第39話 何かの骨の使い道
もちもっちから教えてもらったレシピで必要になるアイテムは基本的に第3エリアのアイテムだった。
第2エリアにある街の工房で教えてもらえるレシピとしては集めて来る難易度が高いアイテムの気もしたけど、別に自力で取りに行く必要はないようで、手に入りさえすればフレンドに持ってきてもらうでも委託で購入するでも問題はないようだ。
まあ、レシピに書かれていた素材は既に持っているアイテムだったので、私はギルド倉庫から持ってきただけなのだけどね。
まさか布と皮素材の強化剤に使う素材に、何かの骨が入っているとは想定していなかった。いや、本当に使い道がわからなくて放置していた素材だったから、使い道がわかって嬉しいけど、まさかである。
他に必要な素材は解毒草もしくは浄化草・ダン木の枝・マッヒカン茸。解毒草を使うことで布系強化剤になって、浄化草を使うことで皮系強化剤になる。
うん。全部第3エリアの素材だね。ダン木の素材は第3エリアに近い第1第2エリアでも採取できるらしいけど、あまり数はないらしいからほとんどが第3エリアで採取られた物だ。
これらの素材は私のギルド倉庫に結構な数が入っている。そのほとんどが兄から流れて来た物で、借金返済のために物納された素材だ。その借金は数日前に返済しきっているのですでに物納は終わってしまっている。
今度は素材を指定して採取してきてもらう方にシフトした方がよさそう。自分で採取しに行っても集められる数には限界があるし。浄化草とマッヒカン茸は殆ど採取できない素材だから、数を集めようとすると相当時間がかかる。
とりあえず、ギルド倉庫からあるだけの素材を取り出し、委託の方も確認。少しだけ何かの骨が売っていたので買い占めギルドを出た。
ガルスのお店に戻り、中を通り抜ける。お店のカウンターの所に店番をしているNPCが居たので会釈をしてから工房の中に入った。
どうやらまだガルスは帰って来ていないようだ。
今まで私は会ったことがなかったのだけど、ガルスがお店に居ない時にあの住民が店番を担当しているともちもっちから聞いた。
住民も生活しているシステムになっているUWWOではこういったことが良くあるらしい。今までこういったことを知らなかったのは、プレイヤーどころか住民ともほとんど関わってこなかった弊害か。
工房の事も他の生産プレイヤーから遅れているし、積極的にとは言わないまでももう少し関わった方が良いのだろうね。
工房の中に入っていくと、もちもっちが作業をしていたが、私が工房の中に入ってきたことに気付いてこちらを向いた。
「もう素材を手に入れて来たの?」
「元から持っていたので」
「なるほど。骨以外はなかなか委託に流れていないから手に入れにくいんだけど、それならよかった。私は最初それで躓いたから」
「あぁ」
茸系は委託だと本当に見ないからね。だから手に入れるには、第3エリアに採取してくれる知り合いが居ないと自力で取りに行かないといけないから、そこが最初の関門かもしれない。そもそも生産プレイヤーに戦闘力を求めているのが間違いなのだけど、たぶんこれは他のプレイヤーとの繋がりを作っておけ、という感じの意味が込められていそう。
私は自力で取りに行く派だけど、生産者間の横のつながりは早い内に作っておいた方が良かったかもしれない。今後、どうしても片手間では作れないようなアイテムが出て来るだろうし。
ともかく、素材を持ってきたので強化剤作りをしよう。
【調合】スキルで生産する時はあっちの机を使うようにと、もちもっちに教えてもらいその机の上に調合用の生産装備を広げる。
この調合用の机は学校の調理室にあるような形でコンロが備え付けられていて、生産装備の鍋などで素材を煮込んだりすることができるようになっている。
そして強化剤の製作に鍋を使うのだけど、昨日ガルスから購入した生産装備には鍋は含まれていないので、ガルスの工房に備え付けられている物を借りることになる。
ガルスから買った生産装備は調合と鍛冶の物だけど、どちらも少し特殊な物を購入した。委託に流れていたものとは違い制限が2次スキルからのもので、ある程度自分好みにカスタマイズできる生産装備だ。例えば鍛冶で使う槌とかを別の物に変える、なんてことが出来るようになっている。今はまだ不便を感じていないので弄る予定はないけれど、その内カスタマイズすることになると思う。
使用する素材と生産装備の確認が済んだので、最初にダン木の枝を折っていく。枝は長さ30センチほどの小枝なので手でもあっさり折れた。それをさらに小さくしていき、それが終わってからなぞの骨をトンカチで軽く砕きサイズを小さくする。
なぞの骨は、元が何の骨なのかわからないくらいに劣化していると説明文にあった通りあっさり砕けた。小さくなったそれを生産装備の中にある乳鉢を使ってさらに細かくしていく。
そして他の素材も同じように小さく処理し、まとめて鍋に入れていく。本当なら骨以外の素材ももう少し細かくした方が良いのだろうけど、今ここにある道具では手間がかかり過ぎるので省く。一応これでも強化剤は出来るようなので問題はない。
そして鍋に水を入れて火にかける。
レシピによるとここから3分ほど煮込んで完成ってなるらしいけど、現実で考えたらこんなに早く出来る訳はないよね。ここまでリアルにされたら大変すぎるから、簡略化してくれているのは有り難いけど。
徐々に鍋の中に入っている液体の水かさが減り、説明通り3分後に出来上がったのでそれを瓶詰めして【鑑定】。
[(生産素材)布素材強化剤 Ra:Uc Qu:D SAS:1200]
調合で作られた布素材を強化するための薬品。これを布素材に使うことで、その素材で作られたアイテムの耐久値を上げることができる。他の素材にも使うことは出来るが布素材に使って得られるほどの効果は発揮されない。
素材の処理が適当だったわりに良い出来な気がする。Qu:Dとなると基準クオリティーだし、初めて作ったと考えれば悪くはないはず。
それじゃあ次は皮素材強化剤の方を作っていこう。