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我らがお勤め

作者: ダルシン

短いので、すぐですので、読んで見てください。

 畜生が、やっと終わった。

 俺は手続きを済ませるべく受付に向かった。すると、俺の進路を塞ぐようにして割り込んでくる輩がいた。

 クソガキだ。

 そいつはさっさと手続きを終わらせて走り去った。本当なら文句の一つも言ってやりたいが、ここでもめて時間を取られてもしょうがない。俺だってさっさとこんなもの脱ぎ捨ててしまいたいのだ。

 俺は手続きを済ませて大浴場へ向かい、脱衣所で汚れた衣装を脱ぎ捨てた。

 ああ、せいせいしたぜ、畜生め。

 俺はタオルを取って風呂場の扉を開けた。湯けむりが俺を迎える。まずは丁寧に体を洗った。こんなことは久しぶりだ。あっちじゃ水浴びだからな。しっかりと汚れを落とすと、あっちでついた汚れがバリバリとはがれて流れていくような気さえした。

 さあ、湯に浸かろう。

 俺はゆっくりと体を沈めていった。ああ、極楽極楽。いつしか覚えた言葉を俺も言ってみた。この気持ちよさはどんな世界を渡り歩いたって格別なのだ。

 しばらくぼんやりとしていると、俺よりも一足先にここに来たあのガキが湯から早々に出て行った。ゆっくりすればいいのにやっぱりガキだな。と嘲笑うも同情もした。

 あれはたまらんからな。

 俺だって一度や二度じゃないからわかるのだ。あれの後は湯にゆっくり浸かるなんてしてられやしない。湯より飯だ。

 俺は今回違ったから、この湯をまだまだ堪能することにした。



 湯から出て新しい浴衣に袖を通した。湯の後は飯だ。食堂へ行き席に座るとあのガキが目に入った。

 ガツガツと飯を食っている。すでに何杯めだろうか。存分に食えばいい。遠慮することはないのだ。

 俺は運ばれてきた食事をつまみに酒を飲んだ。ずいぶんと久しぶりの酒だ。

 あっちじゃ酒なんて。考えもしなかったよなあ。

 ほろ酔いで席を立った。ガキはまだ飯を食っていた。



 大広間では俺よりも先にお勤めを終えた輩が、のんびりとした時間を過ごしていた。みんなどんなお勤めだったかは知らないが、ここでは平等だ。各自好きな方法で休暇を楽しめばいい。

 寝るもよし、食うもよし、飲むもよし。マッサージだって受けられる。俺もひたすらにのんびりとした。

 魂の洗濯だ。




 寝ているところを起こされた。


「そろそろお時間です」


 係員がそう言った。

 ああ、残念。休暇はもう終わりだ。俺はまたお勤めに行かなければならない。

 差し出された一個のサイコロ。そこに書かれた文字を俺はしげしげと見た。やっぱりこれをやるときは、何度やっても祈る気持ちになるものだ。

俺はサイコロを振った。出た目に悪態をついた。


「畜生。またかよ」


 係員が出た目のロッカーの鍵を俺に渡した。

 俺はそれを受け取りながら言った。


「また畜生かよ」




 俺はエレベーターホールへと行った。

 六基あるエレベーターの前で係員が確認の作業をしていた。


「何界ですか」

「畜生界だ。三回連続だよ」


 サイコロの出た目の界へ行く。六道輪廻のお勤めだ。

 またまた俺は畜生になり、畜生として生きなければならない。まあ、地獄よりはましだが。

 係員に促され俺は畜生界行きのエレベーターに乗った。更衣室に入り、渡された鍵の番号のロッカーを開けた。前回はクマネズミ、その前はエゾシカだった。

 今回は。

 ニホンザル。

 俺はその衣装を着た。今日から俺はニホンザルとして生きるのだ。

 湯にはゆっくり浸かれそうだ。

気に入ったら評価してほしいなあ。

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