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第29話 ガルスの店で

 

 あれこれ考えながら移動しセントリウスに到着。


 宿屋の木材のこと、知り合いの少なさのことを考えていたせいで忘れかけていた、当初の目的である今回手に入れた素材について聞くためにガルスの店に向かう。


 できれば錬金の師匠になってくれる住民を紹介してほしいけど、いきなり話を切り出す技術は私にはないので、それは話の流れがそこに向かった時にそれとなく聞いてみることにしよう。そんな流れになるかはわからないけど。


 セントリウスの街の中を移動し、ガルスの店の前まで来た。

 前に来たときは他のプレイヤーがちらほらいて、それがはけるまで待っていたのだけど、今は他のプレイヤーは店にいなかった。まあ、あの時はちょうど住民の生産職がプレイヤーの師匠になってくれるって情報が出始めていた時だったし、その影響だったのだろうね。

 それにプレイヤーの生産職たちのスキルも育ってきているし、装備は住民よりもプレイヤーに頼んでいる人が増えたのかもしれない。


「ん? ああ、お前か」


 店の中に入ると会計台のところにいたガルスがこちらを向いた。こちらを見た時の反応が少しおかしいことに首をかしげる。

 おかしなことはしていないと思うのだけど。


「何か?」 

「いや、今まで迷惑な客がいてな。そいつまた来たのかと思っただけだ。変な反応をして悪かったな」


 そういうことか。店の近くに誰もいなかったからこの店に来るプレイヤーが減ったと思ったけど、そうではなく追い払った後だったのか。


「それで、今日は何の用だ? しばらく修行しに来ていなかったし、していくか?」


 それもありかな。新しいものも覚えていきたいし、近いうちに教えてもらいたい。でも、今は別だ。

 他のプレイヤーが来て見られたら面倒だしさっさと確認してもらおう。


「これ、どう使えばいいかわかる?」


 そう尋ねながらインベントリの中からオーレスワイバーンの素材を取り出していく。


「来ていきなりか。って、いやいや待て。そんなに一気に出すな。机の上からあふれるだろ」


 確かにそうだ。ちょっと気が逸って一気に行き過ぎた。


「出すならこっちで出してくれ」

「うん」


 とりあえず、ガルスが奥の作業場に行くように誘導してきたので、インベントリから取り出した物を一度しまい作業場の中に入る。

 作業台の上にオーレスワイバーンの素材を出していく。翼膜はサイズが大きくて邪魔になりそうなので出さないでおく。これはあるか聞かれたら出すことにしよう。


「ふむ、なるほど……ワイバーン系の素材か。しかもこの見た目からして鉱石ワイバーンだな。この辺に生息していると聞いたことはないし、なかなかにレアだな」


 ガルスは作業台に出された素材を一つずつ確認しながら独り言のようにつぶやいている。

 そして作業台に出した素材をすべて確認したところで私へ視線を向けた。


「うん。この硬さだと事前の処理は必要だが普通のワイバーンと同じように防具の素材として使える。鉱石ワイバーンの素材で作れば防具の性能としても悪くないものになるだろうな。素材としての質も悪くない。ただ、素材の段階でわかると思うが、かなり重量のある防具にはなるぞ」

「事前の加工?」


 オーレスワイバーンの素材を使えば防具が重くなるのはわかっていたけど、事前の加工が必要ということは素材が硬くてそのままだと扱い難いってことなのかな。

 深く考えていなかったけど、そのままだと針も通さなそうだし防具の形に加工するのも難しそうだよね。


「ああ、そのままだと装備としては硬すぎるからな。処理しないとろくに動けないものになる。胸当てやガントレットみたいな硬くても問題ない箇所であればそのまま使うことはあるが、基本は事前に軟化処理してから使う形になるな」

「なるほど」


 やっぱりそういうことか。これ聞いていなかったらそのまま加工して失敗していたかもしれない。あぶないあぶない。


「こっちのアルス鋼は防具に使うならコーティング剤として使うものだな。これを使うと通常よりも少し斬属性に強い防具になる。まあ、効果としてはそこまでいいものではないし、基本の使い道は魔法杖の柄や軸を補強するための強化剤だ」


 薬品系に加工するのが基本的な使い方なのかな。素材の説明でも魔法系のアイテムに使うって書いてあるし、ガルスの説明通りなのだろうけど。


「このまま使ったりは?」

「鉱石としては脆い部類に入るからそのまま使うことないな」


 脆いのかアルス鉱石。いや、確かこれってオーレスワイバーンから生成された鉱石(もの)だから、自然に生成された鉱石に比べて脆いのは納得できるかな。というか、爆発だけじゃなく兄が攻撃した時にも砕け落ちていたしあまり硬くないのは明白か。


「それで、これをここに持ってきたということは次の装備はこれで作る予定なのか? 今お前が着ている装備に比べて相当重くなると思うが」


 ガルスの言葉に首を振って否定する。

 私が身に着ける装備を作る予定はない。装備以外で何か作れないかと思ったから使い道を聞きに来たのだ。


「ふむ。なら使い方を聞きに来ただけか?」

「これで防具以外だと何が作れるか聞きたかったのと、もう一つ。これってどう使っていいのか教えてほしい」


 そういってインベントリから魔鉄鉱石を取り出し作業台の上に置いた。


「防具以外だと、カバンとかの小物だろう。専門ではないから詳しいことは言えないが、他の皮素材を使ったものより頑丈なものになるはずだ」

 

 防具以外だとそれくらいになっちゃうのか。ガルスの専門は防具って言っていたし、それ以外について詳しくないのは仕方ないか。でもカバンを作るってなるとオーレスワイバーンの素材を使うのはもったいないよね。

 ロックワイバーンの素材は沢山あるし、オーレスワイバーン素材はしばらく使うのは保留しておこう。

 

「あとはこれか?」


 ガルスが作業台の上に置かれた魔鉄鉱石を手に取りまじまじと確認し始めた。



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