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第33話 フィールドBOSSの知らせ ※ファルキン視点

※ファルキン視点



 

 俺たちのパーティーはここのところ、第3エリアの廃村を復興させるために活動していたのだが、満腹度を回復させるための料理や他のアイテムも尽きてきたので、第2エリアのセントリウスにあるギルドまで戻ってきていた。


 ずっと第3エリアに留まって復興を進められれば良いのだが、あそこのセーフティーエリアは完全な物ではなく、簡易セーフティーエリアのためログアウトするためにもログアウト用のテントを用意する必要がある。


 あそこで活動するプレイヤー全員がマナーの良い者だけならテントなんて無くてもいいのだが、すでに何件かPKによる被害が出ているのでそうも言っていられない。


「料理と素材の調達は終わったか?」

「ええ、他のプレイヤーに影響がない程度に抑えているけど、十分調達できたわ。ただ、料理の方は少ないわね。素材系のアイテムが大半」

「まあ、それは仕方ないだろ。料理にバフが乗ることがわかっても、2次スキルの後半まで熟練度を上げないといけないのは、面倒だからな。そこまでスキルを育てるプレイヤーは少ないし、一度に作れる量がな」

「それにスキル持ちのプレイヤーには自分用以外は作らないってのも居るのよね」


 元から取得していた【調合】スキルでポーションを作りながら、エンカッセとプリネージャの会話を流し聞く。


 第3エリアで活動するに当り、あの廃村ではアイテムを購入できないため、無くなったアイテムの中で現地調達した素材で作れる物を作っている内に、大分生産系スキルの熟練度が上がっていた。


「エンカッセ、ちょっといいか?」

「なんだ?」


 予定していた数のポーションを作り終えたところで、少し急いだ様子のふとももがエンカッセに話しかける。


「掲示板を確認していたんだが、どうやらセントリウスから東に行ったところでフィールドBOSSのワイバーンが出ているらしい」

「フィールドBOSS? 今までそんなの出ていたか?」


 気になる話題だったので速攻で生産アイテムをしまって会話に参加する。


「イベントの時以外に出たって報告は今までないみたいだ。掲示板だとおそらくアプデで追加されたのだろうって、推察されていた。俺もそうだと思うけど、どうする?」

「まあ、タイミング的にそうだろうな。しかし、どうする、とは?」

「今から参加しに行くかどうか」


 すでに戦闘は始まっているらしいから、おそらく今から行っても間に合わない可能性が高いな。しかもワイバーンだし。出来るなら参加したいところだが終わった後に着いてもなぁ。


 エンカッセとふとももの会話を聞きながらそんなことを考えていると、何か相談していることに気付いた残りのメンバーが集まって来た。今日は都合がつかずジュラルミーんが居ないが、代わりにリラがパーティーメンバーとしてここに居る。


「間に合うのか」

「かなり苦戦しているらしいから、おそらく間に合う」

「そうか。お前たちはどうする? 俺は行ってみても良いと思うが」


 話しの流れ的にもふとももは行ってみたい派だろう。ぎーんとプリネージャ、リラはどっちでもいいようだ。という事は、俺の判断で行くか行かないかが決まることになるのか。


「うーん。今から行っても間に合う保証はないし」

「ああ、そうそう。今も掲示板で状況を追っているんだけど、今さっきアユちゃんらしきプレイヤーが――」

「よし行くぞ! ほら早く!」


 アユが戦っているなら俺が行かない道理はないよな。妹が戦っているのがわかっているなら兄である俺が参戦しないのはおかしいだろ。


 ぶっちゃけ、自分でも意味の分からない理論ではあるが、間に合うかは別にして気になってはいたからいいだろ。


「ファルキンのやる気が空回りしないと良いのだけど」


 プリネージャが何やら呟いているのが聞こえたが、それを無視して準備を進めて行く。

 そうして俺たちは急いで戦うための準備をしてギルドを出ると、セントリウスの街中を移動して東に向かった。




 途中、セントリウスにある噴水前に多くのプレイヤーが佇んでいることに気付いたが、おそらくフィールドBOSSにやられてリスポーンしたプレイヤーたちだろう。


 大半のプレイヤーは既にフィールドBOSSとの戦闘を諦めている様子だったが、その中の一部のプレイヤーは、俺たちがフィールドBOSSに挑みに行くことに気付いて、再度戦いに行くことにしたようだ。

