのを忘れていたけど、確認してみれば確かにQuはCだった。効果はガルスの言っていた通り硬質な皮素材を柔らかくさせるための薬剤と書かれている。

 他に効果はなさそうなので皮を柔らかくさせるだけの薬剤なのだろう。


「軟化剤ができたわけだが、さっきの素材で試してみるか?」


 軟化剤を瓶に移し終えたところで、ガルスからそう提案される。


「今日はいい」

「ふむ、そうか」


 オーレスワイバーンの素材はもう少し数が集まってから何かを作る時にいっぺんに加工したい。


 使った道具を【生活魔法】のクリーンを使ってきれいにして、ガルスに手渡したところで工房の床が視界に入った。


「うん?」


 今まで気にしていなかったけど工房の床に使われている木材、イスタットの宿屋に使われていた木材の色と似ているような。よく見るとちょっと違う色合いだけどこの木材の色の木材も見たことないのだよね。色は違うけど多分同じ系統のものだよね?


「どうかしたか?」


 道具を手渡したところで不自然に動かなくなった私が心配になったのか、ガルスが私の様子を伺うように顔を覗き込んできた。


「この床に使われている木材って何が使われているの?」

「床材? ここで使っているのはイスタットで取れるケンロク樹の板材だな」


 ケンロク樹ならここに来る前に伐採したし、やっぱり何かしらの加工がされているということか。


「色が元と違うのは何か加工されているから?」

「そうだな。工房で使うにはそのままだと耐久値が低いから、防火処理と防腐処理を施している」

「なるほど。イスタットの宿屋も同じようなものが使われていたけど」

「ああ、だから気になったのか。イスタットは火を扱う工房が多いからな。その周辺にある建物は基本、防火処理を施したものが使われているんだ」


 なるほど防火処理か。確かにイスタットは鍛冶が主要産業って設定があるし、それで宿屋に使われていた木材が防火処理を施されたものだったということね。


「興味があるなら、これも教えるが」

「本当に?」

「専門じゃないから基本的なレシピしか教えることはできないが、それでいいならいいぞ」


 ガルスのその言葉に頷き、木材用の防火、防腐処理用の薬品の作り方を教えてもらってから、師匠の話を聞きに行くためギルドに向かった。



 最後に教えてもらった薬剤はハウジング用のアイテムなので、杖や盾などに要居られる木材に使っても効果を発揮しない。

 また、このレシピは基本レシピの一種のため、どこかの書庫や図書館へ行けば見つけられるものです。専門ではないガルスが教えられたのはこれのおかげ。

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