第33話
”ミナヅキ”で、竜騎士三騎の発艦訓練が行われている。
真ん中に、”ライトニングドラゴン”に乗った、ナンド中尉。
右側に、”レッドドラゴン”に乗った、カオリ少尉。
左側に、”レッドドラゴン”に乗った、エンド少尉である。
「これより、三騎編隊を維持したままの、発艦訓練を行う」
「装甲板による風の巻き込みに注意せよ」
ナンドが、飛竜にまたがった。
「「了解」」
残りの二人も飛竜にまたがる。
ナンドを先頭に、飛行甲板に三角形に並んだ。
ナンドが発艦準備完了のハンドサインを、甲板の端にいる管制官に送る。
管制官の了解のサインの後、大きく腕を前に振った。
「発艦」
ドドドドドドド
三騎が並んで”ミナヅキ”の前の大空に飛び出した。
「竜騎士、発艦」
ブリッジのガラス越しに、三騎が並んで飛んでいく。
「装甲板下ろせ」
「装甲板下ろします」
竜騎士の着艦のために、艦体横へ装甲板が下げられる。
ブリッジの横の通路に、装甲板が移動してきた。
左右合わせて計六枚、ティルトローター式のプロペラ部以外をほぼカバーした。
「見晴らしは悪くなるわね~」
斜め後ろの椅子に座った、シルファヒンが言った。
「しかし恐ろしく硬い艦だな~」
「本当ね~」
反対側の斜め後ろの椅子に並んで座っている、シルルート王家の夫婦がのんびりと声を出した。
「……あの狭くありませんか?」
トウバがおずおずと聞く。
「「「いいえ」」」
三人が同時に答えた。
結局そのまま、その場所が、”シルルート王家一向”の定位置となる。
◆
”ミナヅキ”は、ルートを飛び、”白眉の花瓶”まで到着した。
”マルーン湖”で、水の補給をするために着水している。
月明かりがきれいな夜である。
明かりの消えた”大食堂”にトウバとシルファヒンがいた。
「……この前は”宴会”で楽しかったわね……」
”大食堂”のガラス窓の向こうに、前回と変わらない湖に映った月が見える。
クーデターのことを気にして、シルファヒンは元気がない。
「今度来たときは楽しく”月見”をしよう」
「大丈夫さ」
トウバが後ろから腕を腰に回して、優しく抱いた。
「……そうね……」
シルファヒンは、トウバの手に自分の手をそっと重ねた。
「あなた、あなた~、石鹼とタオルは一個ですわよ~」
「わかっているさ~」
「”セントウデート”ですわよ~」
「行くぞ~」
”大食堂”の前の廊下を大声を出しながら、シルルート王家の夫婦が歩いて行った。
そのすぐ後を、すれ違うように、
「にゃ~ニャ~ミウみう♪、うにゃにゃにゃニャ~♪」
風呂上がりのミヤコが上機嫌に、”猫系獣人固有の言語”で歌いながら通り過ぎた。
「ぷっ」
「ぶふっ」
同時に噴出した二人は、
(……考えすぎなのね……)
(……考えすぎか……)
お互いに目を見つめて、微笑みあった。
◆
「あなた~、今回の西方貴族の動きはおかしくありません~」
浴場内にアルクファンの声が響く。
「そうだな~」
「”仮面の男”があの男なら、西方の”魔薬”汚染の話は本当かもしれないな~」
レイドンがちらりと横を見る。
「西方の貴族が”人間派”だと言って調査を拒否した件ですわね」
アルクファンが髪を洗い始めた。
「今頃、必死に”魔薬”を隠しているのかもな~」
「石鹸あるか~」
「ちょっと待って~」
「おい」
「ああ」
「これって結構な”機密”なんじゃないか」
レイドンの横で、”ミナヅキ”の男性乗組員三人が、体を洗っていた。
図らずも、トウバとシルファヒンの”セントウデート”の時と同じ面子である。
レイドンが、指を口の前に立てて”シー”と言う仕草をした。
「「「!!!」」」
(親子ともどもよそでやってくれ~)
三人は、青い顔をして大慌てで体を洗い、風呂場から出て行った。
この後、シルルート王家の夫婦は、しっかりと”セントウデート”を堪能し、手を繋いで二人の寝室に帰って行ったのである。
翌日”ミナヅキ”は、”白眉の花瓶”を抜け、シルルート国内に向けてルートを進んでいくのであった。




