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第39話

「姉上。 僕は処刑でも何にでもなっていい」

「エルファファンとお腹の子だけは、助けてくれ」

 マフィスが、絞り出すような声で言った。


「顔をあげなさい」


 シルルート王国の”聖域”を背に背負い、アルクファンが、女王の威厳と共に、


「今回は、シルルート王家の休暇旅行(バカンス)中の()()()、大儀であるっ」 

「王都上空の、”ガルド級”共々私の留守の間、よく王都を守護してくれたっ」

「偶々”魔薬”に侵され”奴隷売買”に手を染めた、”西方貴族”が()()を起こしたが……」

「無事鎮圧されたっ」

「これも留守の間、王都を守護したそなたと”ガルド級”の手柄であるっ」

「改めて礼を言うぞっ」


 アルクファンがにこりと笑い、雰囲気を和らげた。


「という風に、”三大臣”と”メシャルラ将軍”との間に話しはついています」

「マフィス」

「”人間派”の代表として、”カスノー伯爵領”及び”グスモンド子爵領”に行き、”魔薬”に侵された国民を癒しなさい」

「そして、”奴隷の売買”を根絶させなさい」

「これがあなたに対する、私からの”罰”です」


「姉上……、いえ、アルクファン女王陛下っ」

 マフィスが臣下の礼を取る。

「この一命に変えましてもっ」


「ふふ、”エルファファン”とお腹の子を大事にするのですよ」

 アルクファンが微笑んだ。


  その後、”カスノー伯爵家”及び”グスモンド子爵家”は取り潰された。

 両家の親子と”魔薬”に手を出した領民は、死よりもつらいと言われる”禁断症状”に廃人同然となる。

 両家の親子は、監獄とほぼ等しい”魔薬”の施療院に閉じ込められることになる。


  マフィスは、60代半ばから80代後半で息を引き取るまで、双子を含めて、エルファファンとの間に、()()()の子をなした。

 この10人は、有名な芸術家として活躍する。

 子供の一人が、両親の”聖域”にまつわるエピソードを文書化し、大流行することとなった。

 後の世に、ハーフエルフの男女から「”マフィスのような殿方”」とか「”マフィスが女性になったような”」と言う風に、理想的なパートナーを表す代名詞として使われるようになる。

 


  ミャビは、月明かりの下、”シェルダの森”を枝から枝へ飛び移りながら、移動している。

「見つけた」

 木々の間に明かりをつけた小さな小屋が見える。

 仮面の男のセーフハウスである。

「今度こそ仕留めるっ」

 次の枝に飛び乗った瞬間、

「にゃっ」

 その枝を蹴ってその場から飛びのいた。

 

 ミシミシ


 と言う音と共に、黒い球のようなものが周りの木を”圧縮”していく。


「あら、私の重力球(グラビティボール)をよけるのね」


  ミャビは地面に降りて、忍者刀とクナイを油断なく構えている。

 声がした方には、三角の”魔女の帽子”とチューブタイプの黒い胸当てをした美女が、太い枝の下に、()()()ぶら下がっている。

 腰から上だけが、闇の中に浮いたように見えた。

 異様に細長い舌が、チロチロと口から出る。


 ブワッ


  ミャビの尻尾が限界まで膨らんだ。

 ゆっくりと三角の耳が、後ろに倒されていく。

 (こ、これはあかんやつにゃっ)

 じりじりと後ずさりし始めた。


「ふふ、分はわきまえてるのね」

「あの子を驚かせたいの」

「静かにしてるのなら、見逃してア・ゲ・ル」


  ミャビは、音一つ出さずその場から逃走した。

 (怖かったニャアアアアア)

 ミャビは後に心底怯えた顔で、化け物に魅入られた”キバ”はもう駄目だとタウバ王に報告する。

 

  小屋の中、仮面を外した”キバ”がいる。

 片目が、”魔”に侵されて瞳孔が横になったヤギの目になっていた。

「トウバめ、シルファヒンめ、ハーフエルフめ」

 ぶつぶつと小さい声で繰り返している。


「あら、そこまで”魔”に侵されて個人の見分けがつくのね」

 普通なら無差別に呪うか、正気を保っていない。


「だれだっ」

  振り向くと天井を魔女の帽子を被った女が()()()()()

「なっ」

  驚いているキバの前に、天井から女がおりて来た。


 シュルン


 と言う感じで女の下半身が、キバに巻き付き引き寄せる。

 女の下半身は、巨大な蛇だった。


「ひいいいいいい」

 キバは両目をギュッとつぶった。


  キバの悲鳴を止めるように、魔女は、自分の豊満な胸に顔をうずめさせる。

「なんだ。 結構かわいい顔してるじゃない」

 蛇の舌でチロリとキバの頬を舐めた。


  指で開けたヤギの目を見ながら、

(ここまで”魔”に侵されて正気が保てる。 ”魔術師”の才があるね)

 

「気にいったよ、あんたあたしのペットにしてあげる」

 基本、”魔”に侵された人間は、自分の欲望を隠さない。


  魔術師の秘密結社”死せる魔人の会”の幹部で”混沌の魔女”の一人でもある、”蛇身のエンリ”は、キバをペット兼、愛人兼、弟子として自分のものとした。  


「いやああああああ」

  キバは、ハナゾノ帝国の南、”魔じわりの森”の奥深くにある、魔女の拠点”バーバヤーガ”に連れさられていった。


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