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第18話

 ”エクセリオン”の修理が終わったと報告を受けた。

 ”ミナヅキ”はシルファヒン達を乗せ、カラツ基地に向かう。


「ふふふ~ん~」

 久しぶりに、”エクセリオン”に乗れるとメルル―テが上機嫌である。

 事前に、交換したジェットの調子も見たいのでメルル―テの”模範飛行”の許可を、カラツ基地に申し込んだ。

 シルルート空軍のウルトラエースの”模範飛行”がタダで見えるとして、二つ返事で了承される。

 ”ミナヅキ”が、カラツ基地に着いた次の日”模範飛行”を行う。



 カラツ基地の滑走路に、”エクセリオン”が駐艦している。


「シル。スロットルのコントロールをマニュアルにして~」


「はい。先生」

 シルファヒンが、集中魔術式制御盤でスロットルをマニュアル化した後、下艦する。


「エンジンスタート~」


「こちら”エクセリオン”カラツ管制、離陸許可をおねがいします~」 

 

「こちら、”管制”いつでもどうぞ」


「了解です~」 

 ”エクセリオン”の搭乗ハッチを閉じ、ゆっくりと上昇させる。

 そのまま、交換したジェットを確認するように、艦を上下に動かしながら、ゆっくり前進させた。

 ランディングギアを収納する。

 滑走路の周りは、”模範飛行”を一目見ようと人だかりが出来ている。

 侍女服を着たメルル―テが、立体的に配置されたガラス窓に、飛び出すようにつけられた椅子から、軽く手を振った。


「行きますよ~」


「ドンッ」

 と言う音と共に、急発進。

 滑走路の半分くらいの所で、艦を()()に立てた。

 そのまま、惰性で滑走路の端まで行き、垂直のまま動きを止める。


「おおおおおお」

 歓声が上がった。 


 ゆっくりと上昇しながら、艦の横方向に5回ロールさせる。

 しばらく上昇した後、超低空で宙返りを3回した後、上空へ上った。


「おおおおおおおおお」


 その後、シャンデルやインメルマンターン、スプリットsなど思いつく限りの空中戦闘機動(ACM)を、侍女服のロングスカートの裾を乱すことなく行った。 

 

「おおおおおおおおおおお」


 最後に滑走路上の低空で、フラットスピンで艦を水平方向に3回転程、回した。(フリスビーの様な動きである)

 その後、ふわりと何事もなかったように、元の場所に着陸させる。


「すげえ。飛行艦であんな動き出来たんだ」

 基地所属の飛竜乗り達が、驚きの声を上げていた。


 ”エクセリオン”の無線から聞こえていたメルル―テの鼻歌が、管制官の耳からしばらく離れなかった。 


 ”ベルゲムーン”が壊れたジェットを乗せて、”カティサーク工廠”に出発したのを見届けて、”エクセリオン”は”ミナヅキ”と共に、シルン地方の駐屯地に帰って行った。



 ミャビは、キバの居室で、頭からワインを掛けられていた。


「き、聞いたぞ。奴とシルファヒンが」

「こ、恋人どうしになったと」 

 

「い、いえ。そのようなことは」

 ミャビが跪いて言う。


「邪魔をしろと言ったはずだ」

 キバが空になったワインの瓶を上に向けた。


「ひ、飛行中の”ミナヅキ”には手が出せません」

「艦から降りたときは、ほぼ二人一緒で・・・あ」


「パアンッ」

 ミャビは、キバにワインの瓶で頭を殴られ、瓶が粉々に砕けた。


「ひ、ひいいいい」

 ミャビが悲鳴を上げながら、床を這って逃げる。


「一緒、いっしょだとお」

「きいいいいいいいいいい」

 ハアハアと肩で息をする。

「殺せっ。奴を、いや二人とも殺せええええええ」


 ミャビはふらふらと、カーテンに隠れた隠し通路に逃げ込んだ。

 隠し通路の扉が閉じてから、


「フンッ」

 何事もなかったように立ちあがる。

 ペシペシと苛立たし気に尻尾を振った。

 額に垂れてきた血を指でぬぐう。


「ニャット。ついに一線を超えたな」

 通路を歩きながら言った。


 

「仕事だ。今度は確実に沈めろ」

 キバは王都の下層街にある、場末の酒場にいた。

 ひとつのテーブルをガラの悪そうな男たちが囲んでいる。 

 

「女のことはいいんですかい」

 男たちのリーダーが言った。


「殺せっ」


「おっと。知ってるんですぜ。女がシルルートの王女様ってことは」

「……今まで通りの報酬じゃあ……」

 男たちがニヤニヤ笑っている。


「貴様ら。飛行艦も用意してやっただろうがっ」


「いいんですぜだんな。……”魔薬”はこれからどうやって手に入れるんでしょうかねえ」

 

「くっ。分かったっ」

 キバが懐から金貨の入った袋をテーブルに投げ出す。


「……帰りに襲え……」

「……白眉の花瓶に罠を……」


 キバと空賊の密会の現場である。



 その頃ミャビは、キバの居室の隠し金庫を開けていた。


「あった」

 書類には、4年前にトウバが乗った練習艦の払い下げ先が書いてある。

 キバが影から手を回して、ろくに調査もされないまま払い下げられたのだ。

 払い下げ先は、空賊と関係がある架空の商社である。


「中古の補給艦、2艦に大量の樽爆弾……」

 同じ架空の商社に払い下げられていた。


「いやな予感がする……」

 本当の主に報告した後、シルン地方に急いで戻った。

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