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第16話

 2艦は、マルーン湖の氷を割らないように、ゆっくり着底する。

 その日の夜、流石に外は寒いので、”ミナヅキ”の大食堂で、親睦会を兼ねた宴会が始まった。

 50人くらいが入れるスカイラウンジのような作りで、ガラス窓の外には月明かりに照らされた、凍りついたマルーン湖が見える。

 今回の目玉は、”ベルゲムーン”から持ち込まれた、ウイスキーの樽と、乗組員が作る”シルルート料理”である。

 野菜多めのスープにソーセージが入った煮込み料理。

 溶けたチーズを色々なものにつけて食べる料理。

 切られて油で揚げられたジャガイモ。

 ウイスキーには、生ハムと生チョコがつけられた。

 シルルートの人向けに、レンマ王国の料理も作って並べた。


 乗組員たちは思い思いに、親睦を深めている。 


 トウバとシルファヒンは、仲睦まじく過ごしているが、新婚夫婦を通り越して、熟年夫婦の雰囲気だ。

(二人の関係はまだ、手を繋いだだけなのだが)

 イナバとメルル―テは、ちょっかいを掛けてきたり、冷やかしてくる乗組員をメルル―テが(時には物理で)排除している。

 恋路のかかったハーフエルフにちょっかいを掛けるとは、命知らずである。

 

 話の中で、”ベルゲムーン”にも、オンセン設備は完備されているようで、レンマ王国人がどや顔で胸を張っていた。(入浴の文化に誇りを持っている)

 ”ミナヅキ”の乗組員のほとんどが”ベルゲムーン”のオンセンに入りに行ったのは後の話である。



 翌日は、久しぶりに晴れた。

 気温も上がった。

 マルーン湖に釣りに行く者と、洗濯をする者の二つに分かれた。

 

 ”ミナヅキ”の飛竜甲板に、白いシーツや洗濯物が沢山ひるがえっている。

 普段は、艦内に干すので、天日干しが気持ちがいい。


「ふふふ~ん」

 シルファヒンが鼻歌交じりに、()()の服を干している。

 遠慮するトウバから、強引に奪ってきたものだ。

 シルファヒンは、空軍士官学校を卒業している。

 トウバと共通の話題が欲しかったため進学したのだ。

 基本、洗濯も含めて、自分のことは自分で行う。

 飛行時間が足りていないが、”エクセリオン”を操縦することも可能である。


「あっ」

 洗濯物から出てきたトランクスに、顔を真っ赤に染めて、大慌てで干した。


 トウバとイナバとメルル―テは釣りに来ていた。

 マルーン湖の氷にドリルで穴をあけて、小さな釣り竿で、ワカサギを狙う。

 ドリルと、小さな釣り竿は、エクセリオンの整備班がベルゲムーン”で作ってくれた。

 必要以上に出来が良い。

 リーダーである”ドワイト”がこだわりぬいた作である。

 道具がいいのか沢山釣れた。

 シルファヒンが近くにおらず、少し寂しい思いをしたトウバである。

 お昼ご飯は、釣れたてのワカサギのテンプラだった。


 夕方、シルファヒンが、干していた洗濯物をたたんで、部屋の掃除、洗っていたシーツをつけてくれた。

 天日干しのシーツが気持ちいい。


 2度目の”セントウ”デートを敢行した。



 次の日の朝、2艦は、”白眉の花瓶”のレンマ王国側の出口を通って、レンマ王国に向かう。


 しばらく飛ぶと、


「艦長。左の山の上から巨大な何かが来ます」

 伝声管からナンド中尉の声が聞こえてくる。

 ”イナヅマ”の電波探知(レーダー)に何かが掛かったようだ。


 山の上から出てきたのは、”ベルゲムーン”と同じくらいの大きさのドラゴンだった。

 白い体をしている。

 物珍しそうに2艦の周りを飛ぶ。


「何もしてこないと思うが、刺激するなよ」 

 ブレス1発で、2艦同時に落とされるだろう。


 エルダードラゴンのようだ。

 2艦の巨体に興味を持って見に来たらしい。

 しばらくすると見飽きたのか、その場を飛び去った。



 大食堂で、お茶をしていたシルファヒンは、突然、窓ガラスの向こうにヌッと現れた巨大なドラゴンの顔に、コップの中身をこぼしながら、固まった。


(目っ。目が合ったあ)

 声が出ない。

 一緒にいる、メルル―テとセバスティアンも青い顔をして動けない。

  

 少しの時間、シルファヒンと目を合わせた後、ドラゴンは去って行った。


 シルファヒンは座ったまま、メルル―テとセバスティアンは、その場にへなへなとしゃがみ込んでしばらく動けなかった。


「なんだったのよおおお」


 それは誰にもわからない。

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