おまけ プレイヤーNAME:オグラント第3エリアに立つ※
この話は第2陣プレイヤーの中にいる数少ないモンスターRACEプレイヤー物です。
※このキャラクターが本ストーリーに絡むかどうかは現段階では未定です。
書いていてよくわからなくなった。
(´・ω・`)
暗雲が覆う空。
光がほとんど遮られた大地は暗く、空気も淀む。
光届かぬ大地は荒れ果て、青々と生い茂る草木は一切見当たらない。
ここは何処だ?
ゲームに初めてログインし、アバター制作の際にレアRACEを引き当て、浮ついた気分の中フィールドに降り立ってみれば、この状況。
「ぎゃぅ?」
言葉を発しようとしたところで意図しない音が口から洩れる。
ああ、そうだった。この手のRACEは声を発せないのだった。
事前に情報を集めていたことが幸いし、差してパニックになることなく、現実とのズレを呑み込むことが出来た。
さて、どうしたものか。
レアRACEの一部にはチュートリアルは存在しない。おれが引き当てたRACEもそれだ。まあ、調べた限りではそれとなくチュートリアルのようなものもあるらしいのでそれを探し出してやればいいのだが、如何せんこのRACEの情報は少ない。
第1陣の中でもこのRACEを引き当てたプレイヤーも居たらしいが、周辺環境の酷さから数日どころか初日で音を上げてしまい、それ以降の情報は皆無だ。
しかも、初期地点がどこなのかもよくわからない。見渡す限り荒野。そして空は暗雲に覆われ――なんて情報は掲示板どころかWIKIにも存在しないのだ。
……いや、おおよその見当はついているか。
ここまで情報がない。そうとなればここは――
――第3エリアだ。
初めてログインした日の翌日。今日と明日は土日だから終日UWWOをする予定だ。
昨日は、周辺状況を確認するために当りをうろついた。そして何度も殺された。
ワンパン。ワンパン。ワンパン……
耐えることすら出来ない。辛うじて躱すことは出来るが、掠ればワンパン。
このエリアに出て来るエネミーの強さはどうなっているんだ?
いや、このRACEの弱さもあるだろう。
WIKIに記載されている通常RACEの初期ステータスの平均値以下が大半のステータスだ。AGIは比較的高い値であるためそれで躱すことが出来ても、LV1の大して高くもないSTR値では攻撃したところでダメージが与えられている気がしなかった。
これは詰んでいるのではないか?
運営は何を思ってこのRACEの初期地点をこのエリアにしたのか。
昨日はそればかり頭の中に浮かんでいた。
だが、今ではこれはこれで難易度クソのゲームを遊んでいるような感覚になっていてそれなりに楽しんではいる。
とは言え、無駄に凸っても死ぬだけなので、今はスキルの熟練度を上げている。
そして、何度もリスポーンを繰り返す中でようやくこのRACEのチュートリアル的な物を受けられる場所を見つけた。
今はそこに居座っているのだが、周囲には俺と同じRACEが集まっている。
まあ、同じRACEとは言っても話が通じる訳でもないし、別にNPCという訳でもない。
ただ、ここに居る限りは安全そうなので一時だけここに身を置くのも良いだろう。
翌日。俺は当てもなくフィールドを歩いていた。
……しばらくはあそこに身を置くと言ったな。
あれは嘘だ。
いや、まあ、最初は本当にそうするつもりだったんだが、周辺の環境が悪かった。別に手を出されたとか、邪魔をされたとかではなく、ただただうるさかった。
横からギャアギャア、後ろからギギャァ! 正面からもギャゥ。周囲360度からの雑音。
集中できなかった。本当に集中できなかった。ついでにただスキルの熟練度を上げるだけの行為にも飽きた。
だからまあ、色々やった。結果的にLVが上がったから良しとしよう。途中何度か死んだけどな。それでも十分にLVは上がった。
糧になってくれた同族に合掌。スキルの熟練度も同時に上がったので本当に助かった。
またリポップしないだろうか。したらまた同じことをしに行くんだけどな。
当たり前のようにまた殺された。
どうしろと? どうやってあれに勝てと?
いや、本当にあれにどうやって勝てばいいんだ? どう対処しようとしても勝てる見込みが見いだせないんだが?
