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第17話

 シルン地方は、雪で真っ白だった。

 一度、駐屯基地によってから、”エクセリオン”の置いてある、カラツ空軍基地に向かう予定である。

 シラフル湖に、巨大な飛行艦が2艦並んで浮いている。

 艦が、シラフル湖から水を補給している間、2艦の乗組員たちが雪合戦を始めた。

 マルーン湖の宴会から2艦の隊員は、すっかり仲が良くなっている。

 イナバとメルル―テの投げる雪玉がすさまじく、二人だけ次元の違う戦いをしていた。


「こんなのどう?」

 トウバは、雪でウサギを作り、シルファヒンを喜ばせていた。


 水の補給を終え、2艦はカラツ空軍基地に向かって出発する。



 特に問題もなく、カラツ空軍基地に到着した。

 今回も、竜騎士の出迎えがあり、”ベルゲムーン”の周りを珍し気に飛び回っていた。

 早速、”エクセリオン”の修理に入る。

 故障したジェットの交換と、艦全体の整備を行う。

 故障したジェットを、レンマ王国の西方にある”カティサーク工廠”に輸送する。

 そのため、シルルートに帰るのは、”春先”になった。

 取り外されたジェットは”ベルゲムーン”に乗せて輸送することが決まる。


 ”春先”まで、”ミナヅキ”は本来の業務に戻った。

 本国の許可を得て、シルファヒンたちも”ミナヅキ”と行動を共にすることになる。


「”ミナヅキ”の生活は快適なのですっ」

 王都に来ることを誘われて、断った時のシルファヒンのセリフである。

 


 今までやっていたシルン地方の村の巡回を再開する。 

 オンセンの開放や、軍医による診察が大変喜ばれた。


「別の船が回って来てくれてたんだけど、オンセンがなくって~」

 村のおばちゃんが、シルファヒンの肩をバシバシ叩きながら言う。


「で、トウバ艦長の彼女?」


「……はい」

 シルファヒンが、顔を赤らめて恥ずかしそうに言った。


「艦長にもやっと春が来たんだね~」

 おばちゃんが笑いながらシルファヒンの顔を覗き込む。

(えらい美人さんだね~)


「あ、そうそう。飛竜商人の薬屋が村々をこまめに回ってくれてたよ」


「えっと。ミヤコさんですか?」


「うん。そんな名前だったね」 


 冬だから(野菜など)あげるものがないと、残念そうな顔をした村人を残して”ミナヅキ”は村を後にした。


 

「誰か、女の人、助けてくれ」

 男性の軍医である”ウル”が大きな声を出した。

 看護婦である”コノミ”も横にいるが人手が足りないらしい。

 

 ”ミナヅキ”がある小さな村に寄った時、村の若い妊婦が産気づいたのだ。

 村の産婆は、別の村の妊婦の所に行っていた。

 初産で早くなったようだ。

 ウルは”軍医”であって”産婆”ではない。

 出産の知識はあっても経験は少なかった。


「お湯を沢山沸かすのがよろしいかと」

 じっと妊婦を見ていたセバスが言った。

 セバスは、約150歳。

 長い人生の中で何度か子供を取り上げたことがあった。

 シルファヒンやメルル―テも含めた女性陣(6名)に的確な指示を出す。

 出産は5時間に渡った。


「ほぎゃあ。ほぎゃあ」

 生まれたての赤ちゃんが、元気な声を上げたとき、女性陣はお互いに抱き合って涙を流した。


 産湯に入れた後母親に、赤ちゃんを


「首が座っていませんので」


 セバスが抱き方を教えながら渡す。


 若い父親が涙ぐんで母親の隣にいた。


 手伝った女性陣も交代で恐る恐る赤ちゃんを抱っこしている。

 

 村の産婆が帰ってくるのを待って報告をした後、村を後にした。


 しばらく女性陣の男性を見る目が、妙に熱っぽかった。



 前回の巡視と違うところは、竜騎士が一騎、駐艦している事だ。

 森の近くを飛んでいると、森の中から、緊急用の信号弾が上がった。


「右。信号弾、赤っ」


「何かが、何体かの何かに囲まれています」

 伝声管から、ナンドの声がした。


「スクランブル。スクランブル。艦を緊急停止」


「ナンド、イナヅマ、出ます」


 竜騎士が緊急発艦。


 イナヅマが、飛竜甲板を力強く蹴りながら走って飛んだ。


 森の中では、猟師の格好をした男が、”魔狼”に囲まれていた。


「来るな、来るなー」

 足を怪我しているようだ。

 しゃがみ込んで鉈を振り回している。


 男のとどめを刺そうと飛び掛かった”魔狼”に、ナンドは落雷(ライトニング)加護(スキル)を当てて吹き飛ばした。

 そのまま、男の前に降り、”イナズマ”にライトニングブレスを放射線状に吐かせる。

 何体かの”魔狼”に当たった。


「ギャンッ」

 ”魔狼”は怯えながら去って行った。


「大丈夫ですか?」


「助かりました」


 その後、猟師の男を”ミナヅキ”に回収し傷の治療をして、男の村まで送り届けた。

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