 そのため、いつも通り6人で移動している状況から、30人近い集団で移動することになった。

 イベント中もフィールドBOSSが出て、大人数での戦闘はあったが、あの時はプレイヤー同士が敵であったからこうやって大人数での移動はこのゲームでは初めてだな。



 そして、1時間も掛からない内にフィールドBOSSが視認できる位置までに到着した。


「いや、デカくね?」

「イベントの時のワイバーンとサイズ、全然違うじゃん」


 初遭遇である俺たちは目の前に見えているワイバーンのサイズに驚き戸惑うが、既に遭遇しやられている他のプレイヤーは冷静に相手を観察している。


「現在戦闘中のプレイヤーは10人くらい……ですかね? 1人離れた位置に居るようですが」


 ワイバーンに近付きながら戦闘状況を確認していたリラが声を出す。それを聞いて俺は離れた位置に1人で居るプレイヤーをよく見る。

 あの場に1人でいるならそれがアユの可能性は高いはずだ。戦闘中に話しかけるつもりはないが、居るか居ないかの確認はしておきたい。


 そのプレイヤーのことを目を凝らして確認する。

 背格好とフードを被っているところからアユらしいが、他にも似たような恰好をしたプレイヤーは居る。うーん、背格好はアユっぽいけど遠い位置に居るから正確にわからない。

 よく見たらなんかフードの形が変だな。犬? いや、遠目だからあれだが犬にしては鋭い感じがする。もしかしてオオカミか?


 そう言えば、アユがこの前オオカミの頭部を手に入れたとか言っていたよな? あの時は処理に困るなんて言っていたけど、フードの強化にでも使った可能性はあるか。

 とりあえず、あれは暫定アユ、としておこう。


 一定の範囲内に入ったからかワイバーンと戦闘状態となった。


 戦闘状態となったことで一緒に行動していたプレイヤーたちから魔法が飛び出して行く。俺は先に攻撃せず【看破】を使ってワイバーンの状態を確認した。



[(フィールドBOSS)ワイバーン LV:30 Att:風・毒 WA:土]

 HP:3813 / 24800

 MP:874 / 2560

 スキル:突進 ブレス(風) 強襲 毒爪 ■

 状態:怒



 うわ、もうHP15%くらいしか残っていないじゃないか。結構ギリギリの到着じゃないか、これ。それに、LV的に全部スキルが出ていてもかしくないのに■表記が出ているってことは完全に格上だな。


【看破】を使ったことでワイバーンの状態がわかったので、俺も攻撃に参加する。


 どうしてオレンジNAMEのプレイヤーたちがこの場に居るのかが気になるが、とりあえずワイバーンに攻撃をしていく。


 オレンジNAMEのプレイヤーたちは後から来た俺たちの事を警戒しているのか、近付いてくることは無かったし、俺たちも同様に不用意に近づくことは無かった。


 1分程、ワイバーンに向けて攻撃を続けていたが、一向にワイバーンは痛がる素振りを見せていない。


 堅いなこのワイバーン。イベントの時はそれほど気にならなかったんだが、確かにあの時も魔術系のスキルよりも物理攻撃の方が効いていた印象があるな。


 出来れば地面に落としたいところだけど、降りて来る気配もないし、怯んだ感じもな……ん?


 どうやって下に落とすか、そう考えようとしたところで上空から爆発音が聞こえて来た。すぐに上を確認したのだが、視線を上に上げた瞬間、ワイバーンが落ちてきている光景が目に入ってきたのでそれどころではなくなった。


 咄嗟に飛び退き、辛うじてワイバーンの体が当たることは無かったが、丁度ワイバーンの真下に居たオレンジNAMEプレイヤーたちは避ける間もなくそのままワイバーンの体に押しつぶされポリゴンになって消えていった。


 どういう理由でオレンジNAMEになったかはわからないが、何と言うか同情したくなるような死に方だった。


次話に続く

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― 新着の感想 ―
[一言] メガトンコインならぬ、メガトンワイバーンされたオレンジプレイヤー
[一言] 思ったよりファルキンなんもしてねぇな
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