これならいっそ戦わないで別の場所に移動した方が良いんじゃないか? 逃げるだけなら出来るからな。今までは倒せば経験値になるからと挑んではいたが、今はどうやっても倒せる気配ないのだから、むしろそうした方が精神的に楽だろう。
いいや、違うな。移動した先にあれが来ないとは言えない。なら、やはりスキルの熟練度を上げて、ステータスを出来るだけ上げてから場所を移した方が安全だ。
それから俺は初期地点のセーフティーエリアに籠ってスキルの熟練度を上げて行った。
そしてリアル2日経ったところで一旦スキルの熟練度稼ぎをやめた。いや、これ以上今のやり方では熟練度が上がらなくなってきていたから、止めざるを得なかっただけなのだが。
しかし、これでも大分ステータスは上昇した。代わりにSKPは空の状態だがスキルの熟練度を上げていればまた手に入るのだから気にしなくてもいいだろう。
ステータスはこんな感じになった。
NAME:オグラント
RACE:ゴブリン
LV:6/30
JOB:ゴブリン27%
HP:285(0)(0) +65 +100
MP:40(0)(0) +10 +10
STR:69(13)(6) +6(2) +41
VIT:49(13)(6) +6(2) +21
INT:6(0)(2) +2 +0
MND:15(6)(2) +2 +3
AGI:45(0)(10) +15(4) +12
DEX:30(0)(4) +8(1) +13
LUK:6(0)(0) +2 +2
STP/SKP:0/0
装備
メイン武器:古く錆びた大槌STR+12
サブ武器:古く錆びた大槌
生産装備:なし
頭:ゴブリンバンド STR+1 VIT+2 MND+2
胴:古くよれたの皮鎧(劣) VIT+10 MND+4
腕:ゴブリンの守り紐 VIT+1
腰:古くよれたの皮鎧(劣)
脚: なし
アクセサリー(3):なし
スキル
戦闘:*ゴブリン27% 拳20% 蹴り20% 短剣術20% 槍術20% 斧術20% 槌術21% 投擲2%
補助:身体能力向上(微)32% 隠蔽12% 体術23% 走法15% 感覚強化10% 悪食11%
生産:
その他:鑑定3% 看破4% *感知16%
これでも初期ステータスからすれば十分に上がっているんだよ。堂々と存在感を発揮しているINTとLUKの1桁ステには目を瞑るが。
やはりLVアップによるステータスアップよりも、スキルによるステータスアップの方がこのゲームでは重要だな。
武器や防具についてはゴブリンのチュートリアルエリアであるゴブリンの集落で同族を倒すことで手に入れた。他にドロップするアイテムはなかったがさすがに肉などの食物がドロップしたらそれはそれで処理に困る。
まあ、武具もドロップし過ぎてそれはそれで困ってはいるのだが。
しかし、他の第3エリアスタートプレイヤーの愚痴を見たことがあるが、武具の新調、正確に言えば初心者装備から変更できないのがネックになっているらしいので、正直Duも低いすぐ壊れる装備ではあるが、無いよりは大分マシなんだろうな。
フィールドに出る。
今回は率先して戦闘をする気はない。ステータスが上がったとはいえ勝てるとは思えないし、今回の目的はあくまで周囲のマップ解放だからだ。ついでに【隠蔽】の熟練度上げも兼ねている。
慎重に進む。この辺りに居るエネミーに見つかったところで今のステータスなら逃げることは容易だ。しかし、それでは【隠蔽】の熟練度は上がらないので極力見つからないよう、姿勢を低くして移動する。
途中、エネミーを見つけても視界に入らないように、ある程度の距離まで近付いたら離れる。それを繰り返しながら表示されるマップの範囲を増やしていく。
低姿勢で、しかも周囲を気にしながら進むことで【隠蔽】だけでなく【感知】や【体術】、【感覚強化】の熟練度も上がり、このやり方は意外と悪くない熟練度の稼ぎ方だったことに気付いた。
ただ、熟練度が上がるスキルは1つを除いて戦いに関するものではないので、戦闘力の強化にはあまり繋がってはいない。
「はぁ、変な気配がするから何かあると思えばゴブリンか。初めて見たがこの辺りに生息していたんだな」
「ぐぎゃ?」
周囲を気にしていたところで今までなかった声が聞こえた。モンスターの鳴き声ではない人の声。
すぐさに声の聞こえた方を向く。するとそこには初期装備を纏った黒い鱗を持つ人が立っていた。
「この辺りの雰囲気にあっているとはいえLVが低いな。そこらに居るゾンビは30越えだというのに1桁とは」
エネミーと思われている!? いや待て。それよりも気になる事を言っていたぞ!?
マジかよ。あのゾンビLV30超えていたのか? 通りで攻撃してもダメージがほとんど通らなかった訳だ。
「まあ、雑魚だろうと経験値には変わりない。ダークランス」
「ぎゃ!?」
今まで何度か戦っていたエネミーの強さに合点がいき納得出来たところで、何のモーションもなく目の前のプレイヤーが攻撃を放ち、それが俺目掛けて迫って来る。
それを俺は咄嗟に横に飛ぶことで回避した。
ちょっとまてぇ!! おい、何の躊躇もなく攻撃して来たぞ!?
いやいやいや、あ。いや、別に変な事ではないか。俺だってエネミーに対しては何のためらいもなく攻撃するしな。しかも相手が良くある敵エネミーならなおさらだ。
「む? このLV差で攻撃を躱されるとは。最近はゾンビばかり相手にしていたから感覚が鈍ったか?」
って、こんなことを考えている場合じゃない。早く俺がプレイヤーであることを知らせなければ、このまま殺されかねない。
そう判断して直ぐに俺は体勢を立て直し、攻撃しないよう目の前で腕を振る。
「ぎゃ、ぎゃぎゃあ」
「ん?」
こういう時は言葉がつかえないのは面倒だな。どうにかして意思疎通できる方法があればいいのだが。
俺が普通のエネミーがしそうにない動きをしたことで目の前にいる、頭上にアトラスと表示されているプレイヤーの動きが止まる。
「まさか……?」
「ぎゃう」
俺がプレイヤーである可能性に気付いたのか、アトラスは完全に動きを止めた。それを見て俺はすぐにステータスを開き、その先にあるウィンドウを操作した。
『目の前のプレイヤーにフレンド申請を行います。宜しいですか? YES/NO』
当然選択はYESだ。
さて、アトラスさんはどういう反応をするのかね。出来れば、すんなり申し入れを受け入れて欲しいところだがな。
続かない。
とりあえずドラゴニュート(闇)さん、ソロ卒です。相手モンスターRACEだけど
この話で第3章の前編?は終了です。(3章は話の流れの関係で3部構成です)
次話から中編?になります
次回の更新から書き溜めの関係で更新の間隔が変わります。おそらく3日に1回か週2回になるはず
とりあえず次話の更新予定は3日後の木曜日です